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温泉旅館で狩猟

あれから刹那は、サイラとテーブルサッカーで遊んでいた。

棒をぐるぐる回して選手を回転させ、シュートを決めるゲームだ。


背の低い茶髪ボブの幼い少女――サイラは、台座の上に乗って高さを調整しながら必死にプレイしている。


「いけー、ファビオン! ぐるぐるキック!」


その年、世界大会で超合衆国アメリカのキャプテンを務めたファビオの名を叫ぶ。


「ふっ、そうはさせないわ」


刹那はゴール前の一列でそれを見事にセーブ。その勢いのまま、


「そーれっ!」


カウンターシュートが決まり、ボールはゴールへと吸い込まれた。


「ふふ、まだまだだね」


その容赦ない一撃に、サイラは顔をしかめる。


「もう一回! もう一回!」


半ば泣きそうな声で駄々をこねる。


「分かったわ、もう一回ね」


第二節、サイラのキックからスタート。


「いけー、ロナウジーニョ! ぐるぐるキック!」


その年、猛威を振るった南米連合の選手。だが単調な動きは読みやすく、刹那は難なく防ぐ。


そのままカウンター――しかしボールは最後列の選手に弾かれ、中央へ戻った。


「ここ、いける!」


素早く反応したサイラがシュート。


「あっ」


刹那が声を漏らす間に、ボールは再び刹那側へ。


「甘いわね。今度はお姉さんの番よ」


刹那はフェイントのように選手をくるくる回す。あえてボールに触れず、タイミングを読ませない。


サイラが息を飲んだ、その瞬間――


シュート。


見事、ゴールが決まった。


「うああああん! また負けたよぉ!」


ついにサイラは泣き出してしまう。


すると、奥にいた顔に刺青の入った男が近づいてきた。


「お客さん、すみません。あとはこちらで泣き止ませますので」

「先にお風呂へどうぞ」


その見た目とのギャップに、刹那は内心で驚く。


(意外と優しい人なんだ……)


そこは徳川邸の中にある温泉旅館。

提灯が並び、白い暖簾が揺れる、本格的な木造建築だった。


(入っていいのかしら……でも、お風呂どうぞって言ってくれたし)


おそるおそる中へ入る。


磨き上げられた木の床が光り、柔らかな和風の照明が空間を包む。まるで高級旅館のような雰囲気だ。


刹那は感心しながら温泉へ向かった。


そこは吹き抜けになっており、外には杉や桜が茂る森が見える。

黒い大理石の湯舟が二つ――通常の温泉と、ややぬるめの湯。


体を洗い、湯で流したあと、刹那はぬるめの湯に身を沈めた。


(あー……いい湯)


思わず声が漏れる。


「あー最高!」


(ここに住めたら幸せだろうな……サイラちゃんいいなあ)


毎日この温泉に入れるサイラが羨ましい。


自分の家も昔はそれなりに裕福だった。だが両親が教会から高価な壺や皿を買い続け、借金を抱え、やがて安いアパートへ――。


(どうしてこの世は、こんなにも不公平なんだろう)


一瞬、暗い思考がよぎる。


(やめよう。そんなこと考えても意味ない)


(前を向いて歩かなきゃ。頑張れ、刹那!)


温泉を上がると、忍者のような人物に案内され和室へ。


出されたのは冷たいミルクコーヒー。


(何これ!クセになる)


濃厚なのに後味はすっきり。風呂上がりには最高だった。


さらに、野菜サラダや真鯛の刺身が並ぶ。


(ああ、もう、お腹いっぱい)


満足して布団に入ろうとしたとき、テレビの横に置かれたVR装置が目に入る。


(そういえば、ゲーム持ってきてたっけ)


(よし、一狩り行くか)


――視界が切り替わる。


そこはヤシの木が生い茂る、インド風の部族集落。ジャンボ村と呼ばれる場所だ。


湿った空気。土と草の匂い。遠くで鳥の鳴き声。

ジャンボ村は、活気に満ちていた。


斧で木を伐る音、商人の呼び声、焼けた肉の香ばしい匂い。すべてが混ざり合い、生きた世界を作り出している。


どうやらチュートリアルのクエストを終了すると、この村に移動するみたいだ。


鼻がとんがった、白い着物と黄色いふっくらとした和風パンツをはいている男がいた。


「やあ! よく来てくれた! オイラが村長だ!」


大きな壺を背負った男が手を広げる。


「キミもハンター募集を聞いて来たんだな!」


「あ、はい」


軽くうなずく刹那。


「この村を守り、モンスターを狩ってくれるか?」


差し出された手を握り返す。


「もちろんです」


「頼もしい! ここで腕を磨けば、一流ハンターも夢じゃない!」


「それってトッププレイヤーにもなれるてことですか?」


食い気味に問う刹那。


「それは分からないな。トッププレイヤーてなんなんだ?」


「……そうよね」


刹那はうなずく。


その後、外にある木造のバーのような酒場でメアリからクエストを受注するように案内された。


「あの、すみません。村長さんに、ここへ来るよう案内されたんですけど……」


刹那が声をかけると、カウンターの奥にいた三角帽子の少女が顔を上げた。

赤みがかったショートヘアが、ふわりと揺れる。


少女――メアリは、にこりと柔らかく微笑み、左手をそっと横に広げた。


「ようこそ。でしたら、こちらでクエストを受注できますよ」


木製のカウンターの上には、紙束や地図が整然と並べられている。

かすかにインクと紙の匂いが漂っていた。


「分かりました。今、どんなクエストがありますか?」


刹那が身を乗り出すように尋ねると、メアリは一枚の紙を抜き取る。


「現在ですと……ブルファンゴの群れの討伐依頼がありますね」


さらりと告げながら、紙を差し出す。


そこには、荒々しい牙を持つイノシシの絵が描かれていた。


差し出された資料には、凶暴そうなイノシシの絵。


(突進してきそう……)


やがて刹那は決意した。


山のようないわばから滝が流れる海のそばにある密林

――密林マップ「テロス密林」。


滝の轟音が遠くから響き、空気には水の粒子が混じっている。


(虹……綺麗)


崖と崖の間にある奥に虹が見えた。

刹那はベースキャンプを抜け、エリア4に行く。

そこは右側は崖になっており、ヤシの木や草がいろいろ生えていた。


(綺麗な景色、おいしい空気、ここ最高じゃない)


「ドス、ドス」


(あれがブルファンゴかしら)


牙が異常に発達した毛深いイノシシだ――――

ブルファンゴが前左足をたたく。


(何かこっちきそうだわね)


「ドドドドド」―――ブルファンゴが刹那のほうに突進。


「うげっ!」


激痛。


気づけばベースキャンプへ戻されていた。


「なによあいつ! 痛いじゃない!」


最新VRの痛覚は現実の四分の一。それでも十分痛い。


刹那は片手剣を構え、怒りを露わにする。


「あの豚野郎、ぶち殺してやる!」

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