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第112話 王と守護者の力

第112話 王と守護者の力


「それこそが――」


黒い男の声が。


戦場に響いた。


「失われた王国が隠していた、最後の力だ」


実咲は。


自分の手を見る。


熊五郎と重ねた手。


その下には。


王冠。


剣。


鍋。


麦。


四つの紋章が浮かんでいる。


そして。


その中心に。


二人の手を繋いだような紋章。


「……何なの?」


実咲が。


小さく呟く。


熊五郎も。


答えられない。


「俺も知らない」


「熊五郎でも?」


「ああ」


その瞬間。


黒い男が。


右手を上げた。


「ならば」


黒い霧が。


一気に膨れ上がる。


「実際に試してみるといい」


――ズドォォォン!!


巨大な黒い魔力が。


二人へ向かって飛んでくる。


「実咲!」


熊五郎が。


前へ出る。


「守る!」


実咲も。


同時に手を伸ばした。


――パァァッ!


二人の魔力が。


ぶつかる。


いつものような。


実咲だけの光ではない。


熊五郎の炎と。


実咲の光が。


混ざっていく。


赤い炎の中に。


金色の光が走る。


「……!」


黒い魔力が。


押し返される。


――ゴォォォッ!!


黒い男が。


目を見開く。


「そんな……」


さらに。


熊五郎の炎が。


大きくなる。


「実咲!」


「うん!」


二人の力が。


完全に重なった。


――ドン!!


黒い魔力が。


弾き飛ばされる。


黒い男の身体が。


大きく後ろへ飛ぶ。


「ぐっ……!」


ガルドが。


目を見開く。


「今のは……」


レオンも。


驚いている。


「二人の魔力が一つになった?」


実咲は。


自分の手を見る。


「私がやったの?」


熊五郎が。


首を振る。


「俺にも分からない」


「じゃあ……」


「二人でやったんだろ」


その言葉に。


実咲が。


少し笑う。


だが。


次の瞬間。


「……っ」


実咲の身体が。


ぐらついた。


「実咲!」


熊五郎が。


支える。


「大丈夫?」


「うん……」


実咲は。


頭を押さえる。


「ただ」


「ただ?」


「何か……」


眉を寄せる。


「また一つ」


「……」


「忘れた気がする」


熊五郎の顔が。


険しくなる。


「何を?」


「分からない」


実咲が。


苦笑する。


「忘れたこと自体を忘れてる」


熊五郎は。


拳を握る。


「くそ……」


黒い男が。


笑った。


「そうだ」


「……」


「力を使えば使うほど」


男が。


実咲の左手を見る。


「守護者は自分自身を失っていく」


黒い線が。


手首から。


肘へ伸びている。


「だが」


黒い男が。


熊五郎を見る。


「お前にも代償はある」


熊五郎の右腕。


黒い線が。


肩へ伸びている。


「……」


「王の力を使えば」


男が。


言う。


「お前もまた、過去に近づく」


熊五郎の表情が。


変わった。


「過去?」


黒い霧の中に。


また。


燃える王城が浮かぶ。


「お前が失った夜」


熊五郎が。


その光景を見る。


「……やめろ」


「王国が滅びた理由」


「やめろ!」


熊五郎の魔力が。


爆発する。


――ドォォォン!!


黒い霧が。


吹き飛ぶ。


実咲が。


驚いて熊五郎を見る。


「熊五郎?」


「見るな」


「でも……」


「今は戦う」


熊五郎が。


前を向く。


「過去を見るのは」


鍋を持つ。


「全部終わってからでいい」


その時。


黒い男が。


姿を消した。


「――!」


実咲が。


周囲を見る。


「どこ?」


「上だ!」


レオンが。


叫ぶ。


巨大な黒い影が。


空から落ちてくる。


――ズガァァァン!!


地面が。


大きく揺れる。


「うわっ!」


実咲が。


倒れそうになる。


ガルドが。


支える。


「大丈夫か!」


「ありがとう!」


「礼は後だ!」


ガルドが。


槍を構える。


黒い影の中から。


無数の敵が。


飛び出してくる。


「来るぞ!」


レオンが。


叫ぶ。


――ドドドドドッ!


敵が。


一斉に襲いかかる。


ガルドが。


一体を突き飛ばす。


レオンが。


二体を斬る。


熊五郎は。


鍋を地面へ置いた。


「実咲」


「うん」


「料理を作る」


「分かった」


熊五郎が。


材料を取り出す。


戦場に。


包丁の音が響く。


トン。


トン。


トン。


黒い敵が。


迫ってくる。


「そんなことをしている暇があるか!」


敵が。


熊五郎へ襲いかかる。


実咲が。


光を飛ばす。


――パァン!


敵が。


弾き飛ばされる。


しかし。


実咲の左手が。


また痛む。


「……っ!」


黒い線が。


少し伸びる。


「実咲!」


「大丈夫!」


熊五郎が。


料理を続ける。


鍋へ。


切った野菜を入れる。


肉を入れる。


出汁を注ぐ。


火を強くする。


――ボッ!


香りが。


広がる。


ガルドが。


敵を倒しながら。


叫ぶ。


「熊五郎!」


「もう少しだ!」


「まだか!」


「あと三十秒!」


「長い!」


レオンが。


敵を斬り飛ばす。


「俺たちが稼ぐ!」


二人が。


前へ出る。


実咲も。


光を広げる。


「私も!」


――パァァッ!


三人を。


光が包む。


その瞬間。


実咲の頭に。


知らない光景が浮かんだ。


――母。


――熊五郎。


――王城。


そして。


一つの言葉。


『守る力は、一人では完成しない』


「……!」


実咲が。


目を開く。


「そうか……」


熊五郎が。


聞く。


「どうした?」


「この力」


実咲が。


熊五郎を見る。


「一人で使う力じゃない」


熊五郎も。


気づいた。


「……なるほど」


実咲が。


ガルドを見る。


「ガルド!」


「何だ!」


「私の光を受け取って!」


「どうすればいい!」


「戦って!」


「分かった!」


光が。


ガルドの槍へ集まる。


――パァァッ!


槍が。


光をまとった。


ガルドが。


敵へ突っ込む。


「うおおおおお!」


――ズガァァン!!


一撃で。


敵の黒い鎧が。


砕け散る。


「すごい!」


レオンも。


光を受け取る。


「俺にも!」


「うん!」


レオンの剣が。


光をまとった。


――ザンッ!


黒い敵を。


一気に斬り裂く。


実咲の顔から。


少し笑みが消える。


「……」


熊五郎が。


気づく。


「実咲?」


「……大丈夫」


「何を忘れた?」


「分からない」


「またか」


実咲は。


左手を見る。


黒い線が。


肘を越えようとしている。


「でも」


実咲は。


二人を見る。


「今の二人は」


ガルド。


レオン。


「ちゃんと覚えてる」


熊五郎が。


笑う。


「それでいい」


料理が。


完成する。


熊五郎が。


鍋を持ち上げる。


「できたぞ!」


温かな香りが。


戦場を包む。


実咲が。


振り返る。


「何の料理?」


「肉と野菜の煮込みだ」


「普通だね」


「普通が一番だ」


熊五郎が。


笑う。


「食べろ」


ガルドと。


レオンが。


料理を口にする。


――パクッ。


二人の身体を。


温かな光が包む。


力が。


一気に戻る。


「……すごい」


レオンが。


剣を握る。


「身体が軽い!」


ガルドも。


槍を構える。


「これならまだ戦える!」


熊五郎が。


実咲を見る。


「料理は戦うためだけじゃない」


「うん」


実咲が。


頷く。


「みんなが立ち上がるための力」


その瞬間。


黒い男が。


再び姿を現した。


だが。


その顔から。


笑みが消えている。


「……王と守護者」


黒い霧が。


揺れる。


「そして仲間」


男が。


低く呟く。


「三つが揃ったか」


熊五郎が。


構える。


「来い」


黒い男が。


両手を広げる。


「ならば」


空が。


真っ黒に染まる。


「次は」


巨大な黒い門が。


空中に開く。


「王国を滅ぼした力を」


門の向こうから。


巨大な何かが。


こちらを覗く。


「直接、見せてやる」


実咲は。


その姿を見上げる。


そして。


左手の黒い線が。


突然。


強く光った。


「……!」


実咲の頭の中に。


母の声が響く。


『実咲』


『この力を使う時は――』


そこで。


声が途切れる。


実咲が。


目を見開く。


「……何?」


熊五郎が。


見る。


「どうした?」


実咲は。


震える声で。


呟いた。


「お母さんが」


「……」


「最後に何か言おうとしてる」


巨大な門が。


完全に開く。


そして。


門の向こうから。


かつて熊五郎の王国を滅ぼした存在が。


姿を現した。



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