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進撃の猪

刹那の武器は、左手に鉄の盾、右手に片手剣――ハンターナイフ。

攻撃力八十四しかない初期装備だ。


(この武器、弱そうね)

(早く強い武器が欲しいわ)


刹那はもう一度、エリア4へ侵入する。

あの生意気なブルファンゴを、みじん切りにするためだ。


「――!」


侵入と同時に、さっきのブルファンゴが目の前にいた。


一瞬だけ膠着する。だが、すぐに怒りが蘇る。


刹那は迷わず踏み込み、ブルファンゴの目を狙って横薙ぎに斬りつけた。


「ブルッ!」


痛みに怯んだのか、ブルファンゴは頭を横に振る。


その隙を逃さない。


「このっ……このっ!」


刹那は盾で裏拳を叩き込み、何度も殴りつけた。


視界を奪われたのか、ブルファンゴは反撃してこない。


(今よ――!)


刹那は小盾を投げ捨て、片手剣を両手で握る。


「――〇になさい」


振り下ろした刃が、首元へと突き刺さった。


「ぶひィィィッ!」


悲鳴を上げ、ブルファンゴは後退する。


だが――まだ倒れない。


「まだ死なないなんて......やっぱりこの武器、弱すぎね」


舌打ち混じりに呟き、刹那は再び駆け出す。


両手で剣を構え、跳躍。


「はあっ!」


ジャンプ斬り。


「ぶふぉん……」


倒れ込むブルファンゴ。だが、まだ息がある。


「しぶといわね」


刹那は冷たく言い放ち、再び跳ぶ。


「とどめよ、糞豚さん」


二度目のジャンプ斬りが突き刺さり、ようやく動きが止まった。


(……私、両手持ちのほうが合ってる気がするわ)

(片手剣は弱いし、次は別の武器にしようかしら)


そう考えた、そのとき――


「ドドドドド……」


地鳴りのような音が、背後から迫ってきた。


同時に、視界に文字が浮かぶ。


『ブルファンゴの群れを討伐してください』


「ん?」


振り返った刹那の目に映ったのは――


十体はいるブルファンゴの群れだった。


一斉に前脚で地面を蹴る。


(無理、逃げなきゃ!)


刹那は全力で前方にあるエリア3へ走り出す。


だが背後から、怒涛の足音が迫る。


「ドドドドドドドッ!」


(終わる……あんな数に轢かれたら、死ぬ!)


エリア3に入る直前――


ドンッ!!


「ッ……!」


背中に衝撃。

そのまま前へ吹き飛ばされ、転がり込むようにエリア3へ入った。


「はぁ……はぁ……これで……大丈夫……」


四つん這いのまま息を整え、ゆっくりと立ち上がる。


口の中にざらつきが広がった。


「……砂、最悪」


そのとき――


ドスン。ドスン。


重い足音。


(……まさかね)


振り向く。


――いた。


無数のブルファンゴが、そこにいた。


「ドドドドドドドッ!」


再び突撃。


「逃げなきゃ!」


岩場に囲まれた細長いジャングルを駆け抜ける。

木々にぶつかりながらも、ブルファンゴは追ってくる。


冷や汗が頬を伝う。


逃げ場を探す。


左は海。右には段差。


(あそこ……!)


だが次の瞬間――


ドンッ!!


「くっ……!」


再び衝撃。身体が前へ吹き飛ぶ。


(もう……痛いじゃない!)


歯を食いしばり、段差へ向かって跳ぶ。


指をかけ、よじ登る。


なんとか上に立ち、振り返った。


下ではブルファンゴたちがうろついている。


「……ふぅ」


思わずドヤ顔になる。


「豚さんたち、もう来られないわね」


刹那は剣を納め、その場に座り込む。


(どうやって倒すのよ、あれ……)


群れを見下ろしながら考える。


(群れで行動……一匹に突っ込んだら囲まれる)

(正面からじゃ無理ね)


結論は明白だった。


(今日はログアウトして……明日、大和くんに聞こう)


――場面は現実へと戻る。


刹那の仕事場の個室。

奥には吹き抜けの見える窓、ドアの先には陽光と植物。


オシャレな空間で、大和に昨日の出来事を話す。


すると大和は首をかしげた。


「……それ、改造されたソフトじゃないですか?」

「僕のやってるモン○○ーハンター2には、そんなクエストありませんよ」


「やっぱり……おかしいわよね」


納得する刹那。


大和は笑みを浮かべた。


「いいなあ、改造版」


「え? 何がいいの?」


「難易度が高いほうが攻略しがいがありますし」

「クリアできたら、きっと特別な存在になれますよ」


その言葉に、刹那は息を呑む。


(それって……あのクソゲーをクリアしたら、私も特別に?)


胸の奥が熱くなる。


「ありがとう、大和くん。もう少し頑張ってみるわ!」


「はい、応援してますよ」


水を一口飲み、ふう、と息をつく。


そのとき――


「興味深い話ねえ」


背後から声。


振り返ると、黒髪が触手のようにうねる少女――天津所長が立っていた。


「私もそのゲーム、やってみたいなーん」


大和が振り返り、天津所長の髪を触る。


「これ動くんですね、すごい……」


「少年、見る目ある。タコぱちぱち」


袖の長い白衣で握手する所長。


刹那は慌てて立ち上がる。


「お、おはようございます!」


「おはようらー」


青い瞳に隈のある、不思議な雰囲気の少女。

刹那は天津所長と適切な距離をとるために一歩前にでる。


「天津所長もVRゲームで遊んだりするんですか?」


「やったことはないねーん。でも……友達が欲しいのーん」


しょんぼりする所長。


(……ちょっとかわいいかも)


危ない思考を振り払う。


そこへ大和が口を挟む。


「友達、欲しいですよね。でも立場的に難しいですよね」

「所長と職員が友達になるのはいろいろありますから」

「ま、刹那さんを副所長とかにすればなれそうですが……」


その話に天津所長はにやける。


「じゃあ決めたーん。刹那、副所長ねーん」


「えっ!?」


「いいんですか?」


「いいよーん。友達ほしいしー」


突然の昇進。


(給料は上がるけど、責任が……)


「今、副所長になるか悩んでるねーん」」

「おそらく責任のある立場になるのがいやなのねん?」


心を読まれ、冷や汗。

それにわって入る大和。


「ですよねえ、面倒ですし」


「大丈夫だーう。お飾りにするねーん」

「給料だけアップ、デメリットなしーん」


――最高条件だった。


「……やります」


「よろしくねーん、副所長」


こうして刹那は――平研究員から、副所長へとランクアップした。

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