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Bitter Orange, in the Blaze.  作者: 紅崎ナヤ
三.秋の風を聞きながら
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038.ハルリオとセルピ



 ざあ………っ…


 森が、鳴く。

 この大陸にはるか昔から根付いていた森が、鳴く。

 雄大にその葉を広げて、太陽をその身いっぱいに浴びて――。


 ピュラたちは砦に程近い森の中で、息を潜めていた。

 後方からハルリオたちが騒ぎを起こせば、こちらは手薄になるだろう。

(にしても……本当に大きな砦ね……)

 ピュラは草陰から砦を見上げ、眼を細めた。

 出来合わせではない、きちんと頑丈に作られた砦だ。

 普通、砦を作ってそこを棲家とする盗賊は、ある周期ごとに他人に見つからぬよう砦を変える。

 だからこのような、大きな砦は作らないはずなのだ。

(住み替えの必要がない……つまり、立てこもっているに近いのかしら)

 ピュラはネストの町並みを思い出した。ここまで大きな砦が近くの森にあるというのに、人々に不安の色はほとんどなかった。

 あるといったら仕事の邪魔になることでいらついている出稼ぎの男たちくらいだったろう。


 つまり、町の人を襲ってはいないのだ。


(不思議ね……。なにか特別な理由でもあるのかしら……)

 不意にぴしりと痛みが走った左の手首を抑えて、僅かに顔をしかめた。

 日々、少しずつではあるが着々と痛みは度を増してきている。早くこんな呪いはといてしまいたいものだと心から思う。

 ただ、とりあえず今は、時を待とうと思って静かに目の前を凝視していた。



 ***



「さてと」

 ハルリオは裏側の草陰から砦を覗き込んで軽く頷く。

「では、行きましょうか」

「え、行くって、」

「眼を瞑って、手を離さないようにしてついてきて下さいね」

「ふえ?」

 ハルリオは眼をしばたかせるセルピの手を取って、にこりと笑った。

「こういうものは時間が勝負です。もたもたしていると囲まれてしまいますから――」

 すいとその目を細めて、剣を抜き放つ。

 彼の大剣は、太陽に照らされてその肌を煌かせていた。

 そして、そんな彼は変わらぬ微笑みを――。


「行きますよ」


 瞬間、大きな手に握られた手が引っ張られた。

「ふにゃっ?」

 慌ててかけだすと、豊かな黒毛が風になびく。

 風の大きな音が、耳を打った。

「わっ……!」

 思っていた以上のハルリオの足の速さにもつれかけた足をなんとか立て直し、ほぼ宙に浮いているような状態で走る。

 木陰から日の当たる場所にでたからか、太陽がやたらに眩しく感じられた。

 二人は飛び出してからそのまま一直線に砦に駆け込む。

「し、侵入者だ!」

 2階の見張り窓から誰かが叫んだ瞬間、何かが空を切った。

 ざく、という音と共にセルピの足元に矢が突き刺ささるのに、セルピは息を呑む。

「急いで」

 ハルリオは構わずセルピの手を握ったまま、突っ込むようにして砦へ近付き――。

 壁が視界を覆った瞬間、ハルリオは自分のマントを盾にして横から窓を突き破った。


 ――がしゃんっっっっ!!


 飛び散るガラスの破片に、思わずセルピは眼を固く閉じた。

 握られた手はそのまま、されるがままに一緒に砦に飛び込む。

 重力に従って落ちていく体で受身をとろうとして……何かが沈む体を持ち上げた。

 ――どさっ!

 次の瞬間の感触は、柔らかな腕。

「ふ、ふえ……?」

「怪我はないですか?」

 セルピは、ハルリオの顔を見上げる。

 丁度、ハルリオの腕に抱かれるようにしてセルピは座り込んでいた。彼がこうしていなかったら、今頃床に強く体を打ちつけていたことだろう。

 しかしそれよりも、すぐ近くにある空色の瞳に眼が吸い込まれる――。

「え、あ、だ、大丈夫……」

「急ぎましょう、もうすぐここに人が押し寄せてくるはずですから」

「う、うん」

 ハルリオは立ち上がってセルピを促した。

 砦はみるみるうちに緊迫が張り詰めていき、あちらこちらで人の走る音や声が空気を揺るがす。

 素早くセルピの手を取ると、彼はすぐさま扉に手をかけて開き、辺りの様子を伺った。


 その瞳はふいに細み、静かな鋭さが垣間見える――そのことに、セルピは気付いたろうか?



 ***



 がす、という確かな手ごたえと、そのまま崩れていく体。

「急ぎましょ、早く中核を叩かなきゃ」

 門番を軽く気絶させて、ピュラたちは砦の中へと足を踏み入れていた。

 裏手の方で人の声がする。きっとハルリオたちを追う者の声だろう。

「……大丈夫かしら、セルピのおもりまで任せちゃって」

「大丈夫だ」

 呟きに間髪いれず答えられて、ピュラは思わず振り向く。

 スイはそんなピュラに向かって、軽く頷いた。

「そんなに強いの?」

「強いなんてものじゃない」

 ピュラの大きな瞳が、ぱちぱちと何度かしばたいた。

 そして、首を傾げる。

「あなたがそこまでいうなら相当なものだと思うけど……ってきゃっ!」

 ――ひゅんっ!!

 ピュラの鼻すれすれのところを矢が通過していった。

「ちょ、なにするのよっ! 危ないじゃないのー!!」

「そういう問題じゃないと思う……」

「うるさいわねこの羽根人間!」

「なっ羽根人間じゃないよーっ! これでも人間じゃなくて精霊の一種……う、うわっ!!」

 ――ぎゅんっ!!

 クリュウの頭すれすれのところを矢が通過していった。

「あはは、惜しかったわねー」

「だからそういう問題じゃないよー! ていうかなんでこんな悠長な会話を……」

「はいはい、お仕事だしね。真面目にやるとしますか」

 ピュラはナックルをはめた手をぱちん、と平手で叩いて矢の飛んできた方向を見据えた。

「よし、試合開始ね。じゃ、クリュウ、まかせたわよ」

「う、うん。行ってくる」

 クリュウは飛んで先に奥へと向かった。妖精の大きさならこの混乱の中で気付く者も少ないだろうということで、上の階の偵察にいくことが作戦に盛り込まれていたのだ。

「よーしスイ、行くわよ」

「ああ」

 陽動でほぼ人手は向こう側にいってしまったが、だからといってこちらが完全に空きになることはない。

 まずは飛んでくる矢を避けながら軽やかな動きで相手の懐に飛び込んでいく。

「……っ!」

 その速さに驚いた顔が見えた瞬間、弓士の背中に肘が入った。

「急げ! こっちからも入ったぞ!!」

 奥からの声と共に、何人かが各々の武器を手に向かってくる。

 が、スイの方が格段に腕が上だった。

 ほぼ蹴散らすも同然で5人ほどを軽々を片付けてしまう。

「どっちに行けばいいかしら」

 ピュラは小さく呟いて、スイの後ろから通路を見渡した。

 道は二手にわかれていて、どちらも同じような道が続いている。

「右だ」

「なんでわかるの?」

「香木の匂いがする」

「え……あ、ほんとだ。」

 ピュラも一般知識として、この大陸で香木が多くまじないなどに使われていることは知っていた。

 それに精霊神を人一倍信仰するのもこの地域の者たちだ。きっと、中枢で神かなにかの加護を得る為に焚いているのだろう。

「よし、行きましょ」

 二人は石の道を走っていった。



 ***



「精霊の御名において――」

 ごう、とエネルギーの流れが操られているかのように降り注ぐ。

 辺りの者はそれを浴びると突如体の動きが拘束され、石像も同然となる。

「大丈夫ですか? 魔法は体力を消耗しますよ」

「ん、平気」

 これで魔法を発動させたのは今日5回目になるかとセルピは数えていた。

 実際、魔法を使うことと体力は直接結びつくことはない。

 ただ魔法を使うときは空気中の力の流れを読む集中力が必要となる為、連発すれば体力も磨り減ってしまうのは常識だった。

 しかしそれよりも思うのは、ハルリオの剣術。

 否、剣術のみではない。基本的な体術も心得ているし、その上、簡単な魔法ならすんなり使ってしまうのだ。

 集まってくる者たちを片っ端から、命奪わずともその手にかけていく姿は、正直、恐怖を覚えても無理はないかもしれない。

「そろそろほとぼり冷めたころでしょうかね」

「うん、静かになったし……」

 そういった刹那、セルピとハルリオは同時に振り向いた。

 魔法を使うものだけが分かる、空気中の力の流れのようなもの、

 その流れが突然狂い、こちらに向かってきたのだ。

 ――魔道士が、こちらを狙っている。

 そうとしか思えなかった。

「外へおびきだしましょう、今は向こうに攻撃の手を向けないことが最優先です」

 そう囁いた瞬間、ハルリオは既に動き始めていた。

 セルピも手を握られたまま裏口に向けて走る。

(くる……!)

 そう思った瞬間、轟音と共に辺りの壁が数枚砕け散った。

 耳が壊れるかと思うくらいの音に顔をしかめて前を見るが、瞬間に舞い上がった砂煙で視界がきかない。

 ハルリオが誘導してくれる道をただひたすら走るだけだ。

 粉じんが肺に入って、軽くむせた。

 握られた手は、何故だかそんな中でも暖かい――。


 陽の下に、でた。

 裏の開けたところでハルリオは振り向き、背後を確認する。

 今だにあがる砂煙の中で、一つの影が揺らめいていた。

「盗賊に魔道士がいるなんて珍しいですね」

 ぽそりと呟いて草陰に走った。

 魔道士の腕がゆっくりと持ち上がり、また力の流れがざわめく――。


 ――どうっっっっ!!


 衝撃破が扇形に広がった。

「わ……っ!!」

 樹を盾にしたものの、セルピは思わず足を滑らせてその場に倒れこむ。

 ひねった足に痛みを感じたが、今はそれどころではなかった。

「走れますか?」

「うん、大丈夫」

 立ち上がるとぐらりと倒れそうになったが、なんとかそれをこらえて頷いてみせる。

 次の魔法を待って、それが通り過ぎた瞬間に二人は走り出した。

 後ろから魔道士が追ってくるのを確認して、ハルリオはそのまま森を一直線に走り抜ける。

 目の前の木々をなぎ払って、直線の通路を確保しながら走った。

 足の痛みが走るごとに悲鳴をあげるが、構っている余裕はない。

 しかし障害物をどかしながら随分走ったところで、セルピはふと後ろからの声に気付いた。


「やめろ……っ!」


「え……?」

 明らかに切羽詰った、焦りの声だ。

 それに、随分走ったというのにまだ追いかけてくる。しかも森に入ってからは魔法も使わずに――。

 何かがおかしいと思った次の瞬間、魔道士の男は叫んでいた。


「やめてくれ!! それ以上、樹を切るなっっ!!」


 セルピは思わず立ち止まった。

 振り向いて、目を瞬かせる。

「え……?」

「ギルドに雇われた奴らだろう、俺たちが盗賊だと! 樹を切らないなら危害は加えない、だから森を傷つけるな!」

 セルピが立ち止まったことにより、ハルリオも立ち止まって魔道士の方を見据えていた。

 奥から影が近付いてきて、姿を現す。そこには敵意もなにもなかった。

 魔道士の男はまだ20にもいかぬような青年で、息をきらせながら二人の前に立つ。

「樹を切るなって……」

 鋭い視線を向けて彼は言葉を繋いだ。


「俺たちは盗賊なんかじゃない、そんなのは濡れ衣だ……」



 ***



 ピュラとスイは、顔を見合わせた。

 そしてもう一度、前を見た。

「ね、ねえクリュウ。……もう一度、説明してくれるかしら?」

「だから、この人たちは盗賊なんかじゃないんだ」

 目の前には、神妙な顔をしてこちらを見ている人々。

 おかしな緊張が漂っているのが、誰にでも見て取れた。

「私たちは、この森の開拓に反対しているんです」

 その人々の中から一人の女性がでてきてはっきりと言った。風貌からして、もしかしたら彼女がリーダーなのかもしれない。

「そうしたらギルドは私たちを追い払うように、『盗賊』と偽って賞金をかけた……、そういうことです」

「つまり、濡れ衣ってこと?」

「ええ」


 数刻前、クリュウは一人で2階まであがってきて驚いた。

 そこにいるのは盗賊とはまるで思えないような大人たちの集団だったからだ。

 そこで意を決して理由を聞いてみたところ、答えはそれだった。


「今、上流貴族のサドロワ家がこの辺りの開拓に力を注いでいます。しかし、この大陸は森の大陸、人は森と共存して生きてきました。森を切り開くことを私たちは許せない。ですからこうして志を共にする者たちが集まってこの砦に立てこもっているんです」


 幸い、そこそこ腕のたつ魔道士や剣士がいるから、今のところ貴族軍に根絶やしにされることはないと彼女はつけたした。

 それよりも、真っ白になっているのはピュラの方だ。

「……マジですか?」

「マジです」

「な、なんてことよ……これじゃ仕事がパーじゃない……」

 今日は野宿かと思うと眩暈を感じる。仕事の成功条件は、砦の制圧。しかし、こんな事態で仕事するなどということはピュラに出来るはずもない。

 そんな彼女を見て、女性は少し苦しそうに笑った。

「あなたたちのことを責めるつもりはありません。あなたたちは生きる為に仕事をするのですから……。報酬はいくらだったのですか?」

「8万ラピスよ。あー、でもそれなら仕方ないわね、別の仕事でもやって食い繋ぐわよ」

「いえ、どうぞ8万ラピスをお持ち下さい」


『は?』


 ピュラとクリュウの声が、重なった。

 女性はにこりと笑って奥の棚から金貨を取り出して数え始める。

「皆、生きる為にしているのは同じです。私たちも森があって始めて生きられるのですから」

「ええ?」

 全く状況を把握できないピュラたちはその場に固まるのみだ。

 女性は皮袋に報酬分だけ詰め込んで、ピュラに手渡した。

 ピュラは呆然と袋をその手にとってから、我に帰って思わず叫ぶ。

「ちょ、受け取れないわよ! だって私たちなんにもしてないっていうか侵略者だってのに……」

「困ったときはお互い様ということです」

 それがこの大陸の者の精神ですから、と女性は笑った。

 有無を言わさぬ微笑みにピュラは絶句するのみだ。

「ただ、私たちがこの森を守ろうとしていることだけ知っていてくださればそれでいいんです」

「なら僕たちがギルドに訴えに行けば……」

「そうしたら今度はあなたたちが濡れ衣をきせられて賞金をかけられてしまいますよ」

 確かに、貴族にとって不利になるものは何らかの言いがかりをつけられてギルドの賞金首にされてしまう。

「悲しいですけれど、これが世のシステムですから」

「で、でもなんでこんなに……」

「言ったでしょう、困ったときはお互い様だと。幸い、こっそり資金援助してくれる貴族もいるんです。これであなたたちが生きられるなら……」

 女性の笑顔は素朴で、曇りもなかった。


「生きる人は一人でも多いほうがいいですからね」



 ***



 魔道士の男は言いたいことだけ言うと、勝手に去っていった。

 セルピとハルリオは顔を見合わせて、暫し沈黙する。

「……えっと、」

 場を繋ごうとしてセルピが言葉を濁すが、ハルリオはぽりぽりと頬をかいて首をかしげた。

「スイたちはどうしてるでしょうね」

「ん、うん、きっと平気だとおもうけど……」

「それなら私たちは先に帰っていましょうか」

「ふぇ?」

「これだけの時間があったらもう今頃中枢にいるでしょう。そうしたらあとは彼らでなんとかするでしょうから」

「そ、そっか……」

 頷いて、歩き出そうとした瞬間――、セルピは右足に激痛を感じて思わず膝をついた。

「……っ」

「どうしました?」

 ハルリオが膝をついて覗き込んでくる。

「ご、ごめんね、さっき転んだ時にひねっちゃったみたいで。でも、あとでクリュウに治してもらうから、大丈夫だよ」

 そう言って立ち上がったが、緊張の解けた今では痛みに思わず顔を歪めてしまった。

「ああ、それなら」

 ハルリオは笑って剣を仕舞うと、くるりと背を向けてかがみこむ。

「……え」

「歩くのは大変でしょう? さ、早く」

「あ……う、うん……」

 セルピがおずおずとその背中に乗ると、ハルリオは軽々と立ち上がって歩き始めた。

 静かな秋の森を、ゆるやかな速度で進んでいく。

 あまり代わり映えのない場所を通っていく時間は、とても長く感じられた。

 まるで永遠にそこから抜け出せないのではないかと一瞬錯覚してしまうような――。

 ――ハルリオは、不意に呟いた。


「いつか、あなたによく似た方にお会いしたことがある気がするんです」


 ――。


 ――……。


 ぴくん、と肩が跳ねて瞳が丸くなった。

 肩のマントを掴んでいた手が、きゅぅ、と握り締められる。

 やわらかなのに、まるで何も入っていないような、声……。

「いつでしたかね……、もう忘れてしまったのですが」

 鼓動が早くなって、体中を駆け巡っている。それを気付かれたらどうしようかと思って目を瞑るが、ハルリオは淡々と続けていった。

「真っ白な肌によく映える黒髪の子で、はじめは一瞬、雪の精かと思いました」

 こちらを見て、柔らかく笑いかけて――。

 小さくその黒髪を揺らしながら頭をさげた、少女の姿。

 笑って、またセルピを背負いなおす。

「何故でしょうね。その子とはたった一度しか会わなかったというのに、よく覚えているんですよ」

「ハルさん」

 セルピは、言った。

 小さな声で、まるで囁くように。

「きっと、ボクとは違う人だよ」

 自分に言い聞かせるかのように、静かに眼を伏せて――。


「だって、ボクはセルピだから」


「――そうですね」

 それからハルリオは、何も言わなかった。



 ***



 数時間後。

 夕暮れのネストにて。

 ピュラは、真っ黒になっていた。

 横でクリュウが気まずそうな顔で、ピュラとスイの顔を交互に見ている。

 そんなピュラに、ハルリオはにこやかに話しかけた。

「それで、どうなりましたか?」

「こうなったわ……」

 ピュラはどっさり金貨が入った袋をかかげてみせる。

 が、テンションの方は絶対零度もいいところのようだった。

「あー人から施しをうけるなんて私も落ちぶれたわ……てかあの状況でなんで断ることが出来るのよ……っ!!」

「なんだか大変そうですね」

 全く動じないハルリオを恨めしく思いながら、ピュラは拳を握り締めた。

「……むわよ……」

「え?」

 嫌な予感を感じたクリュウが顔をひきつらせる。

 瞬間、ピュラはがばりと天を仰いで空へと指差した。

「飲むわよ!!」

「飲むって、ジュース? ボクも飲みたいよ~」

「あのねっ!! 飲むっていったら酒場に決まってるのよほら行くわよ!!」

「えええ、そんな……」

「文句あるの昆虫類!?」

「い、いえなにも……」

「ほらスイ!! ぼーっとつったってないで早く来なさいよねっ!」

「ああ」

「あはは、たまにはいいかもしれませんね」

「よーし今日は飲みまくるわよっ!」

 かくして一行は、酒場へとなだれこんでいくのだった。



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