14.じかんがない
スレイドは、落ち着いた様子でウィルを見ていた。
「ウィル、王族では経験出来ないような生活を
満喫できたようで、うらやましく思う」
少し迷っているのか、スレイドは視線を落とした。
「他国からの妃も、新しい国のあり方として、
良いと私は思う……。
——まずは、彼女に身分を明かしてみてはどうだ。
それでもなお、お前を選ぶなら──その時に、この
話は前に進むのではないか?」
スレイドには、自分の一生をこの国に捧げる
覚悟があった。
第一王子として生まれ、体が弱くとも支えてくれた
臣下と国民の為に生きる事が自分の役目であると信
じてきた。
だからこそ、弟には自由を与えてやりたい。 しか
し、王族として生きるのなら、手にした自由と引き
換えに、同じだけの覚悟を背負わなければならない
とも思っていた。
王は、スレイドの意見を支持し、ウィルに告げた。
「身分を明かすことは危険を伴う。その為
相手の女性にだけ明かす事。もし、別れる事になっ
ても生涯口外することがないよう。契約すること」
——契約。
それは将来、国を揺るがす事がないよう、
王族として引くべきラインだろう。
しかし…
ヘレナはどう感じるだろう。
想像するだけで、胸が苦しかった。
しかし…ここでくじけるわけにいかない。
「…では…約束してください。
彼女がこの国に来る気持が確認できたら、
婚約者として迎えてください。」
「もちろん約束する。しかし永遠に待てるわけでもな
い事を理解するように。」
——王位継承の判断が近づいている。
もうあまり時間が無いようだ…。




