65.古い手紙
ヘレナから手紙が届いた。
先生にお手紙を託すなんて申し訳なくて出来ない。
というヘレナは、一度も僕に手紙をくれたことは
無かった。
とても嬉しいはずなのに、少し心がざわめいて
開くのが怖い。
昔の様な元気がなくなった彼女。
僕のそばにいる事を遠慮するようになった彼女。
……思いを口にしなくなった彼女。
そのどれもが——あの夜会からだった。
重い気持ちで手紙を開封する。
——ハラリ。
一枚の古ボケた紙が手元に落ちてきた。
それは…ヘレナに出会った年に、
初めて彼女に書いたあの手紙だった。
ズシン。と鉛をら背負ったような感覚。
懐かしい自分の手紙を読む。
『愛しいヘレナ
君に何も言わず、急に学園を休んでしまって
淋しく思っているだろうか?
僕は君と過ごす未来を失いたくない。
アルベルトでその道を必ず見つける。
——それまで待っていて欲しい。
ウィルより 』
——ウィルの中で、今でも変わらないその気持ち。
ヘレナは何度もこの手紙を読んだのだろう。
文字が涙で滲んでいる。
ずっと大切に持っていてくれた。
それから…ヘレナの手紙を読んだ。
『大切なウィル。
あなたはスレイド様と共にアルベルトを率いて行く
立派な王族になってください。
私は守られるだけの女性ではなく、自分の足で
3カ国から必要とされる人になれるよう頑張ります
——お互いの未来のために——
ヘレナ 』
ウィルから嗚咽が漏れた。
これほど想っているのに、
僕はヘレナを…一人で苦しませてしまった……。
僕はこんなに大切な人を
この一年、悲しませてばかりだった…
ウィルは手紙を持ったまま。
しばらく動くことが出来なかった。




