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ヘレナとウィル〜隣国の王子と交わした約束〜  作者: シャルru


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16.出会いと手紙

『愛しいヘレナ


 君に何も言わず、急に学園を休んでしまって

 淋しく思っているだろうか?

 

 僕は君と過ごす未来を失いたくない。

 

 アルベルトでその道を必ず見つける。

 ——それまで待っていて欲しい。


         ウィルより』


 ウィルの手紙を読むだけで、急に暖かい風に包まれ

 たような気持になっていた。


 具体的には何も書かれていないことから、

 詳細は言えないのだろう。とわかった。


 今までで一番、ウィルが好き。

 私にはそれだけしかない。


 もう、わからない未来について考えるのはやめよ

 う。


 ウィルがいないから、成績が落ちたなんて

 からかわれたくない。


 ヘレナの落ち着かなかった気持ちは、

 ウィルの手紙の中に一旦しまっておくことにした。


 それからのヘレナは、

 ウィルからの手紙をいつも大切にそばに置いた。


 少しウィルを思い出してさみしくなった時。

 うまくいかなくて落ち込んだ時。

 ウィルに会いたくなった時——。


 手紙を読み返すと、また暖かい風に包まれた。


 ウィルは、私を大切に想ってくれている。

 そう信じることができた。


 ウィルが学園を休んで、十日程が過ぎようとしてい

 た。


 昼食後の授業は眠い。


 窓ぎわの席で、暖かい日差しを浴びながら

 授業が頭にはいらず、ヘレナはぼんやりと

 窓の外を見ていた。


「なんか、新しい先生が増えるみたいだよ?」

 授業中なのに、ひそひそと生徒たちが話しているの

 が聞こえた。


 新しい先生か。

 時間は、環境も変えてしまうのか。とヘレナは思っ

 た。


 下校前——

 

 新しく着任した先生が、ヘレナのクラスの

 副担任になることが皆につたえられた。

『カイ·グレゴリー』

 黒板にはそう書かれていた。


「ね!ね!カイ先生って、どんな人だろうね?」

 ルイーザは興味津々だ。

「若い先生でしょ?誰か見かけたって言ってた」

「えー。気になる!」

 ミーシャも興奮気味だ。


 ちょっと大人に憧れる年頃だよね。

 なんて皆で話しながら、家路についた。



「おかえりなさい。もう少し友達と遊んで帰るのかと

 思ったわ。」

 この頃、帰宅すると母が居る事が多い。

 少し前なら、いつもウィルと過ごしていたから、

 夜に帰宅することが多かったけど、今は普通だ。


「うん…」

 そう言って2階へ行く。


 試験もあと数日。

 最後までやりきろう。得意の外国語の成績は

 下げたくないな。

 そうやって、意識を試験に向ける。

 そして、ウィルからの手紙を読んでから、

 机に向かった。



 翌日。


「皆さん、忙しい試験期間に新しい副担任を

 覚えるという作業を、増やしてしまったけれど

 これからよろしく頼むよ」


 カイ先生は、洗練された大人のイメージの

 素敵な男性だった。

「素敵!」

 女子生徒の顔が全体的に赤らむ。


「ヤバイね。」

 とミーシャが目で合図を、送ってきた。


 カイ先生は外国語の先生だった。

 話しやすそうだし、みな外国語の勉強を頑張りそう

 だ…と、ヘレナは違う意味でドキリとした。


 数日後、全ての試験も終わり、 テストの返却が

 始まっていた。

「ヘレナ·ウォズリー」

「はい」

 テストの返却は、カイ先生だ。

「君…そうか。外国語が優秀なヘレナだね。

 覚えたよ」


 先生は、小さな声で話しかけた。

「ありがとうございます」

 ヘレナは、答案用紙を受け取り、席に戻った。


 休み時間——

「ねーねー。ヘレナ。カイ先生に話しかけられてなかった??」


 ルイーザは、ホントに鋭いとおもう。

「あ、あれね。外国語の成績を覚えてて、話しかけら

 れただけだよ」

 

「あ〜。ヘレナ優秀だもんね。なんだ。

 カイ先生がヘレナを気に入ったのかと思った。

 なんてね。」

 

「そんなわけないでしょ?生徒なんだから」

 

「わかんないわよ〜。この頃ヘレナの物憂げな雰囲気

 が、男子から人気らしいから。」

 

「は。そうなの?」

 

「そうそう。ウィルがいない間に、また狙ってる男子

 がいっぱいいるよ」 


 気をそらすための試験も終わってしまい、

 確かにヘレナは困っていた。そんな雰囲気が自分か

 ら出ていたとは…。

 

 ウィルがいなくなって、何日過ぎただろうか…


 ミーシャと、ルイーザの会話を、たまたま廊下にい

 たカイ先生が、聞いていたようだ。

 

「ヘレナ·ウォズリーは、人気の女子生徒なんだね。

 それも覚えておこう」

 と、笑いながら去っていった。

 

「もー。先生に聞かれたい情報じゃない。」

 

 ヘレナは、ミーシャとルイーザに、

 声が大きい!

 と怒ったふりをした。

 

 

 

 

 

 

 

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