37.未知への扉
大学生という日常から、急に未知の世界に飛び込む
ことになったヘレナ。
元々それなりの家の娘ではあるが、王城のマナー
などは異次元だった。
しかし…昔と違って、今のヘレナは新しい事を
学ぶ意欲が高かった。
ウィルに会えるという気持もあって、
リッツの屋敷に向かう日を楽しみにすごした。
※※
ピンポン。
寮のチャイムがなる。きっとニナさんだ。
ヘレナは、長期旅行ほどの荷物をもって、
ドアを開けた。
「おはようございます。ヘレナ様」
ニナさんの所作の一つ一つがとても美しい。
「車を少し離れた所に準備しております。どうぞ」
荷物をさっと受け取り、案内してくれる。
夏休みに入った途端、学生達は大学を去り、寮は
閑散としていた。
これが普段なら、大注目を浴びただろう…。
寮の近くの住宅街の片隅に、車が止まっていた。
あの運転手さんだった。
「お久しぶりですヘレナ様」
運転手さんはドアをさっと開けてくれた。
まさに流れるような動作だ。
ここから半日ほどで、屋敷に着くようだ。
「ヘレナ様、今後のスケジュールをお伝え致します」
ヘレナは慌ててメモを取り出そうと、
荷物を漁ろうとした。
「ご心配なく。聞いていただくだけで大丈夫です。
忘れてしまった場合は、お声掛けください。
今後いつでもそのようになさってくださいませ」
早速、練習が始まっていたかもしれない…。
リッツの屋敷に到着してから、
アルベルトへ行くまでの
おおよそのスケジュールを聞くと、
テーブルマナーから、ダンス、挨拶など
きっとウィルに出会わなければ、勉強する事
もなかったような事を簡単にこれから学ぶようだ。
「ヘレナ様、最初は難しく感じるかもしれませんが
殿下より、無理せずに楽しんで欲しいと承っており
ますので、雰囲気を掴んでいただければ十分でござ
います」
——ホッとするヘレナだった。




