17.目からウロコがとび出しました
ハルに触れ、一緒に眠るようになってからというもの、私はハルの世話をしたくて、したくて仕方がない。
父性か?母性ではない。
いや、私たちは番だ。番特有の本能か。
では何という?
「……つがい性?」
「……何ですか、それは」
思わず口に出してしまったらしい。
向かいにいたエドガーが、またか、という顔で見てくる。わかりやすい男だ。
エドガーはそれ以上追及しなかった。
しかし、最近の私は自分でも少しおかしいと思う。
ハルを世話したい以外に、ハルに触れたい、できるだけ傍にいたいという思いも抑えられない。
原因は、わかっている。すべてハルのせいだ。
ハルが可愛すぎるからだ。
ハルは今日、私が加減を間違えてしまったせいで体力的に限界となり、有給を取らせた。
しかも、「そういうことをするのは休みの前の日だけ」という約束まで破ってしまったため、ハルはベッドの上でぷりぷりと怒っていた。
心配ではあったが、あれだけ怒る元気があるなら大丈夫だろう。
そのまま今も、ハルが私のベッドで休んでいると思うと、胸が熱くなった。
そんなこんなで、最後まではまだ出来ていないが、ハルは恥ずかしがりながらも、私が触れることを許してくれる。触れれば頬を赤くする。口付けた時の息があがった、あの表情。
たまに素っ気ない態度を取られることもあるが、私にとってはご褒美だ。私をぶんぶん振り回して欲しい。
どうしてこんなに可愛いのだ。
可愛いが爆発している。
しかし、幸せすぎてそれが、少し怖い。
今、ハルを失ったら私は死ぬだろう。
もう手放すことができないのは明白だ。
そう考えた私は、しばらく悩んでいた。
そこで、私はエドガーに相談してみた。
「エドガー。合法的で、ハルに嫌われず、ハルを独占する方法はないものだろうか」
エドガーが黙った。非常に長い沈黙だった。
やがてエドガーは、静かに口を開いた。
「それを、世の中では婚約や結婚と呼んでいるのでは?」
!!!
私の目から、鱗がとび出した。
盲点だった!完全なる私の失態だ。
なぜ私は今まで忘れていたのだ。
「エドガー。私とハルはまだ、婚約も結婚もしていない」
「確か、されていませんね」
エドガーは冷静に言った。私は椅子から立ち上がった。
「私は何をしていたのだ」
私はすでに、ハルと一生涯ともにいるつもりだった。ハルも言っていたではないか。末永く、と。
私は完全に油断していた。机を拳で打つ。
「……私としたことがっ!」
王族や貴族は、婚約をしてからすぐに結婚するわけではない。
通常は婚約を成立させてから、最低でも半年から一年以上の期間を置く。
つまり、だ。
今、ハルと婚約したとしても。
結婚できるのは、早くて半年後。
「……一刻も早く婚約を成立させなければ」
エドガーが冷静に助言をくれた。
「閣下、……心の準備などが必要では?」
「私はできている」
「ハル君は?」
……一応、確認しよう。
しかし、ハルも「末永く」と言っていた。
私は、ようやく目が覚めたような気分だった。
「エドガー。ありがとう」
返事はなかったが、エドガーはやはり頼りになる男だ。
そして、私の進むべき道は決まった。
ハルと婚約し、結婚に持ち込む。これだ。
ハルはうんと言ってくれるだろうか。
早く伝えたい。




