34.あの日の思い出
先生から渡されたウィルからの手紙。
どうやってウィルと連絡を取ろうかと
考えていた矢先の出来事に、ウィルは忙しくても
ちゃんとヘレナの事を考えてくれていたんだと
安心した。
寮に帰って、ウィルの手紙を開封する。
そこにはアルベルト行きの列車の
オープンチケットが入っていた。
『ヘレナ、大学生活がはじまって忙しい毎日
を過ごして居るだろうか?
冬に会いに行けなくて、とても寂しかった。
春が来て、きっとヘレナはもっと美しく
なっただろう。
アルベルトの観光を兼ねて一度遊びにおいで。
日程が決まったら、リッツの執事宛に、
連絡を入れてみて。』
——アルベルト!
ヘレナにとって特別な国である。
いつかアルベルトに行く日が来ることを
怖がりながらも憧れてきた。
それがもう目の前まで来ている。
ウィルもおとなっぽくなったかな。
ヘレナは、王子姿のウィルを想像するが、
どうしても制服姿が思い浮かぶ。
私にとって、やっぱりウィルは、ウィルだものね。
※※
大学の授業は、とても自由で
学ぶ意欲があればとても高度な勉強ができる
環境だった。
3カ国語を目指すヘレナにとって、これ以上ない
場所だが、毎日疲れ果てて寮に帰って寝る日々。
それは、このフェルラーの学生のほとんどが
同じ様な生活だった。
ヘレナはカイ先生と同じ、リッツ·フェルラー·
アルベルトの語学を選択している。
アルベルトの言葉を少しでも身につけて、
ウィルにあいたい。そんな思いもあって、
ヘレナのアルベルト行きはなかなか決まらなかっ
た。
「やっぱり、髪を切ろうかなー」
胸元まで伸びた髪が、汗で首もとにくっつく。
「ヘレナは、短いのも似合いそうだね」
大学で親しくなったレイチェルと、カフェで
くつろいでいた。
寮の部屋が隣のレイチェルは、生活リズムが似てい
てよく、部屋の前でばったり会った。
それで仲良くなったのだ。
「そのきれいなイヤリングも、短い髪だと目立って
素敵よ?」
ウィルにプレゼントしてもらったイヤリングは
友達によく褒められる。
あのブルーのブレスレットだって、
どこで買ったの?と聞かれた。
ウィルは、隣にいなくても私に幸せを
運んでくれる。
「じゃあ、ちょっと切ってみよう。」
レイチェルと美容室へ行ってみる。
ヘレナは、初めて髪を耳の辺りまで切った。
レイチェルもお揃いの長さにした。
「私達双子みたいだね!」
ヘレナは少し大人っぽく見える髪型が気に入った。
それからしばらくして、
夏休みにアルベルトへ行くという連絡をいれたの
だった。




