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61.大切な人
「ウィル。私もあなたが大切で、大好きなの。
あなたにとても会いたくて…今日ここに来たわ。
でも…。」
ヘレナの瞳が涙で揺れている——。
瞳の中で収まらない涙が頬を伝う。
「ヘレナっ」
ウィルは自分の鼓動がヘレナに伝わる程強く
だきしめた。離したくない。離れたくない。
しかし…ヘレナの腕は弱々しくウィルを
抱きしめかえした。
「守られるしかない未来は…苦しいわ。
——きっと、あなたにもいずれ負担をかける事に
なる。私も…アルベルトでなければ…。
一人の、人間として自立して生きていけると
ふと思ったの。」
その言葉はウィルをつらぬく勢いで突き抜けた。
ヘレナの瞳をみつめる。
「負担など…そんなことはない。ヘレナはまだ
気持が癒えていないと分かっている。辛い思い
をさせて…本当にすまなかった」
誰も悪いわけではない。
それは二人とも分かっていた。
けれど…
…いつからか、思ったことをウィルに
話せなくなっていた。
…いつからかヘレナを心から
笑顔にする事が出来なくなっていた。




