第2481話、わたくし、『リゼ○』が『死者の書』なら、『杖と剣のウィスト○ア』は『生者の書』ですの☆
その日、私ことリア○ナ=オーウェンザウスは、同じ『雷の派閥』所属の同期で、今最も気になっている男の子である、ウ○ル=セルフォルトに対して、意を決して語りかけた。
「──ウ○ル、頼みが有るのだが」
「何だい、リア○ナ、改まって?」
「君の『想塡』と言うスキルは、失われたはずの『過去の記憶』を、『本』の形で閲覧することができるそうだが、それは別に君自身に限らず、他人の記憶すらも、見ようと思えば見ることができるのだろうか?」
「ああ、うん、このスキルの目的はあくまでも、『過去に経験した魔法』の記憶を甦らせて、現在の僕が剣に装塡して使うためのものだからね。ただ単に『表層的な記憶を思い出す』だけでは無く、その魔法がどんなものなのか──これまでどんな歴史をたどってきたのか、そこにどんな人々が関わってきたのか──等々、その魔法に関することについては、すべて知る必要が有るから、実はこのスキルは、『森羅万象すべての情報』──人間に限定しても、過去現在未来を問わない、すべての人類の記憶を見ることができるんだよ」
「……確かにそこまでしないと、他人の魔法なんて完璧に使いこなせないとはいえ、改めて聞くと、むちゃくちゃチートなスキルだな? もはや完全に神様レベルの『全知全能』じゃないか?」
「そうかも知れないけど、『全知全能』かどうかなんて、僕には興味無いよ。僕はあくまでも、自分の剣に様々な魔法を装塡できればいいんであって、そのための副次的な情報なんて、魔法を使い終われば用無しなので、記憶に留めるつもりも無いしね」
……相変わらず、『欲』と言うものを知らない男だ。
『情報』こそ最も有効的な『武器』であり、もしその気になれば、経済や政治の世界で覇権をとれるかも知れないのにな。
──まあ、そこがウ○ルのいいところだけどな♡
「それで、僕に頼みたいことって、何だい?」
「ああ、うん、そのスキルを使って、私の過去の記憶を見てもらいたいんだ」
「『過去の記憶』を? 何でまた」
「幼い頃、ある『出会い』をしたのだが、相手の素性がまったくわからないので、調べてもらいたいんだよ」
「『素性がわからない』、って?」
「その男の子は、カボチャの仮面を被っていたんだ」
「はあ⁉」
「何か、子供たちが普通に『仮装』している、お祭りの日だったんだよ」
「ああ、異世界の『ゲンダイニッポン』で言えば、『ハロウィン』みたいなものか?」
「……普通に魔女が空を飛んでいるこの世界で、『ハロウィン』も無いとは思うけどなw」
「うん、わかった、引き受けるよ」
「えっ、たったこれだけの情報で、大丈夫なのか?」
「『カボチャの仮面を被った男の子との出会い』なんてイベントは、これまでのリア○ナの人生で一度っきりのはずだから、特定は簡単と思われるし、その記憶から今度は、その男の子自身の『記憶の本』を開けば、彼の素性も丸わかりさ♫」
「……やっぱり、むちゃくちゃ凄いスキルじゃ無いのか、それって?」
「とにかくリア○ナのお役に立てそうなのはいいけれど、何でそんな昔に一度だけ会った、正体不明の男の子のことが知りたいんだい?」
「……生まれて初めて褒めてもらえたんだよ、この私の青い瞳のことを」
そうなのである。
我がオーウェンザウス家は、誇り高き『人類の盾』である『魔法剣士』の家柄にして、『雷の派閥』の分派として、一族の者は皆、その瞳の色が『雷色』をしているのが特徴であったのだが、
なぜか私だけが、『雷属性』の魔力の証しの『雷色』では無く、『青色』の瞳で生まれついてしまったのだ。
……そうなると残酷なもので、私は問答無用に『出来損ない』認定されてしまい、どんなに努力して魔術や剣術の腕を高めようが、まったく認めてもらえなかったのである。
一族の中でほぼ完全に孤立し、両親からも見放されてもなお、私が挫けずに精進を続けられたのは、唯一の味方である祖母の励ましと、
──あの夜、偶然出会った、ある少年の『一言』であった。
「君の青い瞳は、とても綺麗だね!」
それは大きなお祭りの、真っ最中であった。
お互い連れからはぐれてしまったのか、大きなカボチャの仮面を被った正体不明の男の子と、偶然仲良くなった私は、ひとしきり二人で遊びほうけた後、その少年の一言に、かつて無いほどの衝撃を受けた。
それも、当然であろう。
彼自身にとっては、何気ない一言だったかも知れないが、
こんなにも、何の含みも無く直截的に、自分の瞳を褒められたのは、生まれて初めてだったのだから。
あまりに予想外の不意討ちに、不覚にも大泣きしてしまった私に対して、そのカボチャ頭の男の子は右往左往するばかりであったが、それでも私が泣き止むまで、ずっと一緒にいてくれるほど、彼の純粋さと優しさは、本物だったのだ。
それから後は、もはや私は、自分の瞳にコンプレックスを抱くことは無かった。
他人のいわれ無き中傷なぞ無視して、一心不乱に鍛錬に打ち込んでいった。
すべてはあの時の、『名も無きパンプキンヘッドの少年』の、たった一言のお陰である。
だから今、無性に彼に会いたかった。
──現在の成長した私を見せて、すべてはあなたのお陰だと、お礼を言いたかったのだ。
「それじゃあ、行くよリア○ナ。──集合的無意識とアクセス! 『過去の記憶の本』よ、開け!」
ウ○ルが呪文らしきものを唱えるや、私たちの目の前に一冊の本が現れて、その中頃のページがめくられるや、遠い記憶が甦った。
──泣きじゃくる小さな女の子に、それを慰めようとオロオロしている、大きなカボチャの仮面を被った男の子。
祭りの風景から何まで、まったく私の記憶そのままであった。
懐かしさのあまり、現在の私までが、つい涙をこぼしそうになっていると、
「……あれ?」
なぜか、いかにも驚いたかのように、つぶやき声をこぼすウ○ル。
「この男の子って、僕じゃ無いかな?」
………………………………………………………………え。
「そうだ、そうだよ! このパンプキンヘッド、思い出したよ! 確か大きなお祭りが有るってことで、お義父さんやエル○ィたちと出かけたんだけど、僕だけはぐれてしまって、ほんの一時だけ、見知らぬ女の子と一緒にいたんだっけ!」
「……こ、これ、この子、ウ○ルなのか? 何でこんな印象的なことを忘れていたんだ? それとも君は幼い頃、日常的にパンプキンヘッドだったのか?」
「あ、ごめんね、この女の子って、リア○ナだったんだ? でも、仕方ないんだよ。知っての通り、『魔剣《ウィ○ス》』の力を使ったら、深刻な『記憶障害』が起こってしまうから、小さな頃のことは、ほとんど忘れてしまっているんだよ」
「──そんな! 私はこの時君に、この青の瞳を褒められたことが、どんなに嬉しかったことか! その後の人生において、どんなに心の支えになったものか! それなのに、君自身が忘れていたなんて!」
「……え、何言っているの? リア○ナの瞳が綺麗なことなんて、当たり前のことじゃないか? 別に僕なんかが褒める必要は無いでしょう?」
「──なッ⁉」
またしても、何のてらいも無いどストレートな賞賛に、一気に頬を紅潮させてしまった。
「リア○ナの凜々しい雰囲気には、その青い瞳が似合っているよね。まるで人形みたいに整った顔の中で、どこか青空の雄大さと包容力を感じさせる青い色が、絶妙なハーモニーを奏でていると思うんだ!」
「………あが、あがががががが───ッ!!!」
──もう、やめて! それ以上『褒め殺し』はしないでッ!
……でも、そうだったんだ。私の『初恋の人』は、ウ○ルだったんだ。
もしかしたら、そうかも知れないとは思っていたけど、こうして魔法学院で再会して、同じ小隊としてダンジョンで危機を乗り越えて、今はこうして同じ派閥で切磋琢磨しているなんて、
──これはもう、『運命』と言っても、過言では無いだろう。
「ね、ねえ、ウ○ル」
「うん、何だい、リア○ナ?」
「実は私、あの時初めて君と出会った時から──」
「──よおてめえら、面白そうなことをやっているじゃねえか?」
「「──ゼ○様⁉」」
そう、そこに現れたのは、我が『氷の派閥』の領袖にして、『至高○五杖』の一角である、『雷公○杖』こと、ゼ○=トルゼウス=ラインボルト様であった。
「おまえら、ウ○ルのスキルで、リア○ナを過去を見ていたんだよな?」
「「え、ええ、そうですけど?」」
「だったら、俺の過去も見てくれないか?」
「「は?」」
「実は昔、見込みが有りそうな餓鬼を一人、発破をかけてやったんだけど、そいつが今どうなったか、知りたいんだよ」
「「え、でも、ゼ○様のことだから、そんな子供は数えられないくらいいるのでは?」」
「それが、戯れにその餓鬼に、『俺の腹を思いっきり殴ってみろ』と煽ったところ、本当に全力でストレートパンチを食らわしてきたんだけど、」
「「ふむふむ」」
「──それが、むちゃくちゃ痛くて、思わず悶絶しちまったんだ」
「「ええーっ、ゼ○様が⁉ そんな鋼のような筋肉ダルマのくせにぃ⁉ とても信じられないんですけど⁉」」
「そうだよなあ、おまえらも俄然、興味がわくよなあ?」
「「……それはまあ、はい」」
「と言うわけで、ちょっくら俺の過去も見てくれや?」
「……それは構わないんですけど、なぜかリア○ナが、むちゃくちゃお冠なのは、どうしてなんだろ?」
「──いいから、とっとと、ゼ○様の過去でも見たら⁉」
「「あ、はい」」
そして先ほどと同じ呪文を唱えて、またしても一冊の本を出現させるウ○ル。
「──これって、またしても、ウ○ルじゃん⁉」
「……あ、本当だ。これも『記憶障害』のせいで、忘れていたのかな?」
「おいおい、こんな『運命の出会い』を、忘れてもらっちゃ困るぜ」
──なッ、『運命』、ですってえ⁉
「……自分だって、忘れていたくせに。──でも確かに、『運命的』ですよね!」
う、ウ○ルさん⁉
「この時、ゼ○様に発破をかけられて、しかも剣までもらって、おまけのおまけにダンジョンに叩き落とされたからこそ、エル○ィに会うために『塔』に登ることを、けして諦めずに、ダンジョンに潜って剣で魔物を倒すことによって、『魔術の実技』で稼ぐことのできない単位を補ったお陰で、魔法学院を卒業して、『塔』に登ることができたのですからね♡」
「いや、大したものだよ、俺様の期待以上だよ! まさかここまで、『男の意地』を見せてくれるとはな! ──やはり、『惚れた女』のためなら、何でもできるってところかあ?」
──ぐさあッ!
「ホント、これこそが『運命』ですよ! この時ゼ○様から発破をかけられず、剣をもらっていなかったら、今の僕がいるかどうか、怪しいですからね」
「おう! 下手すると、俺とおまえとは、『氷姫○杖』に負けないくらい、固い絆で結ばれていたりしてな♡」
「あながち否定できませんよね、あははははは!」
「やはりおまえが俺の派閥に来るのは、必定だったんだよ、ガハハハハハハ!」
そのように、二人して大笑する、『脳筋体育会系』の男ども。
……一体、どういうことなのだ。
私の淡く切ない初恋の思い出を、完全に上書きしてしまいやがってッ。
……うん、やはり『雷の派閥』は、クソだわ。
今初めて、エルフ○リア様の気持ちが、心から理解できたよ!
(※次回の解説編に続きます)




