26.夢への扉
「さっきね、カイ先生から他国で外国語を学ぶ
進路を勧められたの。」
ヘレナはノートを広げながら図書室の邪魔にならないトーンの声で話しかけてきた。
ウィルはカイ先生を思い出そうと、
一点を見つめて考える。
「ああ…着任したばかりの?」
「そうそう。今度、詳しく聞いてみようと思って」
自分で決められる目標を持って進もうとする
ヘレナはキラキラしている。
出会った頃より更に魅力的な彼女。
「カイ先生は、どの国を紹介してくれるか、楽しみだ
ねなるべく近い国を希望したいけどな」
各国の外国語大学の名前を思い浮かべて、
アルベルトやリッツとの交通の便や、移動
距離を頭の中で考えていた。
数日後——
授業の終わりに、教室でカイ先生に呼ばれた。
「ヘレナ·ウォズリー、資料が整ったから後で
会議室に来るように」
放課後になり、普段行くことのない会議室へ向かう
コンコン。
「カイ先生、ヘレナ·ウォズリーです」
テーブルとソファーがあるだけの会議室。
資料をテーブルに置いて座ろうとする
先生がいた。
ヘレナに気づくと、向かいの席を勧めてくれた。
「早速だが、君に勧める大学は私の母校でね、
リッツの真上にある国、フェルラーだ」
手元の封筒をヘレナに差し出す。
フェルラー外国語大学!
ヘレナは驚く。
「……先生。とても素晴らしい大学ですが、
私は外国語以外の成績は…そんなに…」
恥ずかしそうにするヘレナを見て、カイ先生は
普段は見せる事のない表情で笑った。
「ははは、それは知っているよ。
この話は、私が持っている推薦枠だ。外国語が飛び
抜けて優秀なのに他教科で足を引っ張られる生徒の
ためのね。」
それはまさしくヘレナの事だった。
「先生は、フェルラーを出て教員の道を?」
フェルラーといえば、教育者というよりは
国家機関の職員になるイメージだ。
「おや、知らなかったのか。私は本来、アルベルト、
リッツ、フェルラーの三カ国を担当する国家職員な
んだ。今回は知人に頼まれて、一年間だけ教師をし
ている。」
カイ先生の授業はとても専門的で、高校のレベルを
少し超えていて、ヘレナはとても興味深く聞いてい
る。
カイ先生との出会いで、より勉強してみたくなっ
たのだ。
「先生、ありがとうございます。
両親と相談してみます」
予想を上回る大学を提示されて、
しかも推薦枠ということもあり、興奮から
声が高くなる。
ヘレナは用意された資料を受け取り、
元気に頭を下げて部屋を出た。
まさかフェルラーだったなんて。
自分の未来が、急に広くなったように感じた。




