57バラの花束
コンコン。
「おはようヘレナ」
ウィルは朝早くから目が冴えてしまっていた。
ベッドでいろいろ考えているうちに、彼女が
好きなものを朝一番に見せたいとおもった。
小ぶりの可愛らしい花束を用意して、支度ができた
ヘレナの部屋をおとずれたのだ。
「昨日は…お疲れ様も言えなくて…ごめんね」
そっと差し出した、
パステルカラーで統一された明るい花束。
ヘレナの反応を見る。
「わぁ。かわいい!」
ヘレナの表情がぐっと明るくなった。
良かった…。
夕べ付き添っていたであろうニナにも感謝する。
「すこし…庭を散歩しないか?」
開放感のある外の空気は、いつもヘレナを
元気にしていると思った。
王城に来てから、何の予定もないゆっくりとした
一日を迎えたのは、これが初めてかもしれない。
本来、このような夏休みの予定だったのに…。
二人は見事に手入れされた庭を並んで歩く。
「少し、気分は落ち着いたかな?」
「ええ。心配かけてごめんなさい」
「いや、初めての場に一人で参加させた
僕が悪かった。守ってあげられず…すまなかった」
ウィルはヘレナの瞳をじっと見つめた。
彼女の瞳がまた曇るような事があれば——。
自分が許せない。
「気にしないで。ウィル。」
少し元気がないヘレナが気になった。
庭にあるガゼボで日差しを避けて過ごしていると
イザベラとスレイドが、ウィル達を見つけて
こちらに向かって来ていた。
すっと立ってカーテシーをとるヘレナ。
イザベラは二人の近さに少し驚く。
「お二人は、とても仲がよろしいのね?」
ヘレナは、そっとウィルから下がった。
——ウィルはそれが悔しかった。
「私が留学していた時の話をしていたので、
自然と砕けた様になりまして…親しみが湧きます」
ウィルは、フォローした。
「まぁ、そうですの?ここは王城ですのに…
他国の方は自由ですのね」
イザベラは文化の違いに驚く。
スレイドは
「同じ年頃でも、いろんな見方がありますから」
と広い考えを示す。
ウィルもスレイドも、自分を気遣ってくれている。
けれど、自分では何一つ返すことができない。
——ただ守られるしかない自分だった。




