30.希望を持って
ウィルの屋敷…
「お帰りなさいませ殿下。ヘレナ様、
お久しぶりでございます」
執事さんがにこやかに出迎えてくれた。
「食事のしたくは整っております。
どうぞお部屋へ」
案内されるままに、テーブルについて
素敵なディナーをいただいていると、
昼と違って、二人とも自然と落ち着いた
雰囲気になる。
ウィルの視線がヘレナの手元から瞳に移る。
「ヘレナ、次に会えるのは冬になりそうだけれど、
勉強は大丈夫かな?」
一応、受験生だ。
今日という楽しい一日がもう
終わろうとしている。けれど、ギリギリまで
二人の時間を大切にしたい。
「うん、もう推薦は決まっているし、カイ先生は
取り消しは無いと言ってくれたから…」
二人で過ごせない未来の話。
それでも大切に想い合いたい。
「大学は見に行くの?」
「今度母と行ってくるわ。独り暮らしになるし、
寮を見てこなきゃ」
「独り暮らしか…。心配だな」
「大丈夫よ。ほとんどの人が寮なんだから」
ヘレナは、家事能力を聞かれたと思った。
「そうじゃないよ。新しい環境の出会いを
心配してるの」
ウィルは少しムッとして…でもやがて目を
細めて見つめてくれる。
学園を卒業するヘレナは、今よりちよっとだけ
自由になれるはず。
「でも、大学生になれば、私もアルベルトへ
行けるわ。今より少し自由に会えると思うの」
大学ヘ進学すれば、もう待つだけの生活ではない。
「そう…だな。
「ヘレナにアルベルトを早くみせたいよ」
※
真剣に、打ち込むものを見つけたヘレナは
もう、ウィルがいなくて悲しむ女性ではなかった。
大学へ行けば、他国の人々との関わりが出来て
将来、妃となった時も、他国との交流にきっと役立
つ。笑顔で未来を話すヘレナがとても愛おしかっ
た。
「そろそろ送っておくよ。」
あまり遅くならないうちに、ヘレナを送り届け
楽しい一日は終わってしまった。
今度冬に会うときは、懸命にフェルラーの話をきか
せてくれるだろう。そのヘレナの表情を想像しただ
けで、冬が来るのが、今から待ち遠しかった。




