2.天使のひとりごと
昨日の雨をきっかけに、刻都くんの素顔に気付くしいねちゃん。
昨日の大雨が嘘みたいです。
朝、陽の光で目を覚ましたら、朝露がきらきらと光っていました。
今日はいいことがありそうな予感がします。
いつものように道を歩いて学校に向かっていると、曲がり角に人影がありました。
それに気付かず……。
「きゃっ」
「わっ」
どんっ、と誰かにぶつかってしまいました。
わわ、朝から相手の方に申し訳ないことをしてしまいました……!
あわてて顔を上げ、謝ろうとすると、
「ごめんなさ……えっ、刻都くん!」
「……おう、おはよ」
これはこれは、予期せぬお相手でした!
ぶつかってしまったのは、なにやら不機嫌そうな刻都くんでした。
どうしたのでしょう、まさか、私がぶつかってしまったから……?!
「ご、ごめんなさい!気づかなくて……」
「……?いや、気にしてないけど」
……あら?なにやらぶつかったことで不機嫌なわけではないそうです。
なにかあったのでしょうか?もしかして、朝ご飯を食べそこねてしまったとか?
ううん、もしかしたら、なにかものを落としてしまったのかも?
……なんて考えていましたら、次はなにか不思議そうなお顔をしています。
「雪解、今、変なことを考えてなかったか?」
「ほぇっ?」
「そうだな……例えば、俺が不機嫌な理由。……ご飯を食べそこねたんじゃないか、とか」
「えっ、すごいです!よくわかりましたね!」
うーん、ちょっと生ぬるい目で見られている気がします。
そんなに変なことを言ってしまったのでしょうか?
そうこうしている間に学校へ。
正門をくぐり抜け、校舎までの無駄に長い道を歩く。
「……まあ、そのぐらい抜けてるのが好かれる理由なのかもな」
「?」
たまに刻都くんが呟いている言葉の意味が理解できません。
抜けている……とはなんでしょうか?
いつの間にかもとの刻都くんに戻っています。不機嫌さも消えたみたいです。
なにがあったのかは私にはわかりませんが、元気になったのなら良かったです。
ふと刻都くんを見たら、なぜか微笑んでいました。なにかいいことでもあったのですね!
楽しそうな刻都くんを見ていると、こちらも嬉しい気持ちになります。
「ゲコッ」
「わ、可愛いアマガエルさんですね!」
「ん、ほんとだ」
足元に飛び出してきたのは、綺麗な黄緑色をしたアマガエルさん。
あまり爬虫類や虫さん全般が苦手な私ですがアマガエルさんはとっても可愛らしいので、見つけたら思わず観察してしまいます。
もちろん、虫さんを見てびっくりしてしまう人たちの気持ちもわかるのですけれど。
ゲコッゲコッ、と、気分が良くてお散歩をしに来たかのようにアマガエルさんが鳴いています。
「昨日の雨で元気になったのでしょうか?」
「そうかもな」
意外ですね、どうやら刻都くんもカエルさんは平気なようです。
しゃがんで見ている刻都くん。
少しにっこりとした彼は、「一匹狼」と言われるようなクールな方にはまるで見えません。
笑わない、とも聞きましたが、刻都くんは案外よく笑っています。
そんな彼が可愛らしく見えて、そっと手を伸ばして、
「?!」
思わずよしよしと頭を撫でてしまいます。
わ、思ってた通り、お手入れがされているさらさらとした髪です。
すると、がばっと刻都くんが立ち上がりました。
「ん?どうしたのですか?」
「いや、どうしたって……なぜ俺のことを撫でている?」
「あっ、すみません、つい。カエルを見ている時の姿が可愛いなって思いまして。」
「可愛いって……」
?どうしたのでしょう、刻都くんの頬にいつもよりうっすらと赤みが指しています。
じっと刻都くんを見つめていると、急にふいっと顔をそらしてフードを深く被りました。
……?
「なんか……刻都くんって、猫っぽくて、犬っぽくて、ある意味狼があっているのかもしれないですね」
「……何を言ってるんだ?」
うん、やっぱり犬っぽい狼ですね。
あれ、狼ってイヌ科でしたっけ。
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教室。
自分の机に行くとやはりスイッチがオンになるのかオフになるのか、いつものように机に突っ伏して寝ています。
そんな姿もかっこいいようで、黄色い声とやらを上げている女子がたくさんいます。
「私からしたら、かっこいいというより可愛いのですけれど……」
おっと、思っていたことが声に出ていたようです。危ない危ない。
この世の中、一言で危険に巻き込まれかねないですからね。女の子たちの目線はいつも痛い理由はどうしてもわからないですが……。
まあきっと、なにか意味があるのでしょう。私の身だしなみがよろしくないとか?
それとも、刻都くんが可愛すぎるからでしょうか?
「……誰かに可愛いとか言われたの、雪解が初めてだよ」
「いつの間に起きていたのですか?!」
「……さっきから」
あからさまに私の頬が火照っていくのがわかります。
聞かれてしまったようで……。
そして、そんなとろんとした目でこちらを見ないでください!腕に顔を埋めながら上目遣いをしないでください!
さすがの私でもそれは反則ですよ……!
「ん?どした、雪解?」
「なっ、なんでもないですっ!」
「なーんでそんなに怒ったように……ふははっ」
またまた刻都くんはそんなふうにして笑います。
最近思うのですが、刻都くんの本当の素顔はこちらなんじゃないかと。
クールでかっこいい、一匹狼の刻都くんではなく、花が咲いたように笑う刻都くんが本当の彼なんじゃないかと。
これは……ちょっと観察してみる甲斐がありそうです。
「絶対また変なこと考えてるだろ……」
「うっ」
第2話 (終)




