38.初めての出来事
私は今、優雅なドレスを着て
紅茶をたしなんでいる。
向かいには、ニナさん。
執事のエドガーさんもいる。
ニナさんの所作を見ながら、何となく真似をする。
「——ドレスの場合は、デザインによって、袖口が
引っかかりやすいですから、ご注意ください。
もし、茶会などがあれば、
考えたものを準備させて頂きますので、
ご安心ください」
昨日から、さまざまな事を説明されている。
何を聞いても、
「へ——。ほ——。」
と、感心する事ばかりだった。
それだけでなく、ウィルは子供の頃から
この様な勉強をしたんだと思った。
関心ばかりしているヘレナだが、
ニナさんから褒められる事もあった。
「ヘレナ様は、食事の召し上がり方がとても
キレイです。マナーの中でも難しい事ですので
他の所作も、きっと身につけられますよ」
と、心強い言葉をもらった。
ここでのレッスンは1週間。
それまでに、挨拶とマナーは最低限のところまで
頭に入れておきたいと思った。
「ヘレナ様。あまり頑張るとアルベルトに着く頃には
お疲れになってしまいますので、あとの時間はのん
びりと自由にお過ごしください。」
そう言って、ニナさんはヘレナが好きそうな
本をいくつかテーブルにおいていった。
ずっと、ピンと伸ばしていた背中を解放する。
ハァ——。
途端に眠気が襲ってきて、ソファーでそのまま
横になってしまった。
コンコン。
「ヘレナ様、食事のしたくが整いました」
——もう夜になっていた。
ソファーから体をおこし、伸びをする。
部屋を出る前に身だしなみを確認しようと
鏡の前に立って驚く。
ドレスのまま眠ったせいで、
美しいドレスの半分がしわしわになっていた。
あっ!いけない。
先に着替えるべきだった。
一人で着替えることが難しいドレスは、
汚したり、しわになると侍女を呼ぶ必要がある。
もう、食事のしたくができているのに…
どうしよう……。
ヘレナの様子に気づいたニナさんが、
新しい服を用意してきてくれた。
「ヘレナ様、何かご用の場合は、呼び鈴を
お使いください。部屋の近くにはからなず侍女が待
機 しておりますのでご安心ください」
繊細なドレスを脱いで、
普段使いの洋服に着替え、ヘレナは解放感
いっぱいになった。
ここに来てから、時間の流れが早く感じられた。
新しいことに夢中になるとはそういう事だ。
今のヘレナには、お手本のニナの様に
なれた時の自分を想像する余裕があった。
きっとウィルも喜んでくれるわ。
もうすぐ会えるウィル。
ワクワクしながら残りの練習をこなした。




