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内務局員アンナはお掃除をがんばります!  作者: 朝日 橋立
三章め 西方方面軍ですよ!
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二十四話め ケーレルさんです!

 暴動の鎮圧を頼まれたのは今朝で、向き合う暴徒に溜息を吐いたのはさっきだった。

 ここまで幾つかの紆余曲折があった。

 例えば現着したタイミングで小隊の指揮権を制限されたり、そしてついには現場から離れた普段の仕事をしろと言われたり……。


 いやね、しかし中々あの憲兵隊も酷い人達だよ。

 確かにあの隊長さんは上官ではあるが、些か酷いのではなかろうか……。

 それにこれでも私は将校なのだが……どうして孤立させられているというのか。


 もしかして嫌われてしまったろうか。

 よくよく考えればそうだろう。

 この前の尋問の計画も、他のレジスタンス対策の計画も幾つも却下されている。

 一体私が何をしたというのか……。これほど熱心に仕事をしているのに。


「よう」


 手を挙げて近づいてくる人がいた。

 よくよく見知った顔の人である。


「……つい先日ぶりですね。この街は出たのでは?」


「いや、退役するんで旧友に会いに来ようかとな」


 正気を疑う発言だった。

 そしてその素振りもなかったゆえの驚愕である。


「えっ、辞めちゃうんですか? 折角士官学校も出たのに……」


「いやあ、どうにも俺にはここが合わんかったみたいで……恥ずかしい話だけどな」


「退役したら何やるんです?」


「そうだな……。田舎に帰って、また大学に入る勉強でもするよ」


「そうですか……」


 少しながら悲しさもある。

 四年を過ごした友人が遠い所へに帰ってしまう。

 勿論死んではないのだから会えるが、しかしこの悲しさも仕方ないものだろう。


「何か餞別を、と思いましたが何か欲しいものありますか?」


「じゃあ、これでも貰おうかな」


「あー、別に構いませんが特にいいものではありませよ」


 彼が手に取ったのはつい先日買ったペンである。

 二束三文のものであるが、それなりに使うことができた。


「お返しだ」


 彼は机に黒い瓶を置いた。

 ブドウの絵が大きく書かれている。


「赤ワインですか?」


「とっておきさ」


「それじゃあまた夜にでも飲みますね」


 ……無視をしていた。

 ああ、無視をしていたとも。

 小さな違和感だ。

 私の記憶違いの可能性もあれば、そして単なる勘違いの可能性もある。

 彼はこれほど信用のできない顔をしていただろうか?

 初めて会った日と同じの、気の良い、奇妙な、優等生じみた隣人の顔だ。


「……一つ聞きたいことがあります。よろしいですかね」


 彼は頷いた。

 わざとらしい演技を感じた。

 なにか殉教して列聖されることを確信する聖職者のような、そんな恐るべき、唾棄すべき愚者の演技だ。


「貴方は私たちの味方ですか?」


「当然だろう。俺はお前と俺たちの分隊の味方だ」




 *




「……なるほど」


 ことが終わったらしく、小隊のもとへと帰ってきた。

 綺麗だった大通りの雪は、赤黒い染みばかりが目立った。


「戦闘でも起きましたか?」


 派手に殺し過ぎると住民からの反感を買う。

 暴力を振るわな過ぎてもダメなのだが、しかしこれはもっとだめだ。

 虐殺だ。反感を買いすぎる。


「いえ、何といいましょうか。バトル国軍の戦車部隊がここを強行突破し、レジスタンスを弾いていったと言いましょうか」


「どういうことです?」


 意味が分からない発言である。

 戦車もそうだし、そして強行突破し何処へ行くのかという話だ。


「実際それが全てでして……。幽霊のように現れて過ぎ去って行ったんです」


 大通りを見る。

 血に汚れた、汚い道だ。


 ……使える。これは使える。

 戦車部隊はこの際どうでもいい。

 しかし、この道は使える。


「カメラを持ってきてください。そして、こことあそこと、……そうですね、あそこからも撮ってください」

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