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70.胸の奥
アルベルトへの出張の荷物を準備をしながら、
新聞の文字がふと目に留まる。
『アルベルト国次期王、未だ決まらず』
気になって、新聞を手にとる。
どうやら、次の王の指名が何度も先送り
されているようだ。
スレイド王子の結婚からはもう数年が過ぎている。
国王は体力も衰え、早めの引退を見据えて
いたようだが…
そしてその記事の最後にあったのは…
『——これまで遅れていた第二王子の婚約者選びは
年内にも決まるであろう』
チクリ。少し胸が痛んだ。
ウィルの隣に自分以外の誰かが立つこと……。
とうとうそんな日が来たのだ。
ざわつく心に釘を刺す。
いけない。
急いで新聞を片付ける。
今さら感情を乱すなんておかしいわ。
自らその場所を離れたのだから…。
自分の生きるべき一つの道を選んだのだから。
ヘレナは、荷物と持参する資料に
意識の全てを集中させる。
明日の仕事は、アルベルトの貴族から
ヘレナ個人に直接依頼があった重要な仕事だ。
ミスは許されないわ。
ヘレナは気合を入れ直して、
翌日を迎えることにした。




