50.努力の日々
「ニナさん、私、今度夜会に出ることになって…
また、いろいろ教えて貰えますか?」
ヘレナは、翌朝すぐにニナに相談した。
「もちろんでございます。ヘレナ様の頑張りは
殿下に伝わりましたね。」
ニナの優しい笑顔にホッとするヘレナ。
特に問題はなかったみたいだと、安心できた。
「夜会には、国内の貴族が皆様参加されますので、
ヘレナにとって、よい経験になると思います。」
※※
翌日から毎日いろんなドレスを着用し、
身のこなしかたを体に覚えさせる。
ドレスの裾を踏まないように、人に近づく距離も
考える。
カーテシーも優雅に見えるように…
乾杯のタイミングや持ち方。
話しかけられた時の挨拶……など
細かくみればキリがなかった。
しかし、それは目立たぬように過ごす為に、
場所に馴染んで要られるように必要な事だった。
どの動作も、スムーズにこなせるように…
そんな毎日をウィルは心配した。
夏休みを楽しくすごくつもりが…。
「ヘレナ、少し休憩しよう?頑張りすぎだ」
「いいえ殿下。時間が足りませんもの。殿下との
休憩も、これからは練習にさせてください」
少し気になったが
頑張りたいというヘレナの思いを受け取り
彼女のペースに任せることにした。
気づけばヘレナは休憩以外の全てを、練習にしてい
た。
私、普段からヒールとロングドレスを身につける
ことがほとんどなくて、歩く事がとても苦手だ
わ…。
ヘレナには、ドレスを着てただ歩くということが既
に難しかった。
ずっと同じ場所で、立っているだけなら
他のことにも気がまわりそうだが…。
そんなある日、
「ヘレナ、庭の花を見に行こう。王城で熱帯に咲く
花が見れるんだよ?」
ウィルに誘われたが、その花の場所がヘレナには
少し遠く感じた。
「私が行くには少し遠いわ。ドレスだし…」
この頃、ヘレナは引きこもりがちだったので、ウィ
ルは外へ連れ出して気分転換させたかった。
「そんなに遠くないよ。さぁ、手をつないでいこう」
と。ウィルがヘレナの手を引ここうとした時。
その一歩が今のヘレナには大きかった。
「……ウィル、やめて…。私そんなに早く歩けない
の!ウィルのように、何も考えずに自然な動作で
動けない……あなたが生まれた時からやっている事
を私は1ヶ月で練習してるの…!」
ヘレナが、はっと気付いたときには、
少し……
ショックを受けた表情のウィル。
「ヘレナ…。無理することはないんだ。
夜会は、欠席しても構わないんだよ?
いずれ結婚するまでに身に着ければ
よいことなんだから…。」
ヘレナは、こんな事で既に言葉が乱れた事が
更に情けなかった。




