60.すれ違う心
それから数ヶ月後。
先生を通してまたウィルからの手紙が届いた。
『もうすぐ冬休みかな?
また、アルベルトに遊びにおいで。
ヘレナにとても会いたいよ』
ヘレナは迷った。
ようやく遅れていた勉強を必死に取り戻し、
授業について行けているようになった。
これ以上遅れてしまったら…。
——それでも……ウィルにあいたい!
ヘレナは、三日間の滞在と決めて、
アルベルトに向かうことにした。
今回もリッツの屋敷からの迎えに来た。
「お久しぶりですね。ヘレナ様」
ニナとは夏以来だったが、信頼という絆で
結ばれたせいか、再開した時
抱き合って喜んだ。
「ニナさんに会えるのをとても楽しみにしてました」
「それは光栄でございます。殿下にヤキモチを
焼かれそうですね」
そんな冗談も話せるほど仲良くなった。
「…今回は気楽にお過ごしください。普段どおりの
ヘレナ様で」
ウィルとニナからの気遣いを感じた。
しかし…今のヘレナはそれを、間に受ることなど
出来ないほどに、王族の世界を特別に感じていた。
※※
「お久しぶりです。ウィルブラント殿下」
ヘレナは最初の挨拶は礼儀をわきまえ…。
カーテシーをとる。
そして。
ウィルの反応をみることにした。
ウィルは一瞬だけ目を見開いたが、すぐに普通
になった。
「——ヘレナ。外は寒かっただろう?
今日を、ずっと待っていたんだ。会いたかった…」
差し出された手にそっと手を重ねる。
——やはり、 王宮ではこれが正しいのだわ。
普段の自分なら、久しぶりに会えた恋人に
飛びついていただろう。
ありのままのヘレナでは…
王城で生きて行く事は出来ないと感じた。
ひさしぶりの王城は、冬仕様になっていた。
暖かで豪華な敷物やロウソクの柔らかい灯りが
豪華さの中に温かさを演出していた。
素敵な星のオブジェに目を奪われる。
「本当にセンスの良いオブジェね!」
ヘレナは手に取って豪華なオブジェを眺める。
嬉しそうなヘレナを見ると、ウィルは堪らなく
なり、そっと引き寄せ腕に閉じ込めた。
ヘレナの、抱き心地と甘い香りが脳を解すほどに
ウィルを癒した。
「ヘレナ。さっきは…なぜ『殿下』と?それにカーテ
シーまで…」
ウィルもヘレナを遠く感じたのだ。
ヘレナは無言だった。
「…僕はずっとありのままの君を守るつもりだ。
そのままの君を必ず幸せにする。僕の隣に居るのは
ずっとヘレナしかいない。これからもずっとだ」
ウィルも夏からずっと苦しんでいたのだ。




