4.天使と狼だって青春したいよね
「青春ってどんなものなのでしょう?」
「なんだ急に」
青春。それは学生時代の代名詞とも呼べる、学生特有の季節のこと。
甘酸っぱい青春、それは私にとってはまだよくわからないものです。
そんな私が、なぜ青春というものを欲しているのか?
それは、刻都くんがいるからでしょう。
……なぜに刻都くんが思い浮かぶ?
昨日読んだ小説に触発されたのでしょう。
あと1ヶ月後に迫った学園祭が頭をよぎったからでしょう。
学生といえば青春、青春といえば学校行事。
いや、ここは学校行事ではなく恋だと言うべきでしょうか?
それすらも未だわかっていない私は、恋をするなんてもっと先のこと。
正門から校舎へと繋がる桜並木の道を歩きながら、ふと校舎を見上げてみます。
私達が通うこの高校、私立珀玲学園では、毎年9月に学園祭が行われます。
クラスの出し物や部活ごとのお披露目などがあり、他にも飛び入り参加ができる舞台があったりと、自由度が高いのもこの学園祭の魅力なのかもしれません。
私のようななんの部活にも所属していない、いわゆる帰宅部の人たちは飛び入り参加の舞台の他に、先生に申請を出せば帰宅部同士で出し物をすることもできます。
学園祭は3日間行われ、その間に様々なことをします。
もちろん模擬店だけでなく、バンド演奏やダンスなどのステージ企画や展示もあったりと、なかなか盛りだくさんな3日間になりそうです。
「そういえば、学園祭ではクラスの出し物がありますよね。私達のクラスでは喫茶店でしたっけ」
「そうだな。確か執事・メイド喫茶じゃなかったか?」
「なかなか攻めた喫茶店ですね……。でも、とっても楽しそうです」
「まあ、雪解だったらメイドの服で接客だろうな」
メイドさんの服は着たことがありませんしメイドさんをやったことだってないのですが、それもそれで面白そうです。
メイドさんだけでなく執事さんもいるのでしたら、刻都くんも執事さんになるかもしれませんね。
最近の刻都くんはしゃべったことがなかった時のイメージとはかなり違う、優しくてかつ可愛らしさもある方なので忘れかけていましたが、刻都くんは学年1位2位を争うほどの美形。
これはまた女子たちのおかげで喫茶店が賑やかになりそうな……。
うん?なぜ私は今モヤッとしたのでしょう。
刻都くんがかっこよくてモテることはわかっていますが……。
「ん、どした、雪解?」
「ふわぁっ!な、なにもないですよ!?」
不意に顔を覗き込まれ、至近距離にある刻都くんのきれいな顔。
うっ、そんな顔で覗き込むのは反則ですよ……!
なぜかどきどきと速すぎる拍を打つ、私の心臓。
「ほ、ほら、教室に行きますよ!」
「なぜそんなに急ぐ?」
ああ、やっぱり刻都くんと一緒にいるとおかしくなってしまいそうです……。
歩く足を早くして、意味もわからず教室へと急ぎました。
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刻都くんの言った通りでした。
案の定、学園祭での執事・メイド喫茶では、私がメインで接客をすることになり、そして刻都くんもまた接客担当になるそうです。
さすがに接客ふたりでは回らないので、私と刻都くん含め5人が接客だそうです。
「えーっ、刻都くんが接客するんだって!私、普通にお客さんとして接客されたいんだけど〜!」
「それな、絶対かっこいいじゃん!」
刻都くんももちろん執事の服を着ることになるので、女子たちは盛り上がっています。
女子たちの熱い視線に気づかないふりをして、窓の外にすいっと視線をずらす刻都くん。
それすらも絵になってしまうので、女子はまた黄色い声を出しています。
「……はぁ、めんどくせ」
「刻都くん……」
「執事の服を着たくないわけじゃないけどさ、いちいちそうやって盛り上がるとかよくわかんない。別に俺が着てていいこととかないだろ」
ちょっと不服そうに言う刻都くん。
うっ。そういう刻都くんさえ可愛いと思ってしまう私はおかしいのでしょうか?
ふと執事姿の刻都くんを想像する。
(いや、見てみたい……!)
絶対にかっこいいじゃないですかっ、そんなの!
私は他の女子たちと同じように騒ぐつもりはありませんが、それでもかっこいいものはかっこいいですよ……!
「私……執事姿の刻都くんを見るの、楽しみですよ?」
「……っ」
あれ、素直に言っただけですのに、なぜか刻都くんはびっくりしたように目を見開いたかと思ったらまたすぐに目を逸らしてしまいました。
……?ちょっと耳が赤い気が……。
それもまた愛らしくて、ふふっ、と笑ってみる。
「お前、よくそれを本人に言えるよな……」
「そうですか?素直に気持ちを述べただけですよ?それに、執事姿の刻都くんを見ることなんて滅多にないでしょうし」
「ふーん?」
すると刻都くんは考え込んだかと思えば、急ににやっとして笑いました。
「ふーん、じゃあ、お前のメイド姿もしっかり見せてくれるんだよな?」
「……!え、えっと、多分……?」
「へえぇ?でも、俺が執事姿を見せるんだから、雪解のメイド姿を見せてもらったっていいんだろ?」
「っ、き、気が向いたらですからねっ!私だって恥ずかしくないわけじゃないんですから!」
もうっ、刻都くんがそんなことを言うから……!
メイド服を着ることに対して後ろめたさがあるわけではないですが、人にまじまじ見せるとなるとちょっと……。
ちょっとだけ嬉しそうに、かつ意地悪な刻都くんの瞳。
まあ、でも……。
楽しそうな刻都くんを見れるのなら、そこまで大変なことではないのかもしれないです。
いつもより少しだけ、賑やかな学園祭になりそうです。
第4話(終)




