第2485話、わたくし、『黒猫と魔女○教室』のス○カの『再生』能力は、『不死の軍団』を生み出すのに最適ですの⁉
ここは、とある王国と、その隣国の強大なる軍事帝国との境界にある、大平原。
──今まさしく、両国の主力の軍勢でもって、一大決戦が行われていた。
人数や装備は圧倒的に帝国側に分が有ったが、寡兵である王国側も、一人一人の兵士たちが、あたかも自らの命をも顧みない勇猛果敢さで必死に食い下がり、両軍とも膨大な犠牲者を出しつつも、戦いは長時間に及んでいた。
だが結局は『多勢に無勢』で、王国側の兵士たちがどんどんとすり潰されていき、もはや組織的な戦闘行為ができない数まで減らされて、ついに帝国側の勝利が確定したものと思われた、
──まさに、その刹那であった。
「『再生』!」
唐突に、戦場に響き渡る、いまだ年若い少女の声。
「──な、何だ、これは⁉」
「そんな、馬鹿な⁉」
「一体、何なんだよ⁉」
その途端、あちらこちらで、帝国兵の驚嘆の声が上がった。
それも、そのはずである。
──何と、既に事切れていた死体や、四肢が欠損した重傷者すら含めて、倒したはずの王国の兵士たちが、皆みるみるうちに五体満足の身体となり、気力十分に再び立ち上がったのだから。
……否、それだけでは無かった。
驚いたことに、同じく事切れたり、重症を負って倒れ伏していた、帝国側の兵士までもが、狐につままれたかのような面持ちで、むくりと立ち上がっていったのだ。
「……あれ?」
「何で俺、ピンピンしているんだ?」
「右腕を斬り落とされたはずなのに、くっついているし」
「俺なんか、確かに致命傷だったはずなんだが……」
「それどころか、疲れすらも吹っ飛んで、やる気十分なんだけど?」
ますますわけがわからなくなる、帝国兵たち。
──なぜなら、
気がつけば、一応戦闘継続に問題の無かった、主立った者たちさえも、
けして少なく無かった手傷が、完全に癒えており、
更には、長時間激闘を続けてきたと言うのに、気力体力共、いつの間にかすっかり回復していたのだから。
「……ホント、どういうことなんだ、一体?」
「敵の攻撃魔法か、何かか?」
「王国の攻撃なら、何で俺たちのほうまで甦らせるんだよ?」
「……それなら、誰かの仕業とかでは無く、ここにいる敵味方の兵士が全員、実際に戦闘が始まる前に、時間遡行してしまったとか?」
「──剣と魔法のファンタジーに、SFをぶっ込むのは、ヤメロ!」
もはや何が何だかわからずに、戸惑うばかりの帝国兵たち。
しかしそれに対して王国兵のほうの様子は、まったく違っていたのであった。
「……くくくくく、やっと『第2ラウンド』の始まりってわけか?」
「むしろ、これからが本番だぜえ」
「さあ、今回も、死ぬまで戦うぞ!」
「おいおい、おまえさっき、死んでたじゃ無いか?」
「そういえば、そうだった」
「「「──ガハハハハハハハハハ!!!」」」
「……何せ、俺たち王国兵は、『聖女様』から、鍛えられているからな」
「そうだ、『再生の聖女』ス○カ様!」
「何回死んでしまおうとも、何度でも甦らせてくださる、俺たち兵士にとっては、まさしく『絶対不敗』を約束してくれる、勝利の『守護神』!」
「そのお陰で、普通の軍事訓練の際に、本気で殺し合うことができるから、兵隊の練度が無限に向上できるんだよな!」
「そもそも『死を恐れずに戦える』兵士なんて、無敵じゃん!」
「むしろ、無限に戦って、無限に殺して、無限に殺されて、無限に生き返って、無限に戦い続けること自体が、もうすっかり習慣になっていて、楽しくて楽しくて仕方ないんだよなあ」
「おまえ完全に終わっているよ、この戦闘ジャンキーが!」
「それは、おまえもだろ?」
「そうだ、俺たち『ス○カ様の兵士』たちは、みんなバーサーカーでゾンビの戦狂いばかりなんだ!」
「「「──違いねえ、わはははははははははははは!!!」」」
全員瞳孔が開きっぱなしの瞳をして、狂ったかのような哄笑を上げる、王国兵たち。
その常軌を逸した姿と、聞き捨てならぬ台詞を聞いて、心の底から震え上がる、帝国兵たち。
「……『聖女ス○カ』だと?」
「あの常に、不気味な黒猫を連れている、『災厄の魔女』のことか⁉」
「──ああ、そうか! そう言うことか⁉」
「……な、何だ? 何が『そういうこと』なんだ?」
「人呼んで、『黒猫の教室の魔女』! かつては『邪教徒』から目を付けられながらも、逆に返り討ちにした、この世にただ一人の、『再生魔法』の使い手だよ!」
「──あの死者すらも甦らせると言う、『再生の魔女』か⁉」
「……つまり、この異常な状況はすべて、あの魔女──ス○カの仕業だと言うのか?」
「何で王国の宮廷魔術師であるはずの彼女が、こんなことを?」
そのような当然と言えば当然の疑問を抱きつつ、先ほど声が聞こえたほうへと一斉に振り向けば、戦場が見渡せる小高い丘の上に、一人の黒ずくめの少女がたたずんでいた。
胸元に、やけに悟りきった表情をした、一匹の黒猫を抱きかかえながら。
「──おやおや、皆さん、どうしたのですか? せっかく皆さんのご要望通りに、生き返らせて差し上げたのに」
その鈴を転がすような声音は、たった今神をも恐れぬ大魔術を実行した魔女のものとは思えないほど、あどけなかった。
「……俺たちの、『要望通り』だと?」
「ええ、あなたたち帝国の『薄汚い侵略者』は、戦うことが好きなんでしょ? 殺し合うことが好きなんでしょ? 奪うことが好きなんでしょ? 破壊することが好きなんでしょ? ──だったら、せっかくこうして戦争をしているのに、たかが一度殺されたくらいでおしまいになったんじゃ、もったいないじゃないですか? だから『再生の魔女』である私が力を貸して、何度死んでも甦って、何度でも殺し合えるようにして、差し上げたのですよ♡」
「「「──なッ⁉」」」
あんまりと言えばあんまりだが、魔女らしいと言えば納得できる、可憐で無邪気な少女の言葉に、一斉に呆気にとられる帝国兵たち。
「──ふ、ふざけるなッ⁉」
「いくら兵士といえども、永遠に戦わされたりして堪るか!」
「そりゃあ、勝利は軍人にとって、何よりも勲章だが、戦い続けていれば、いつかは負けて、死を迎えることだって有るんだ!」
「──そう、むしろ『死』こそが、戦い続けることを運命づけられた、俺たち兵士にとっての、『救済』とも言えるんだ!」
「「「それなのに、その唯一の『救済』を奪われて、永遠に戦い続けさせられるなんて、まるで『地獄』そのものじゃ無いか⁉」」」
そんな至極もっともなる訴えの声に対しても、年若き魔女は、微塵も動じることは無かった。
「……人の国に侵略してきて、罪も無き庶民を大勢殺し、その財産を略奪しておきながら、『救済』を求めるなどとは、おこがましいにも程が有る。貴様ら帝国兵には、『死』なぞ生ぬるい、永遠の『地獄』で苦しみ続けるがいい!」
「「「──ッ」」」
「それに、うちの兵隊たちは、やる気満々のようですよ? 何せ常日頃の訓練において、実戦さながらに殺し合いをさせて、そのたび何度も私が生き返らせてあげて、今では『無限に殺し合う』ことが当たり前となっており、これからあなたたちといつまでも戦い続けるのが、楽しみで楽しみで仕方が無いようですからね。──大丈夫、あなたたちもすぐに、うちの兵隊たちみたいに、無限に殺し合うのが楽しくなって、もう二度とやめられなくなりますよ! さあ、時間は無限にございます、今すぐ『第2ラウンド』を始めましょう! 何なら、本国から増援を呼んでも構いませんよ? 確かにうちは寡兵ですが、いくら殺されても甦ることができるので、数の差は何も問題になりません。双方共心置きなく、国力が尽き果てるまで、戦い続けましょう☆」




