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ヘレナとウィル〜隣国の王子と交わした約束〜  作者: シャルru


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13/79

13.本当の彼

「ウィルブラント·フォン·アルベルト

 ただいま帰国致しました。」


 しばらく見ない間に、顔つきがしっかりした息子を

 見て、アルベルト国の王と王妃は満足そうに微笑ん

 だ。

「元気そうでなりよりだ。」

「少し早い帰国だけれど、留学は満足したのかし

 ら?」


 先日の使者から情報を得ているだろうが、そのこと

 には触れないようにしているらしい。

 

「まだ、途中ではありますが急ぎ相談すべき事があり

 一時的に帰国しました」

 ウィルは、真剣に王の目を見る


「このの場でよければ、すぐに内容を

 お伝えしたいのですが…」


 少し威圧を放つ息子に驚き、

「せっかく帰国したのだ、晩餐の時にゆっくり

 聞こうではないか。

 先ずはひさしぶりの王宮でゆっくりするといい」


 と、なだめて様子をみることにしたようだ。


 その後、ウィルは、兄のところへも挨拶に行く。

 幼い頃から、体が弱かった兄。成人してからも

 ムリが続くと寝込んでしまう。


 今は離れで過ごす兄。

「兄上。今日の体調はいかがですか?」

 窓際の席でお茶をたしなんでいる兄に声をかける

「ウィル!戻ったのか。ひさしぶりだな」

 

 政治の本を読んでいたようだ。

 兄上は、王位の継承をどう考えて居るだろうか…

 

「兄上、今日の晩餐はご一緒できますか?」

「もちろんそのつもりだ。ウィルが帰ってきたんだか

 らな」


「そうですか、それは良かったです。…ずいぶん難し

 そうな本を読んでますね。」


「ああ。この体を補う為には、他の部分を強くしなけ

 ればと常々考えているのだが…。役に立つ日が

 来るかどうか」


「皆、兄上が王になる事を望んでいます。

 私もその一人です」

 スレイドは、弱く微笑んだ。


 私室に戻ったウィルは、夕食までの間に

 ヘレナへ手紙を書くことにした。


『愛しいヘレナ

 君に何も言わず、急に学園を休んでしまって

 淋しく思って居るだろうか?

 

 僕は君と過ごす未来を失いたくない。

 

 アルベルトでその道を必ず見つける。

 ——それまで待っていて欲しい。


         ウィルより』


 ウィルは迷っていた。


 王位継承から婚約まで、全てを話し合うには数カ月

 かかるだろう…


 何も言わず…何も説明できず、彼女を置き去りにし

 てきた自分が、数カ月後に受け入れて貰えるだろう

 か。


 それとも、今回は婚約に対する牽制でとどめるべき

 か。


 夕食で、王が婚約を切り出してくれれば…。


 

 王宮は、ひさしぶりに国王一家が揃った晩餐となり

 華やかな雰囲気となった。

 

 ウィルの祝花である百合が控えめに飾られ

 彼の帰国を歓迎していた。


「ウィル、リッツ国でよい経験が得られたか?」

 王は早速留学の報告を聴きたいようだ。

 

「はい。リッツは貴族制度がありませんので、

 皆が、一人の人として、誰とでも分け隔てなく過ご

 す事ができます。

 彼らは学問であったり、スポーツであったり自分の

 個性を生かし将来に向けて努力しています。自分で

 自分の未来を切り開くという。

 ——この国にはない素晴らしいものです」


 一瞬 その場が鎮まる。


「——何か、言いたいようだな。」

 王は、堅い雰囲気を纏うウィルが気になった。

 

「——はい。

 先日、使者を通して触れた話です。

 私は妃に迎えてたいと考えるほどの女性と

 リッツで出会いました。

 彼女は、まだ私の身分を知りません。

 一人の人として、お互いに大切に思っています」


 王と王妃は言葉に詰まった。

 しかし、ゆっくりと話始める。

 

「王族も、貴族制もない国の女性が、アルベルト国の

 王族に馴染めると思うのか?辛い思いをする事にな

 る」

 王の言葉は冷静だった。


 リッツの屋敷に来た時ですら緊張していたヘレナ。


 彼女は既に、何の不自由もない生活と自由を持って

 いる。

「王族は、国民から支持される存在でなければなりま

 せん。自由を知る女性を縛り付ける事になっても、

 今のような気持でいられるかしら…」


「縛り付けるつもりなどっ!…」


 学園のように自由に過ごすことはできないだろう。

 しかし、二人で生きて行く事が大切なのだと

 ウィルは思った。


「その時代の王族のあり方が変わっていけばいいと

 考えています。

 他国から妃を迎え、新しい王族の

 姿を、国民に支持されるよう努力するつもりです」


 ウィルはまだ王位継承していない。

 そして、兄という存在を、差し置いてその様な

 話題を王と王妃もするわけはなく…。


「兄上は、どのようにお考えですか?」


 静かに会話を聞いていたスレイドが

 ウィルをまっすぐ見て、話し始めた。


 


 


 

 

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