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第2534話、わたくし、『最強の魔王』を退治するために、『最凶の魔王』を召喚しますの☆

「……くくくくく、人間の召喚術士よ、良くこの魔王城の最深部の我が玉座までたどり着いた。その人並みならぬ功績をたたえて、魔王である我自ら相手をしてやろう」




 そう言って、ゆっくりと立ち上がり、大剣を抜き去る、天を衝くような大男。




 ──くそっ、どうする?


 これまで散々魔力を使ってきたから、後一、二回しか召喚術を使えないぞ。


 ええい、悩んでいる暇は無い!


 ここは、一か八かだ!







「──召喚サモン! 目の前の魔王に、()()()()()やつ!」







 魔王城の謁見の間に響き渡る、俺の渾身の怒号!







 ……。


 …………。


 ……………………。


 …………………………………………。


 ……………………………………………………………………………………。


 あれえ?


「魔王様並びに四天王の皆様、いきなり静まり返ったりして、どうなされたのでしょうか?」







「「「「「──あきれ果てているんだよ⁉」」」」」







 ──ひいッ⁉







「言うに事欠いて、何だ⁉」


「『目の前の魔王に絶対に勝つやつ』、だとお⁉」


「言いたいことはわからないでも無いけど、それは無いだろ!」


「おまえ小学生か⁉ もうちょっとひねろよ!」


「……あ〜あ、魔王軍と人類側の最終決戦が、台無しだよお〜」




 文字通り、『非難囂々』であった。




 特に最後の心底落胆したようなお言葉は、魔王様御自身のものであった。




 ……すみません。


 ……本当に、すみません。


 ……俺もう、召喚術士失格ですわ。





 そのように、この場の雰囲気が『冷えっ冷え』になってしまったのを尻目に、召喚術のほうはちゃんと発動していて、俺たちの頭上に顕現した大きな魔法陣から、一人の小柄な人物が現出してきた。




 黒髪に黒い瞳と言う、この世界における『魔族』の特色を有しつつ、その身に秘めている魔力量は、ここにいる誰にも負けないほどの膨大なものであった。




「「「「──ああっ、あなた様は⁉」」」」




「……………………父上?」




 なぜかその全身漆黒の『少年』の姿を一目見て、驚愕の表情となる、四天王と魔王様。




「はあ? 何が父上だ、このオッサンが! 俺は結婚もしたことねえよ!」




 ……うん、人間で言えば十四、五歳に見えるから、それはそうなんだろうけど、いつの間にか四天王のやつらが、血相を変えて一目散に瞬間移動して逃げ出しやがったぞ?


 俺は一体、『何』を召喚してしまったんだ?


「──おい、召喚術士、とにかく俺は、そこの大男を倒せばいいんだな?」


「えっ、あっ、はいっ!」


 そ、そうだ、何をビビる必要が有ろう。


 たとえ何者であろうと、召喚術士の命令は絶対なのだ。


 なんか知らんが、四天王が逃げ出すくらいなんだから、魔王もやっつけてくれるだろう!


 ──だがしかし、


 魔王が茫然自失となっていたのは、ほんのわずかな間だけであった。




「……くくくくく」




 お、おや?




「──くくく、くはは、くははははははははははは!!!」




 ど、どうした、魔王様、いきなり大笑いなんかして⁉




「召喚術士よ」


「えっ、はいッ!」


「礼を言うぞ」


「は?」




「いくら望んでも叶わなかった、我が真に『最強』と思っている相手と、こうして戦う機会を与えてくれて!」




「えっ、それって、まさか──」




「そうか、『目の前の魔王に絶対に勝つやつ』か、確かにな! 我が父にして、先代の魔王! しかも、全盛期の姿で! ああ、相手にとって、不足は無いわ!」




 ──や、やはり、そうだったのか⁉


 ……考えてみれば、当然かも。


『魔王に敵うのは同じ魔王のみ』ってことで、先ほどの俺のリクエストによって召喚されたのが、魔王であり、しかも今の魔王の父親であったとしても、別におかしくも何とも無いよな⁉


 いやでもこれって、むちゃくちゃ『好カード』じゃん⁉


 これからどんな『熱戦』が繰り広げられるのか、めっちゃ楽しみなんですけど⁉







「……ごちゃごちゃ、うるせえ」








「──うごおぅッ⁉」







 黒ずくめの少年の軽い一蹴りで、最奥の壁際まで吹っ飛び派手に激突して、玉座の間の約三分の一を瓦礫の山に変えてしまう魔王様。


「てめえと俺とでは、そもそも『格』と言うものが全然違うだろうが? そんなことも見抜けないで、生意気言っているんじゃ無いぞ、このカスが!」


 ……ええー。


 何で、魔王様が、まったく相手にならないの?


 ………………俺ってホント、『何てもの』を召喚してしまったんだ?




「ちょっとこれって、どういうことなんですか?(ヒソヒソ)」




「──って、うわっ、な、何だよ、あんたら⁉」




 気がつけば、さっき消え去ったはずの四天王たちが、俺のすぐ側に現れていたのであった。


「お、おまえら、いつの間に⁉」


「いいから、私たちの質問に答えなさい!」


「あれは間違いなく、先代の魔王様じゃないですか⁉」


「確かにかなり若返っておられますが、私たちがあの方を見誤ることは有り得ません」


「何ですでに亡くなっている先代様を召喚できて、しかもここが自分の居城であり、今の魔王様が自分の関係者だとわかりそうなのに、まったく頓着せずに戦っておられるのです⁉」


 ……あー、確かにそれは、疑問に思うよな?




「召喚術って、対象の種族とか属している世界とかにかかわらず、どのようなものでも召喚できるのはもちろん、『時間』すら超越していて、すでに亡くなっている者だろうと、その全盛期の年齢で、召喚することができるんだ」




「「「「ほう」」」」




「あの『先代魔王』とやらに生前の記憶が無いのは、ざっくり言うと、今回の召喚の目的においては、『必要ないから』なんだ。むしろ俺の御先祖様のかたきとかを召喚したら、話が複雑になるので、余計な記憶や知識を抜きにして召喚できるようになっているんだよ」




「「「「ほうほう」」」」




「……とは言っても、いくら何でも、実の父親に、それとは認識させないままに、自分の息子を殺させるのは、たとえ『退治すべき魔王』とはいえ、目覚めが悪過ぎるので、はっきり言ってそろそろ止めて差し上げたいんですけど」




 それと言うのも、とっくに勝負がついていると言うのに、先代魔王様ってば情け容赦なく、既に戦意を喪失している現魔王様を、殴る蹴るのやりたい放題であったのだ。


 ……これじゃあ、単にチンピラが、ちょっと肩がぶつかっただけのサラリーマンを、一方的にいたぶっているようなものだよッ!


「──わ、私たちからも、お願いします!」


「もう、我々の負けでいいです!」


「二度と人間の領域に、攻め込んだりいたしません!」


「いっそのこと休戦協定を結んで、正式に国交を開かせていただきたいと存じます!」


 さすがに自分たちのあるじがこれ以上痛めつけられるのを見るのが忍びなかったのか、『無条件降伏』を申し出る四天王たち。




「……仕方ない。──召喚サモン! 『現在の親子喧嘩を絶対に止めることのできる者』!」




「「「「──まあた、それかよ⁉」」」」




 一斉に四天王さんたちの突っ込みが入ったけど、仕方ないじゃん。魔王同士の親子喧嘩を止めるにふさわしい人物なんて、俺にも想像つかないよ。


 まあ一応、今度は当然記憶を奪うわけにはいかず、新旧魔王の情報を最大限に知っている者限定に召喚したけどね。


 そして再び展開された頭上の魔法陣から現出する、小柄で華奢な人影。




「「「「え」」」」




『それ』を一目見て、先ほどよりも更に顔面蒼白となる、四天王の皆様。




 えっ、えっ、俺って今度は、一体どんな『バケモノ』を召喚してしまったの⁉


 そのように改めてまじまじと見つめれば、それはあまりにも意外な人物であった。




 十歳ほどの矮躯を覆い尽くしている、月の雫のごとき銀白色の長い髪の毛に、人形のごとき端整なる小顔の中で煌めいている、深い水底のような青の瞳。




 そしてその少女がまとっていたのは、この世界における最大の宗教組織である『聖レーン転生教団』の、高位の聖衣であった。


 魔王親子以外の全員が注目している中で、少女の真珠のごとき唇から放たれる、第一声とは──







「──こらあああああ、()()()あああああ! マオちゃんをいじめちゃ、駄目でしょうが⁉」







 その途端、彼女が手にしていた錫杖から、巨大な光弾がほとばしり、先代魔王少年の身体を弾き飛ばしたのであった。


 先ほどとは反対側の壁面へと衝突し、玉座の間の更に三分の一を瓦礫に変える先代魔王様。


「て、てめえ、誰が『あなた』だ、『マオちゃん』だ、一体何者だ⁉」(先代魔王)


「……ちょっと、自分の妻の顔まで、忘れたって言うの?」(謎の宗教少女)


「妻あ⁉」(先代魔王)


「……母上?」(当代魔王)


「この超絶ロリ美少女が⁉」(俺)


「「「「はい、そうです」」」」(四天王)




「──何で『聖なる力』で魔王である俺を吹っ飛ばしたおまえが、俺の妻なんだよ⁉」




「それは私が『聖女』で、あんたの『幼馴染み』だからよ」


「あ、幼馴染みだけど、『豊橋すべりだい送り』にならなかったんだ」


「は、母上、『聖女』の力はほどほどにしてくださいね? 下手すると、父上も僕も退治されてしまうから」


「あら、うふふふふ、そうだったわね」


「──どうして俺は、そんな危ないやつと結婚したわけえ⁉」


「……それは私が、あなたの『幼馴染み』で、『ストーカー』で、『ヤンデレ』だったからよ」


「──本当に、『危ないやつ』だった⁉」


「……何でこんな人が、『聖女』になれたんだろ?」


「母上が本性を現すのは、幼馴染みの父上の前だけだからだよ」


「──『学園ラブコメ』かよ⁉」




 まあ、そんなこんなで、現魔王様もこれ以上戦う気力を無くしてしまわれたようだし、人類側との休戦条約を快く結んでいただけたのであった。










 ……それから後の話であるが、先代魔王様と聖女様のほうは、問題が解決したと言うのに、そのままこの世界に居続けて、魔王城内で隠居夫婦として、暮らし続けていると言う。




 記憶のまったく無い先代魔王様ってば、自分自身少年なのに、いきなりロリ聖女様から『夫婦認定』されたりして、大丈夫なのだろうか?




 ……まあ、自分を退治する力を持っていて、しかもヤンデレストーカーとなると、逃げ出すことなんて不可能だから、観念するしか無いか。




 ちなみに俺は、今回の功績を認められて、人類側と魔族側の友好を司る『親善大使』に任命されましたとさ。めでたしめでたし♡







「「「「「「──いや、全然めでたくないよ!!!」」」」」」(新旧魔王様&四天王の皆さん)

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