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第114話 母が残した守護の技

第114話 母が残した守護の技


「私のお母さんは……」


実咲は。


巨大な敵を見上げた。


「熊五郎の国の守護者だったの?」


返事は。


なかった。


巨大な敵は。


ただ。


実咲を見つめている。


「答えて!」


実咲が。


叫ぶ。


「お母さんは何をしたの!?」


巨大な目が。


ゆっくり閉じる。


そして。


低い声が響いた。


「最後まで」


「……」


「王を守った」


熊五郎の表情が。


変わった。


「……やっぱり」


「熊五郎?」


「俺は」


熊五郎が。


拳を握る。


「あの夜、守護者が最後まで戦っていたことは知っていた」


「でも」


実咲が。


聞く。


「お母さんだとは知らなかった?」


「ああ」


熊五郎が。


頷く。


「俺は最後まで」


「……」


「誰が俺を逃がしたのか、知らなかった」


実咲は。


母の顔を思い出そうとする。


しかし。


頭の中には。


ぼんやりした影しか残っていない。


「……顔が」


「実咲?」


「また思い出せない」


実咲が。


額を押さえる。


「お母さんの顔……」


黒い線が。


首元で脈打つ。


「忘れていく」


熊五郎が。


すぐに近づく。


「もう能力を使うな」


「でも」


「駄目だ」


熊五郎が。


実咲の左手を見る。


「首まで来ている」


「……」


「これ以上は危険だ」


巨大な敵が。


腕を振り上げる。


「ならば」


――ズドォォォン!!


黒い衝撃が。


二人へ迫る。


「来る!」


ガルドが。


槍を構える。


レオンも。


剣を構える。


「俺たちが止める!」


二人が。


前へ出る。


――ガキィィン!!


槍と剣で。


黒い衝撃を受け止める。


だが。


二人の足が。


地面へ沈んでいく。


「ぐっ……!」


「重い!」


熊五郎が。


鍋を置く。


「二人とも下がれ!」


「無理だ!」


ガルドが。


叫ぶ。


「このままじゃ町が――」


その時。


実咲が。


一歩前へ出た。


「私がやる」


熊五郎が。


振り返る。


「実咲!」


「一つだけ」


実咲が。


左手を見る。


「一つだけなら」


黒い線は。


首まで来ている。


「まだ使える」


「何をする?」


「守る」


実咲が。


両手を広げる。


――パァァッ!


しかし。


今回は。


巨大な壁を作らなかった。


光が。


細い糸のように。


ガルドの槍へ。


レオンの剣へ。


熊五郎の鍋へ。


それぞれ繋がっていく。


「これは……」


ガルドが。


槍を見る。


「力が流れてくる」


レオンも。


剣を見る。


「俺にも」


熊五郎が。


鍋を見る。


「実咲」


「うん」


「これは……」


「分からない」


実咲は。


苦しそうに笑う。


「でも」


光の糸を。


握る。


「知ってる気がする」


その瞬間。


実咲の頭に。


母の声が響いた。


『守る時は』


『力を壁にするんじゃない』


『繋ぎなさい』


「……!」


実咲の目が。


大きく開く。


「繋ぐ……」


母の声が。


続く。


『守る人と』


『戦う人を』


『一つにするの』


実咲が。


息を呑む。


「これが……」


光が。


さらに強くなる。


「お母さんの技?」


熊五郎が。


気づく。


「守護者の技か」


「うん」


実咲が。


頷く。


「名前は分からない」


「なら」


熊五郎が。


笑う。


「今、付ければいい」


「え?」


「お前が使う技なんだから」


実咲は。


少し考える。


そして。


言った。


「……守護連結」


光が。


一気に広がる。


――パァァァァッ!!


ガルドの槍が。


金色の光を纏う。


レオンの剣にも。


光が集まる。


そして。


熊五郎の鍋から。


炎が噴き上がる。


三人の力が。


一つの光の線で。


繋がった。


巨大な敵が。


初めて。


後退する。


「……その技を」


低い声。


「まだ使える者がいたか」


実咲が。


驚く。


「知ってるの?」


「お前の母が」


巨大な敵が。


腕を構える。


「最後に使った技だ」


熊五郎が。


息を呑む。


「……最後に?」


巨大な敵が。


拳を振り下ろす。


「そして」


――ドォォォン!!


「その技で」


黒い衝撃が。


町へ広がる。


「私を封じた」


実咲の光が。


衝撃を受け止める。


「くっ……!」


実咲の身体が。


後ろへ押される。


黒い線が。


首から。


頬へ伸びる。


「実咲!」


熊五郎が。


叫ぶ。


「顔まで……!」


実咲は。


苦しみながらも。


光を離さない。


「まだ……」


「やめろ!」


「まだ守れる!」


黒い線が。


頬を伝う。


その瞬間。


実咲の中から。


また一つ。


記憶が消えた。


「……」


実咲が。


目を見開く。


「熊五郎……」


「何だ!」


「私」


涙が。


頬を伝う。


「今」


「……」


「何を守ってるんだっけ?」


熊五郎の胸が。


締め付けられる。


「俺たちだ」


「……」


「町だ」


「……」


「お前が大切にしてきた全部だ」


実咲が。


必死に笑う。


「……そっか」


「そうだ」


「じゃあ」


実咲は。


もう一度。


手を伸ばす。


「守る」


光が。


巨大な敵を包む。


「お母さんが守ったものを」


「……!」


熊五郎が。


実咲を見る。


「今度は私が守る!」


――ドォォォォン!!


巨大な光が。


戦場を包んだ。


黒い鎧に。


亀裂が走る。


「ぐ……!」


巨大な敵が。


初めて苦しそうな声を上げる。


ガルドが。


叫ぶ。


「今だ!」


レオンも。


走る。


「行くぞ!」


二人の攻撃が。


同時に。


巨大な亀裂へ叩き込まれる。


――ズガァァァン!!


そして。


熊五郎が。


鍋を掲げる。


「最後は」


炎が。


巨大な渦になる。


「料理で決める!」


――ゴォォォォッ!!


炎が。


光と混ざる。


巨大な敵の胸へ。


一直線に突き刺さる。


――ズドォォォォン!!


巨大な敵の胸に。


刻まれていた魔法陣が。


大きく砕けた。


「ぐおおおおおっ!」


巨大な咆哮。


黒い霧が。


一気に吹き飛ぶ。


だが。


その直後。


実咲の身体が。


崩れ落ちた。


「実咲!」


熊五郎が。


抱き止める。


「おい!」


実咲は。


目を閉じている。


「実咲!」


ゆっくり。


目を開ける。


「……熊五郎?」


「ああ!」


「……よかった」


「何が?」


実咲が。


小さく笑う。


「名前」


「……」


「ちゃんと覚えてる」


熊五郎は。


ほっと息を吐いた。


だが。


実咲の頬に浮かんだ黒い線は。


消えていない。


そして。


その線の中に。


新しい文字が。


浮かび上がっていた。


――封印。


熊五郎が。


それを見る。


「……封印?」


巨大な敵は。


胸の亀裂から。


黒い血のような魔力を流しながら。


ゆっくりと笑った。


「そうだ」


「……」


「私は倒されたのではない」


巨大な目が。


実咲を見る。


「お前の母に」


そして。


熊五郎を見る。


「封じられただけだ」


黒い霧が。


再び集まり始める。


「そして」


巨大な敵の胸に。


新しい亀裂が開く。


「その封印を解く鍵は――」


実咲の左手。


そこに浮かぶ。


「守護者の力だ」


実咲が。


自分の手を見る。


「……私?」


熊五郎が。


立ち上がる。


「なら」


鍋を握る。


「絶対に渡さない」


巨大な敵が。


笑う。


「果たして」


黒い霧が。


空を覆う。


「お前は守り切れるかな?」



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