43.大人になった君
ウィルは予定より随分早くから
晩餐室で待っていた。
正装とまではいかないが、ヘレナを迎えるには
十分すぎる装いで彼女をまつ。
今朝のヘレナの到着は、もちろんすぐに報告があっ
たが、執務中でもあり、王族はすぐに会えるもので
はない。
ソワソワしながら何度も時計を確認したけれど
一向に時間が過ぎない。
昼までがとても長く感じる。
いろんな事が手につかず、
気分転換に王宮をウロウロしては、
騎士を捕まえて、ヘレナの様子を聞いた。
「長旅でしたが、お元気なご様子で何よりです殿下」
そんな言葉を何度聞いたか…。
自分よりも先にヘレナに会えた騎士が
恨めしく思ったほどだ。
でも、もうすぐ彼女に会える!
コンコン。
「失礼致します。殿下、ヘレナ様をお連れ致しまし
た」
ニナの声がして、晩餐室のドアが開いた。
僕の目は、見慣れたニナの後ろの人影に
さっと集中した。
——ヘレナだ!——
とっさに立ち上がっていた。
彼女の瞳が僕を見て、優しく微笑んだ。
長く美しかった髪を切って、ブラウンの髪を
耳にかけた姿がとても大人びて見えて、胸が
高鳴り息が苦しいほどだった。
久しぶりだね、いつ切ったの?
すぐに言葉にしたいのに、
彼女の肌に溶け込むように似合うラベンダー色の
ドレスと耳元で輝くイヤリングが、大人になった彼
女をぐっと美しく見せた。
すっかり彼女に見とれて言葉が出ない。
今日のヘレナの姿を目に焼きつける。
きっと、この日、アルベルトでヘレナを迎えた
感動を、僕は生涯忘れないだろう。
「……ウィル?どうしたの?どこか変かな?」
先ほどから言葉を、失っている僕に、
ヘレナは少し困ったようで、照れながら
可愛らしいく微笑む。
本当なら、すぐに抱きしめるはずだった。
でも痺れたように固まっていた。
「……それでは私共は下がらせていただきます
すぐにお食事が参りますので…
ごゆっくりお過ごしください」
ウィルの様子に、ニナはニコリと笑って
一礼した後退出した。
ニナ達が下がったあと、やっと僕は止まって
いた時が動き出したようにようやく言葉が出た。
「ヘレナ!すごく会いたかったよ!」
手を引き寄せてから、ぎゅっと抱きしめた。
包みこむように彼女を抱きしめると、ふわりと
花のような香りがする。
ようやくここにヘレナがいることを感じられた。
そして、その素敵な髪にも触れたくなった。
「とっても似合ってる。素敵だよヘレナ」
そっと頭にキスをした。
1年の間に彼女はすっかり大人の女性になっていた。
「どうぞ、ヘレナ」
ウィルは、ヘレナの為にイスを引いた。
アルベルトでヘレナと過ごす日。
それがどれ幸せな事か、王族であるウィルには
よく分かっていた。
ウィルも向かいの席に着く。
すると、ちょうど食事が運ばれてきた。
プライベートな晩餐に使われるこの部屋は、
手が届くくらいの距離で食事が楽しめた。
「ヘレナとの食事はいつも幸せだね」
食事の進み具合に合わせて料理が並ぶ。
窓の外には、美しい庭園。
部屋には豪華な花が飾られていた。
全てが二人の為に準備された時間だった。




