67.住む世界
ウィルはヘレナからの
最初で最後の手紙を受け取って以降、
手紙を何度も読み返しては、取り戻せない日々
を悔やんでいた。
貰ったばかりのペンは、今でも傷ひとつなく
冬のあの日のままだった。
なのに、ヘレナだけがウィルのそばにから
居なくなった。
あんな恋は…もう二度とない。
昔から自然とそれは分かっていた。
「ウィル…少しいいか?」
スレイドが、訪ねてきた。
「はい兄上」
「私の式も終わり落ち着いたところで、つぎは
お前達だ…ヘレナ令嬢は今度いつ来る予定だ?」
スレイドのその言葉に、ウィルはたまらない気持ち
になった。
「…兄上…彼女は…。
私の幸せを願い…私の元を去りました」
ウィルは声を押し殺して、冷静を保っていた。
「私の幸せは、彼女といる未来に違いないのに!」
「……。」
スレイドは、ウィルの肩になだめるように
手をおいた。
「もしかしたら最初から…違っていたのかもしれない
数年でも…身につくようなものではないだろう。
私達の住む世界は」
そう言って、スレイドは部屋をでていった。
ウィルは愕然とした。
身に付けなければいけないなどと…思っていなかっ
たはずなのに。
そのままのヘレナでもやがてこちらが
受け入れるようになると…
思っていたはずなのに。
なぜいつも、高い壁を越えさせようとしたのか。
頑張る彼女を…見守っていた自分。
それは…間違っていた。
僕は、ありのままのヘレナを愛しているのに…!
ウィルの瞳からは、後悔の涙が溢れて
止まることはなかった。




