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Ⅳ その場所は


 ナチュラ村は30メートルほどの山に3方向を囲まれている。

 ワ・セルフ街の方角に山がなく、丘の方にはトンネルが一つ通っている。

 円形の形をした村の半径はだいたい1キロと、大きくもないが小さくもない。

 この村に住む人のほとんどの職業は畑作・稲作だが、村の内部に畑や田を持つ者は少なく、ワ・セルフ街の方の開けた場所から左右に分かれて、広大な土地でのんびりと農業に従事していた。

 そこに、突然『招かざる者』が現れた。

 岩地獄とは反対方向――北西の方からきた『招かざる者』は、たまたまそこを通りかかった人を殺した。

 目撃した者はただちに村に走って伝えに来る。

 だが。

 走って――つまりわざわざ開けていないところを通って、伝えにきた。

 そして。

『招かざる者』は、歩きではあったが、登ってきた。

 タイムロス――それがナチュラ村の人々にとっての、致命的な時間。

 放送が流れた直後。

 ナチュラ村の中央にいる群像らのところに、爆発音が響いた。

 全て手遅れだった。

 誰も逃げようとしない。

 ただ逃れられることを祈って。

 誰も動かない――いや、いる。

 それも4人。

 もちろん、群像らだ。

「く、どうすればいい」

「どうすればいいって言っても、ローズさんを待たないとどうしようも……」

「そんなこと言っている場合じゃないだろ! ローズさんの話を聞いてたか? 悠長なことをしていたら、俺たちが何とかしないと、この村は…………」

「舞たちだけで何とかできる相手じゃない……」

「それでも、それなら! おまえはローズさんが死んでも良いって言うのか!?」

「だれもそんなことは……」

「……生駒……思い出して……ローズさんと《加速剣》の関係を……」

「そうさせないためには、俺たちが何とかするしかねぇだろ!」

「でも……」

 でも、舞たちが勝てる確証なんてない。

 その言葉を、しかし舞子は飲み込んだ。

 勝てる確証はなくても、可能性はある。

 そしてその可能性にかけて、勝つことができれば。

 ローズさんは死なない。

 なら、戦うしかない。

 戦う。

「……覚悟を決めよう、白美」

「私も覚悟くらいは決めてるよ。戦おう、この4人で」

 白美は力強く頷いた。

 群像が続ける。

「武器はさっきヘリの中で説明を受けたこれから出せるんだったよな」

 群像は自分の左腕を見た。そこには銀色のブレスレットがある。

 幅1センチ程度のそれは特に何の飾り気のないものだが、様々な物をしまうことができる、収納ボックスなのだ。

 この形も、身分証明書代わりで、白美たちがのミサンガ同様様々な物がある。

 ローズが4人にあげたの標準の使いやすさ、収納能力があり、初心者にはぴったりの物だ。

 すでにローズは4人にものの直し方、出し方をヘリの中で教えていて、迷わず群像はブレスレットに右手の人差し指と中指をはわせた。

 念じる。

 眼を閉じた瞬間、感覚としては瞼の奥にPCのウィンドウのような画面が浮かび上がって、それを右、左、と頭の中で考えて物事を選択する。

 その間0.1秒。

 眼を開けて右手を右に振った瞬間、そこに先ほど選択した武器――《掘削狙撃銃》が現れ、すとっと群像の手の中に収まる。

「すごい、の一言に尽きるよな」

 つぶやくと同時にもう一度、今度はブレスレットを肘の方に持ってきて、左手で触れて念じる。

 出した物は、小さな銃。

《機動銃》といわれる銃で、引き金を引くと鏃を発射、その鏃と機動銃は特殊な金属でつながっており、引き金を放すと巻き取る物だ。

 この特殊な拳銃はアズ・ハン・セルからもらったもので、他の3人もそれをブレスレットから取り出した。

 ドンっ、と丁度爆発音が聞こえた。

 ――早速、もう、村が。

 思った瞬間、群像は《機動銃》の引き金を引き、なるべく高めの建物に鏃を指し、まきっとってその屋上へと行く。

 同時に群像は白美たちに指示を出していた。

「俺はとりあえずここから狙撃するから、それぞれ行っておいて」

 群像の言葉通りそれぞれの持ち場に分かれた4人。

 群像は《掘削狙撃銃》スコープをのぞき『招かざる者』の頭にねらいを定めた。

 1、2、3、4、5。

 ぴったり五秒間、群像は体の中で数え、迷わず引き金を引いた。

 銃身から飛び出した弾丸は寸分違えず一直線に『招かざる者』の頭部へと吸い込まれていく。


 だが。

 その銃弾が『招かざる者』に届かなかった。

 はじき飛ばされた――否、はじき返された。

 真逆に、180°の方向に。

 つまり、群像がいる方向に。

 爆発ににた力で無理矢理押し返された銃弾を、とっさに、勘で群像は避けた。

 対飛竜用武器であるから、強さは段違い。


 避けたと思った群像の頬を、通り過ぎた銃弾が発生させた衝撃波にやられて、血がにじみ出ていた。


「くっ」

 痛みに耐えて『招かざる者』の様子を見る。


 何も変わったようすのない『招かざる者』だったが、様子がおかしいことに気づく。

 ――人!?

 群像は見た。

『招かざる者』に今にも殺されそうな、青年を。

「――チッ」

 舌打ちしつつ、空を飛ぶ。

 青年を救うために。

 が、間に合わない――約1キロの差を、すぐには埋めることはできなかった。

 だが。

 青年は結果的には助かった。

 こおりが手榴弾の爆発の勢いを借りて助けていた。

 さらに重ねるように、白美が剣を横凪し、『招かざる者』を狙った。

 舞子も、狙撃銃を構え、狙っている。


『招かざる者』と群像たちの戦いは、まだ始まったばかりだった。



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