32.思い出がいっぱい
本格的な冬が終わり、
ヘレナ達は学園を卒業した。
ヘレナは、最後にウィルと過ごした風景を
覚えておこうと、学園の隅々を歩いた。
恋愛相談を聞いていた校舎の裏
毎日一緒に食べた食堂。
一緒に勉強した図書室
寒くても暖かかった中庭のベンチ
そしてお土産の貝ガラをくれた階段下。
——どの場所にもウィルとの笑顔があった。
ヘレナの頬を、一筋の涙が伝った。
その涙は、キラキラした学園生活への
感謝の涙だった。
すごく楽しい学園生活でした。
————ありがとう。
※※
春休みに入り、引っ越しの準備で
慌ただしくなる。
ようやく父と週に1度くらいは夕食を囲むようにな
った。
今では、家族に会えなくても頑張る父の素晴らしさ
が分かるようになった。多くの人を雇う責任を
父は重く受け止めていると言うことだ。
せめて引っ越しの日は。と父はなんとか休みを
調整して、フェルラーに来てくれた。
大学の寮の安全性や、利便性を今更確認して
ここなら安心だ。と満足していた。
ヘレナは幸運にも真新しい寮の一室が
与えられた。
「コレもカイ先生のおかげなんじゃないの?」
と父と母はカイ先生の所へ、改めて挨拶に伺う
つもりのようだ。
丸二日かけて、大まかな引っ越しを終えて、
部屋からの景色を見渡す。
フェルラー外国語大学が見える景色は
少し大人に近づいたように感じた。
「今日からまた新しい思い出を作ろう」
その景色にウィルがいなくても。




