4.夢中になる恋
学園に着くと、周りの子がひそひそと何か話してい
る。 どうやらヘレナな事のようだ。
何かしら…?
「おはよ〜。ヘレナ。——ちょっといい?」
ミーシャは、ヘレナを捕まえて特別教室の近くまで
来た。あまり人が通らないその場所にわざわざ?
「ヘレナ、昨日ウィルからプレゼントもらった?」
「あ、うん。誕生日だったから」
ミーシャは、あーやっぱり。
と言った風で、ヘレナに噂の内容を教えてくれた。
「なんか、ヘレナがウィルを良いように使ってるんじ
ゃないかって噂が…。」
あ…あそうか。
恋人でもないのに、あんな風に贈り物をもらうのは
確かに友達ではないかもしれないと思った。
「ちょうど、ミーシャに相談しようと思ってたの」
ヘレナは、自分の気持ちの判断がつかないことを
ミーシャに相談した。
ウィルと過ごす毎日はとても楽しいし、
彼が誘ってくれる事はいつもヘレナを高揚させた。
昨日のように、突然驚かせてくれる事も嬉しいし、
彼はそれを自然とやっているのだ。
ミーシャは、ふぅっ。とため息をついて、
白目を剥いている。
「それを…ウィルに夢中になってるって…
いうんじやないの?」
ミーシャは、あきれたようにヘレナを見ていた。
「え、そうなのかな。」
「じゃ、ウィルがいない毎日を、想像してみたら?
きっとつまらなくて暴れちゃうわよ」
——確かに。
放課後は、教室まで迎えに来てくれて
時間が許す限り一緒に過ごす。時には今、気になっ
てるものについてお互いの考えを述べてみたり、素
敵な場所を見つけたら一緒に行きたいし、同じもの
を見て、どう感じるのか聞いてみたい。
それに、私に似合うものを一緒に
選んでくれて、いつでも素敵だと褒めてくれる。
そうだったんだ。私はウィルが好きなんだ。
気づいたら、ドキドキしてウィルに会うことが
急に恥ずかしく感じてきた。
「それと、噂によると…
相当な豪邸らしいわよ?知ってた?」
——ウィルの背景に釣られた——
そういう事だったのか…。
「でもさ、ヘレナの家庭だって呆れるくらいに
裕福なのにさ…
釣られるわけないじゃない?ただの冷やかしよ。
気にしない、気にしない」
この手の噂が苦手なヘレナに
フォローしてくれたのだ。
ありがとう。ミーシャ。
——昼休み——
「ヘレナ!お昼行こう!」
相変わらず周りを気にしない。
廊下から、大声でヘレナを呼ぶ。
「ウィル。た、たまには友達と食べなくていいの?」
今日は、何を話せばいいか…
とにかく返事をしなければ。
そう思うと、お昼ではなく放課後に会いたかった。
「今日は、ミーシャと食べる約束しちゃったの。
ごめんね」
そう言って、ウィルに手を振り、ミーシャたちと
お昼を取ることにした。
「じゃあ、またあとで!」
ウィルは急ぎクラスへと戻っていった。
ウィルのヘレナへ向ける愛情は、
押し付けでもなく、熱烈すぎるわけでもなく…
穏やか過ぎず、包みこむでもなく…
……本当にヘレナにとって、『適切』だった。
とにかく、学園でも目立つ方のヘレナは
沢山、好意を向けられてきた経験から、
なんとなく違う。とか、ちょっといい。
くらいは分かっていた。
しかし、ウィルは違った。
これほど『適切である熱量』はウィルしかいなかっ
た。
更に、適切であるにも関わらず、ウィルの方がよ
り、ヘレナが好きだった。その事に気がついたのだ
った。
ヘレナは愛情に飢えていたのかもしれない。
誰かを愛したいと思いながらも、それ以上に
常に自分を愛してほしい。どんな時も大切にしてほ
しい。
その想いがとても強かった。
でも、それを…誰にも見せられなかった。
ウィル以外には…。




