12.見送る後ろ姿
待っていなかった月曜の朝。
「おはよー」
「おはよう」
みな、土日をどう過ごしたのかな。
テスト勉強を始めた子もいるだろう。
それぞれがそれぞの土日を過ごし、
また、ここに集まってくる。
その繰り返し。
そろそろ教室に来るかもしれないウィルに
どんな顔をしよう。そればかり考えていた。
——しかし、ウィルは来なかった。
なんだ…ウィルは来ないことにしたのか。
そっか。ウィル——あなたの事がわからないよ。
いつもヘレナを呼んでいた廊下には、一日中
ウィルの姿は無かった。
※※
ヘレナが乗った車を、見えなくなるまで見送った。
暗闇の中に光るテールランプは、かなり遠くまで見
えた。あそこにヘレナがいる。
いつもヘレナを探すウィルの目は、車が見えなくな
っても、何度も自転車で通った道が頭の中に入って
いて、今はあの道、そろそろあの辺り……と、結局
ヘレナの自宅までの道を頭の中で描いていた。
「殿下、やはり明日になさいますか?
もう少し様子をみては?」
執事は、先程までの二人の雰囲気が
決して良いものでなかったことを心配していた。
「いや、一度国に戻って話す必要がある。
学園の事は頼んだ。それから…ヘレナを見守るもの
を一人つけてくれ」
「かしこまりました。どうかお早いお帰りを」
「うん」
夜明けと共にウィルは母国、アルベルトへと
向かっていた。
婚約者を探すのなら、必ずヘレナをその候補に
入れてみせる。
そしてヘレナを必ず連れて行く。
僕と共に生きるのは彼女しかいないのだから。
ぎゅっとにきった拳に更に力が入る。
隣国へ着くのは、明日になるだろう。
長い道のりは、頭を整理するのにちょうどよかっ
た。
執事が言うように、ヘレナに一言告げるべきだった
かもしれない…。
しかし、婚約を決められてしまってはもうどうする
事も出来なくなる。
使者から恋人の存在を聞いたら、きっと婚約者選び
を急ぐはずだ。
時間がない。
永遠にヘレナの隣を失う事になる前に…。




