46.ご挨拶
「それと、明日のご予定ですが…
短い時間ではありますが、陛下と皇后様、それから
スレイド様とご挨拶程度にお茶会を予定しておりま
す。」
再び緊張が始まった。
リッツの屋敷での練習は、もちろんこの時のため
だった。
「……それから…恐れ入りますが、明日は
王族の皆様の前では、『殿下』とお呼びください」
少し言いにくそうにしながら、でも大切な事
だから、今まで言えなかったのだろう。
——そうだ。
今更ながらに、王族と自分の違いを知らされる。
それからヘレナは、おぼろげになっていた
マナーのポイントを、もう一度ニナさんと復習
する事にした。
※※
——翌日
アルベルト国の王と王妃は、ウィルがリッツで出会
ったという一般女性、ヘレナ嬢に会うのを楽しみに
していた。
他国の一般市民と話す機会は、なかなか無い。
それに、ウィルの執着ぶりが気になった。
「陛下、ヘレナ嬢はとて美しくて素敵な女性だそう
よ。対応した侍女たちが褒めていたわ」
アルベルト国は伝統的な国家であるが、
決して保守的なわけではなかった。
「そうか…ウィルもひさしぶりに会えて、
嬉しかっただろう。ウィルがあれほど言うのだから
この王城にも馴染めるといいが…」
他国との婚姻も、かつてはあったが
それは貴族の令嬢である。
一般市民と王族の婚姻は、この時代では
極めて珍しかった。
——すべてがうまく行くと良いが——
それが二人の思いだった。
貴族の令嬢であっても、王族のしきたりなどで
がんじがらめになり、まるで美しい牢屋だと
言う者もいる。
生まれながらに違う暮らしのちょっとした
ズレが、二人の致命的な別れにならなければ
良いのだが…。
※※
「ヘレナ、緊張してるの?」
まっすぐ立っているものの、ぎこちない。
「だって…」
「大丈夫、僕がそばにいるから」
ウィルにエスコートされて、素敵なお庭に準備
されたお茶会に出席する。
「父上、母上、そして兄上。
お待たせしました。こちらがリッツ国から来た
私の大切な女性、ヘレナ·ウォズリー令嬢です」
アルベルト国の王族の目が
ヘレナに集中した。




