59.普通の恋
『ヘレナ。
王城で君が過ごしていた部屋を、今でも
ときどき見に行くことがあるんだ。
君とここで過ごせた事は、
かけがえのない日々だった。
ヘレナは少し疲れてしまったかもしれないが
落ち着いたらまた遊びにおいで。
今度は二人でゆっくり過ごそう
楽しみにしている。
冬は雪が積もってとても綺麗な所だよ
ウィル 』
——ウィル。
あなたがとても大好きなのに。とても遠い。
※※
フェルラーでも雪が舞い始めた。
ここで迎える初めての冬。
寮の学生達で簡単なパーティを企画した。
「今日は夜どうし楽しみましょう!」
集まった10名ほどの男女は、
勉強以外の趣味や、他愛のない会話で盛り上がっ
た。
その中に恋人同士もいて、皆で冷やかしている。
カップルは、寄り添うように腰掛けている。
「……それで、夏は二人でいろんな所を旅したんだ」
「ずっと二人って、喧嘩しないの?」
「今のところ…しないわ!ねぇ!」
微笑み会う二人。仲の良さを感じる。
「は——参った参った。幸せだな二人は!」
ハハハ。と皆の冷やかしと笑顔が絶えない。
いつでも友達に紹介出来て、恋の話もできる…
それに何より普通にずっと共に過ごせるなんて…。
自分と変わらない立場の二人と、ヘレナの恋を
比べてすこし落ち込む。
それはヘレナとウィルには無い完全な自由だった。
アルベルトに行く前は、ヘレナも
ふつうの恋人の様に少しは過ごせると思ってい
た…。
目の前のカップルをみて、
学園の頃を思い出した。
それは…二度と戻れない時間だった。
——つう となぜか涙が伝っていた。
「……ヘレナ。どうしたの?体調が悪いなら
一緒に戻ろうか?」
レイチェルはこの頃特に優しい。
きっと何かで悩んでいることをわかりつつも
踏み込んでくることなく、支えてくれる。
「ううん。違うの。懐かし思い出を思い出したの」




