63.青いプレゼント
結局、帰国できるほど体調が完全に回復するのに
滞在予定の三日間をオーバーしてしまった。
ヘレナの焦りは募った。
まだ完全ではないけれど、少しは勉強しなければ…
ニナに頼んで、本を取り寄せてもらい、ヘレナは
この王城でも勉強をする事にした。
念のため持ってきていた本やノートを鞄から
出そうとした時。
コトン。
箱の音がした。
「あら?」
ヘレナの鞄の底にみえたのは、
夏に渡しそびれた。ウィルへのプレゼントだった。
——夢に向かって——
ペンにそう刻んだ時のことを覚えている。
二人で一緒にいる未来を願った自分。
願っても良い未来なのかすら
……わからなかった。
箱を隣に置いて、意識を勉強に向ける。
しばらくして——
コンコン。
「ヘレナ、体調はどう?」
毎日何度もお見舞いに来てくれる優しいウィル。
きっと執務もあるはずなのに…。
「もうずいぶん良くなったのだけど、フェルラーに
帰ると独り暮らしだから、ニナさんが心配して
くれただけよ」
ヘレナは微笑んだ。
「——ところで、もしかして今、勉強しているの
か?」
「……ええ。夏の…勉強の遅れを取り戻すのが…
とても大変だったの」
ヘレナは少しうつむいた。
「……そうだったのか…。知らずに済まない」
「ううん。私の事だから…気にしないで」
そのヘレナの言葉にウィルは
「違う。ヘレナだけのことじゃない。
二人で話し合うことだ。君の事も、僕の事も…。
何でも話してほしい。一人で悩まないでほしい」
ウィルは、ヘレナの横顔をずっと見つめていた。
しかしウィルの方を見れずにいる。
ふと、手元にある小箱に目がいった。
「ウィル。実はね、これ…夏にあなたにプレゼント
しようと思っていたの。渡しそびれてしまって…」
そう言って箱を渡す。
「——ヘレナが選んでくれたプレゼント?」
ウィルの顔は、ぱあっと明るくなった。
両手で収まるほどの茶色い小箱を受け取る。
「開けても良いかな?」
「もちろん」
ウィルは青いリボンを解き、中のペンを取り出し
た。
「——ん?何か刻まれてる。
……夢に…向かって——」
ウィルの笑顔が溢れた。
二人の夢。目標に向かって共に歩む想いが
伝わってきた。
「とてもよいプレゼントだ。ありがとう。
これからいつも、このペンを見るたびにヘレナを思い出す。」
「ウィルが喜んでくれて、私も嬉しいわ。」
その後二人は沢山話をした。
それは懐かしい学園の話だった。
一番楽しかったあの頃の…。




