48.招待
「……夜会?それは、どのような会…でしょうか?」
ヘレナには、——夜会が分からなかった。
ほんのわずか、この場の空気が変わった。
ウィルは、すぐにヘレナのフォローをする。
「兄上、今回初めて王宮に来たばかりで、もう
夜会とは…。リッツには王族も貴族も
いないのですよ?」
ウィルは、ヘレナにあまり負担をかけたくなかっ
た。
「しかし…アルベルトは王族の国だ。知ってもらうの
によい機会だと思うが。」
せっかくの機会だから誘ったのに。
というスレイドの残念そうな顔。
ヘレナは戸惑った。
ここで断れば印象が良くない。
…夜会のことは何もわからない。
でも、ウィルと一緒なら…。
「……ご招待頂けるなら、大学との日程をみて
参加させて頂きたいと思います」
ヘレナは頑張った。
きっとこの日、一番の勇気を振絞っていた。
「……ヘレナが大丈夫なら、私は嬉しいけれど…」
ウィルは客人扱いとはいえ、ヘレナをエスコート
できることはとても嬉しかった。
こうして、初めてのお茶会は無事に終わった。
茶会の後、ヘレナと共に客室へとやってきたウィル
「ヘレナ、とても疲れただろう?」
大切なヘレナをいたわるように抱きしめる。
ウィルは、ヘレナを心配していた。
予定では、アルベルトの国の話や
家族の日常的な話をするつもりだった。
なのに…。
「そんな事ないわ。素敵なお茶会だった」
——ここでは、これが普通なのだから。
ヘレナはかなり疲れていた。
常に背筋を伸ばして座り、目線にも気遣いながら
会話に集中していた。
たった1時間ほどのお茶会がこんなに疲れるなんて。
けれど今はウィルが優しくねぎらってくれる。
学園で外国語を頑張った日々のように
頑張り続ければきっと夢が叶う——。
ヘレナはそう思っていた。
「ところで、夜会の事だけど…」
ウィルは、夏の終わりに開かれる
夜会の説明を始めた。
「夜会はひと月後で、兄上の結婚式の前に、国内の貴
族 だけを集めてそれぞれ交流を図るパーティだ。
少し……重要な夜会になる」
ドキッとするヘレナ。
普通のパーティなら、普段から他国の人と交流
しているヘレナなら、なんとかなりそうだが…。
「——また、ニナさんに指導頂けるかしら?」
前向きなヘレナの返事に、ウィルの笑顔が
輝いた。
「もちろんだよ。ニナだけでなく王宮の使用人
皆が、ヘレナを応援しているし、僕だって
ダンスの練習だって何だってやるよ
ヘレナの隣にいられるのだから!」
——こうして、数日の滞在予定のはずが
夏休みいっぱいアルベルトに滞在して、
夜会に向けての特訓を受けることになった。




