第2547話、わたくし、何とついに『魔物と魔石の関係』を完璧に解明できましたの☆(その1)
「──お父様、しっかりなさってください!」
もはや、意識がもうろうとし始めている私のすぐ傍らで、最愛の少女の必死な声が耳朶を打つ。
だが、内なる魔力をほとんど使い果たし、肉体にも致命傷を負った今となっては、もう二度と立ち上がることはできまい。
「……本当に、すまなかったな。おまえには、いくら謝っても、足りないくらいだよ」
そうなのである。
私のわがままで、この世に生まれさせて、
私のわがままで、こんな歪んだ生活をさせて、
そして今まさに、この子一人を残して、私だけ死に逝こうとするなんて。
……せめて、自分のわがままに付き合わせてきた代償として、最後まで面倒を見てやりたかったのに。
「……心配はいらないよ、『術者』である私が死のうとも、おまえが消え去ってしまうことなんか無い。それどころか、実はおまえにも『召喚術士』としての力を与えているのだから、寂しくなったら、先ほど消滅してしまった、おまえの『兄』を甦らせればいい」
──こんな『呪われた力』でも、無いよりはましであろう。
そう、すべての始まりは、私が出来損ないの『召喚術士』だったことであった。
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まだ青二才の頃、『召喚術』と言う、『レア中のレアスキル』を授かった私は、すっかり有頂天になり、もはやできないことは何も無いと、完全に自惚れていた。
……誤解している方も多いかと思うが、『召喚術』とは、どこかの『聖○』なぞお呼びでは無いほどの、真に理想的な『万能の願望機』なのである。
『なろう系』とかの一般的な認識だと、『召喚術士』は、どこか別の世界とか異次元とかから、とんでもない強大なモンスターなんかを召喚し、それを使役して、主に戦闘方面に役立てるのが、主な活躍の場だと勘違いしていることであろう。
極論すれば、召喚術士は、何も召喚していないのである。
……だったら、召喚獣は、一体どこから現れているかと言うと、
実は、召喚術士が現在いる世界において、『新たに創り出している』のであった。
──そう、召喚術とは実は、『万物創造』の力であって、
文字通り、『神の御業』以外の何物でも無かったのだ。
……なぜ『召喚術』が『万物創造』そのものになってしまうのか、疑問を覚える方も多いかと思われるので、順を追って詳しくご説明しよう。
召喚獣も、魔物や魔獣の類いであるので、その成り立ちはほとんど同じで、本質は体内にある『魔石』であり、魔物を退治すると魔石だけが残り、他の肉体は消滅してしまうと言う『お約束』までが、まったく御同様であった。
……そう言うと、まるで『ゲーム脳だけでなろう小説を書いている』ように思われるかも知れないが、実はこれこそが由緒正しい、『モンスターの在り方』なのである。
魔術師の手による人工生命体の代表格である、『ゴーレム』と『ホムンクルス』においても、前者には神聖なる呪文が書かれた『石版』が、後者にはご存じ『賢者の石』が、その体内に『生命の中核』として秘められており、これを破壊したり抜き取ったりすれば、『仮初めの命』が成り立たなくなって、瓦礫と化したり、ただの肉の塊になって消滅したりするところなぞ、『魔石と魔物の関係』そのものであろう。
このことは、『召喚術』においても、最重要事項として、当然のようにシステムに組み込まれていて、
・まず最初に、召喚術士の体内の『内なる魔法要素』である『オド』を、一定量放出し、これを『召喚(獣)』の中核とする。
・次に、『剣と魔法のファンタジーワールド』の常識として、『外なる魔法要素』である『マナ』が世界中に満ち溢れているので、中核の周囲の一定量の『マナ』を、召喚する召喚獣の『肉体』に充てることにする。
・実は新たに創った中核こそ、WiーFi環境の中の『ルーター』のようなもので、これを起点として『集合的無意識とアクセス』して、召喚したい魔物等の『形態情報』と『人格情報』を、周囲のマナへとインストールすることによって、召喚獣へと変化させるわけである。
まあ言ってみれば、そもそも魔物自体が、魔石(=オド)とマナから構成されている、『魔法生物』みたいなものであって、『召喚術』はその原理を応用して、自分の使役したい魔物等のあらゆる存在を、自分のオドを中核にして、その周囲のマナを変化させることで実現しているのだ。
──もちろんそれは、『魔物』に限定する必要は無かった。
何せ、『集合的無意識』には、ありとあらゆる世界のありとあらゆる時代のありとあらゆる存在に関する、『情報』が、すべて揃っているのである。
普通の動物や、ゴーレムやホムンクルスや、大量の岩石や水や炎等の無生物や、机や椅子や自動車や船舶等の製造物や、戦車や軍艦やミサイル等の高性能の現代兵器に至るまで、何でも『召喚と言う名の万物創造』によって、手に入れることができた。
──そう、何でも召喚できると言うことは、
『既に死んだ人間』すらも、甦らせることができるのだ。
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……私には、幼馴染みにして、最愛の恋人がいた。
小さな村の中のことでもあり、生まれて物心がついてすぐ、まるで同い年の兄妹のようにして、二人一緒に育っていった。
このまま辺境の山の中で、農業でもやって、ずっと二人で暮らしていくものと信じていた。
──だが、そんな二人に転機が訪れたのは、この国の者なら皆10才になるとともに受けなければならない、教会主催の『魔力測定試験』において、私がレア中のレアスキルである、『召喚術士』であることが判明した時であった。
これは単なる、俗に言う『魔物のテイマー能力』なんかでは、無かった。
ちゃんと使いこなせるようになれば、『万物創造』そのものともなれるのだ。
そんな奇跡の技を秘めていた私のことを、教会はもちろん、王国自体が放って置くわけが無かった。
すぐさま王都にある、世界宗教『聖レーン転生教団』直営の、魔導師養成学校へと入学させられることになった。
将来の貴重な働き手を奪われることになった村に対しては、召喚術士を生み出した功績も有り、多額の保証金が授与された。
両親に至っては、将来の筆頭王宮魔導士の肉親としてふさわしいように、『魔導貴族』に列せられて、王都に立派な屋敷を与えられることになった。
そんな中、幼馴染みの女の子──その名も『ティファ』と、絶対に別れたくないと駄々をこねる、いまだ幼かった私に対しては、「将来の婚約者として王都に随伴することを許す」と言う勅命をいただき、何の問題も無くなってしまった。
それだけ『召喚術士』とは、国の命運を一変してしまうほど、とんでもない存在であったのだ。
召喚術を極めれば、ドラゴンや大悪魔を意のままにできるのはもちろん、異世界から最新鋭の極超音速ミサイルや核爆弾を、召喚(=創造)することだってできるのだから。
どうして異世界人である私が、『ゲンダイニッポン』の知識を有しているかと言うと、あらゆる情報が文字通り集合している『集合的無意識』とアクセスすることのできる召喚術士なら、他の世界や他の時代の情報すらも、自由自在に手に入れることが可能だったのだ。
──そんなこんなで入学した学園は、基本的に王侯貴族の子女のための専門校であり、田舎者の平民である私には、まったくの場違いであった。
だがしかし、入学して最初の授業で、この世界には存在しないはずの植物や昆虫を召喚(=創造)してしまったために、教室どころか学園中が大騒ぎとなり、王国の魔術学界においては『世紀の大偉業』に認定されて、私は一躍『時の人』に祭り上げられて、王侯貴族の同級生たちから差別等をされるどころか、王族と同レベルの待遇を受けることになったのだ。
……とはいえ、ポテンシャルは世界最高かも知れないけど、魔術に関しては現在のところ『素人』に過ぎず、先生や級友の教えを乞わなければならないのも、また事実であった。
その結果、『将来有望な者』の所には、(いろいろな意味で)『将来有望な者』が、自然と集まってくるようで、私同様に魔導士として将来を嘱望されている者を始めとして、特に研究熱心な者や、将来この王国自体を支えることになっている、王族や上級貴族の子女たちが集まり、切磋琢磨してお互いの才能を伸ばしていくようになった。
凄く、充実した日々だった。
自分同様、優れた者と一緒に学ぶのが、楽しくて仕方なかった。
その当時の私は、魔術の研鑽に、すっかりのめり込んでしまっていたのだ。
──最愛の幼馴染みであるはずの、ティファのことを、忘れてしまうほどに。
(※次回に続きます)




