第2525話、わたくし、超小型核融合炉を動力とする非武装偵察ドローンを開発すれば、合法的に『核抑止力』が手に入ると思いますの★
「──機長、『シン・ニッポン国防省』より、再度『指定実験区域』からの、即時退去の勧告が入電しました!」
大海原の上空を巡航飛行し続けている、『中つ国珍民解放軍西太平洋軍』所属の、観測機のコクピットにて、通信兵の報告に対して大声で怒鳴り返す、パワハラ上級共産党員機長殿。
「ふざけるな! こっちがいるのは一応公海だ! 小日本ごときの指示など聞く必要は無いわ! それよりも、こんなシン・ニッポンの領海スレスレの最南端の大海原のど真ん中で、コソコソと一体何の『秘密実験』をするつもりなんだ?」
「……いや、こうして事前に警告しているんだから、秘密でも無いし、コソコソもしていないと思いますけど?」
「──だったら、あえて我々に、『何か』を見せつけようと言う腹なのか⁉」
「それか、よほど『危険が伴う』実験とか?」
「こんな絶海でわざわざ行わなければならない、『危険な実験』だと?……………………………………ッ、ま、まさか⁉」
「──機長! 『三次元量子レーダー』にて、飛行物体を補足! 高速にて、シン・ニッポン軍が指定した『実験海域』へと、急速接近中!」
「『飛行物体』だと? 戦闘機や哨戒機等の、有人軍用機か⁉ それともICBMや巡航ミサイルか⁉」
「……画像解析完了! どうやら大型のドローンのようです!」
「ドローンをただ飛ばすだけだと⁉ やはりそうか! 総員第一種警戒態勢! すぐさまこの海域から離脱せよ!」
「──えっ、あっ、はいッ! アフターバーナー点火! 急速離脱します!」
まるでそれまでの余裕綽々の態度が嘘だったかのような、機長殿の焦りまくった命令一下、シン・ニッポン軍の指定海域から離れようとする、珍民解放軍機。
──しかし、少々手遅れだったようである。
謎のドローンが、指定海域に差しかかるや否や、今度は海中から無人潜行ドローンが急速浮上して、多数の艦対空ミサイルを発射したのだ。
そのほとんどが、空中のドローンに命中した、その瞬間。
「「「なッ⁉」」」
盛大なる『核爆発』を起こして、辺り一面を閃光に包み込んだのであった。
──そうこれぞ、史上初の日本人による、『核実験』であったのだ。
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「──シン・ニッポン政府代表、これは一体どう言うことなんだ⁉」
数日後、国連の核軍縮委員会において、中つ国人民共和国代表の怒号が響き渡っていた。
「……はて、『どう言うこと』と言われましても。我々はちゃんと事前に予告していた『実験』を、粛々と行っただけですけど?」
それに対して、銀縁眼鏡に痩せぎすの、いかにも『特務の青二才』と言った感じの、シン・ニッポン政府代表のほうは、微塵も動じること無く、平然と言い返した。
「──ふざけるな! 『実験』は『実験』でも、あれは紛う方なく、明確なる『核兵器実験』だろうが⁉」
「え、違いますよ?」
「──はあああああああああ⁉ この期に及んで、しらを切る気か⁉ 我が珍民解放軍の観測機が当日取得したデータによると、爆発の破壊力及び範囲、それから何よりも放射線汚染濃度──等々のすべてが、広島型原爆の何百倍もの威力の核兵器が使用されたことを、裏付けているんだぞ⁉」
「まあ確かに、あれは『核実験』と呼べるかも知れませんが、残念ながら、核『兵器』実験では無いのですよ」
「へ?」
「いやそれにしても、放射線量まで正確に測定なさるなんて、さすが珍民解放軍ご自慢の観測機ですなあ。──あれが貴国の首都である、『北の京』の出来事であったなら、さぞかし『大惨事』だったでしょう」
「──き、貴様⁉ 我々人民共和国を脅すつもりか⁉ やはりそのための、核武装かだったのか⁉」
「ですから、『武装』では無いんですってば。──いやそもそも、むしろあなたたちが何もしなければ、今回私どもが製造したドローンは、北の京に限らず、地球上のどこであっても、核爆発を起こすことは有り得ないのですから」
「……こちらが何もしなければ、核爆発を起こさないだと? 確かにあのドローンには、武装の類いは見受けられなかったが、いわゆる『自爆ドローン』みたいな使い方をするんじゃ無いのか?」
「あれって、自爆ドローンみたいな挙動をしましたか? 海上の浮遊物を目掛けて、急降下で突っ込んでいくとか」
「い、いや、報告によると、むしろ海中から浮上した潜航艇型ドローンから発射された、多数のミサイルが命中したことこそが、核爆発のトリガーとなったと聞いておる」
「それが、あなた方が将来行われるかも知れない、『余計なこと』なのですよ」
「何?」
「何せあのドローン自体には、『自爆用の爆弾』も含めて、いかなる武装も施されておりませんから、攻撃はもちろん、迎撃すらもできず、実験時のように爆発するとしたら、他から攻撃を受けた時だけに限定されるのです」
「──攻撃どころか、迎撃すらもしない、軍用ドローンだと? 一体何だと言うんだ、あれは?」
「最新鋭の、『偵察型ドローン』ですよ」
「偵察型⁉──いや、確かに偵察用なら、非武装で、攻撃も迎撃もしないのはわかるけど、何で核爆発を起こしたりするんだ⁉」
「それはあくまでも、武装としてでは無く、『動力』として、超高性能小型『原子炉』を積んでいるからですよ」
「へ?………………………………って、はあああああああああああ⁉ げ、原子炉だとおおおおおおおおおお!!!」
「何を驚いているのです、別に珍しくは無いでしょう?」
「驚くよ! 原子炉を動力にする航空機なんて、聞いたこと無いよ⁉」
「……ああ、冷戦時代の中つ国って、別に『主要国家』では無く、後進国もいいところの三流国家でしたからね。──実は、アメリカでは『NBー36H』と言う機種が、旧ソビエトでは『Tuー119』と言う機種が、実験レベルとはいえ原子炉を動力として、開発が進められたことが有るのですよ」
「航空機──しかもよりによって軍用機に、原子炉を積むなんて実験が、公式に行われていただと⁉ 航空機のエンジンを原子炉にすることに、一体何のメリットが⁉ むしろ敵味方を問わず危険性が跳ね上がるばかりで、デメリットしか無いのでは⁉」
「おっしゃる通りでして、結局は『実験のための実験』レベルでしか無く、両国とも開発は早々に打ち切られたようです。何せ何らかの事故を起こした場合、その現場が自国か敵国かを問わず、甚大な被害を及ぼし得るし、そもそも普通に原子炉を稼働させるだけで、乗組員に『被爆』させる可能性すら有り得て、実は数回の試験飛行はすべて、乗組員への健康被害の検証を目的に行われたとも言われているのです」
「そんな、存在するだけで自国にも様々な被害を及ぼし得る、文字通りに『疫病神』みたいなものを、なぜ今更シン・ニッポンが開発に着手したのかね⁉」
「そりゃあもちろん、現在我が国が置かれている状況からすると、あらゆる意味で好都合だからですよ」
「……何だと?」
「まず、無人のドローンですから、放射能汚染等の搭乗員への被害は有り得ません」
「──うッ⁉」
「偵察用ドローンなので、攻撃も迎撃も不可能で、いくら大量生産して保持していても、憲法違反になりません」
「──ううッ⁉」
「更には『原子炉』はあくまでも、動力として使用しているので、これ自体は『核兵器』とは言えず、『非核三原則』にも違反しておりません」
「──うううッ⁉」
「もちろん、実際に『偵察機』として運用する際において、平時に他国の領空を侵犯すれば大問題になりますが、既に他国からの侵略を受けているか、受ける畏れが大きい場合なら、『敵基地攻撃』等を実行するためにも、まさにその『敵基地』を把握するのを目的として、敵領内での偵察行動をするのは当然の権利かと思われます」
「──ううううッ⁉」
「その場合当然、原子炉のアクシデント等によって、原発事故や核兵器並みの放射能汚染が生じる怖れも有りますが、敵国が非武装の偵察ドローンを撃墜しようとしなければいいだけの話で、こちらとしては敵国を核汚染しようなんて気はまったくございませんので、『非核三原則』にも国際的な『核軍縮協定』にも、一切違反していないと自負しております」
「──詭弁だ! そんな危険な兵器を保有していること自体が、他国を『核攻撃』する気満々と言うことでは無いか⁉ それこそ戦況のいかんによっては、『自爆ドローン』として使用すれば、実質上の『核ミサイル』としての運用が可能だしな!」
「いえいえ、そんなことはけして起こり得ないと、約束できますよ?」
「どうして⁉」
「だって私たちは、このドローンを、『使う気』はまったく有りませんから」
「そりゃあ、『核兵器』として使う気が無いとか、口先ではいくらでも言えるけど、実際に偵察機として使っていれば、何らかの理由で相手国の領内で、核兵器同様に、甚大なる放射能汚染を起こし得る恐れが有るだろうが⁉」
「有り得ませんよ。だって我々は、『偵察機』としても、使うつもりは無いんですから」
「………………………………………………………………は?」
「我々はあくまでも、この新型ドローンを大量生産して、実験や訓練以外で空を飛ばすことも無く、ただ密かに保有し続けるだけなのです」
「──じゃあ、一体何のために、原子炉を動力にするなんて、危なっかしいドローンを造ったりしたんだ⁉」
「それはもちろん、我が国おける、『核抑止力』の実現のためですよ」
「──‼」
「全世界唯一の被爆国である我が国は、『核兵器』の開発や保有は、国民感情的にも、絶対と言っていいほど不可能でしょう。──それなら、『兵器』で無ければ、問題無いのでは? 事実かつては、『むつ』と言う原子力実験船が建造されたことが有りますからね。つまりあくまでも『武器』としてでは無く、『動力』として、原子力を利用する分には、問題は無くなり、後は偵察機として開発する場合、仮想敵国への領空侵犯問題や、『何だかんだ言ったところで、核兵器としての利用も可能ではないのか?』と言う批判に対しては、『大量生産はするものの、使う気は微塵も無い』と言う一言で切って捨てることができます。──だって、この新型ドローンはあくまでも、『核抑止力』として使用するつもりなんだから、実際に飛ばす必要すら無いのですよ。むしろあなたたちがこのドローンを、危険視してくださるほうが思うつぼであって、こちらとしては徹頭徹尾『平和利用』するつもりですけど、そちらがどうしても信じられないと言うのなら、『核抑止力』として大いに役立っているってことですからね★」




