6.ウィルがいない
翌日、ウィルは学園に来なかった。
ウィルと過ごす様になって、初めての
彼がいない一日だった。
ウィルがいると、ヘレナは平凡な一日が特別に感じ
られた。いつだってヘレナを見て、ヘレナを喜ばせ
てくれた。
ウィルが居ないと…淋しいな。
ヘレナは、ふと、自分はこんなに淋しがりやだった
かと思った。ずっと冷たい家族と過ごしてきて、学
園で案外、一人で過ごしても平気だったヘレナ。
それが、ウィルといる暖かさを知ってしまい……
「ヘレナ、ひさしぶりに私達と放課後
買い物にでも行こうよ」
タイミングよく、友達の誘いもあって、
ヘレナは、今日一日は楽しく過ごせそう。
と思った。
ルイーザとミーシャとの、放課後の寄り道は
ひさしぶりだった。
しかし、いつも3人で立ち寄っていたカフェは、閉店
してしまい、お揃いのものを買っていたお店は、別
の商品を取り扱う店に変わっていた。
「私だけ、取り残されたみたい…」
ヘレナは、数カ月で変わってしまったお店をみて
また少しさみしくなるのだった。
「その分、ヘレナが新しいお店教えてくれたから
そこにしよう!」
へこみそうなヘレナは皆と、
まだ真新しカフェへと向かった。
そこで先日ミーシャが話していた、ウィルの家の話
を聞くことになる。
「ヘレナ、ウィルの家に行ったことある?」
その質問は突然だった。
「……ないけど、今度行く予定」
「そう…実はこの前の話、先生達がひそひそ話してるのを聞いたの」
「ウィルって、転校してきてもう少しで1年でしょ?
先生たちも様子見に行ったんじゃない?今も
結構遠方から来てるっぽいよ?」
「そうなんだ…知らなかった」
学園の遠方から通っているのに、毎日欠かさず
ヘレナを、送り届けてくれた
ウィルは自分の家族や家のことについて話すことは
無かった。それはヘレナが家の事について誰にも話
さないのと同じで、あえて聞くこともなかった。
「私、ウィルの事よく知らないかも…」
それは…思いがけずヘレナを満たしてくれた愛情ゆ
え、浪のように押し寄せる愛情の海の中にただ沈ま
ずに生きているだけのようだった。
自分で意志を持ってその海を泳いでいるわけでもな
かった。
そのことに気づく。
「ヘレナったらウィルにすっかり虜にされちゃった
ね」
「でも、二人ともとても幸せそうだし、ウィルは優しそうだし良かったね。ヘレナ」
「うん。とっても大切にしてくれる」
「あ、のろけた」
「あははは」
ミーシャとルイーザは、ウィルの一方的な片思いが
キレイに実ったことを喜んでくれた。
明日はいよいよ週末、ウィルは迎えに来てくれるの
かしら…?




