Ⅳ その場所は
「すでに白美たち3人には話したが、私の故郷は『招かざる者』によって壊された。当時15歳、私はある師匠に修行をつけてもらっていた。そのときはただ強くあろうとして、だけども過酷な修行をしようとせず、Lv.100を越えたあたりからこの辺りでいいと思っていた。そんな中で…………事件は起きた」
その日は運良く、もしくは運悪く、ローズは師匠の自宅――ツリーハウスにいた。
異変に、事件に気づいたのは村のほうが赤くなってから。
大量の黒煙が村の方角から上がり、大きな爆発音が聞こえた。
なにが起こっているのか、なにかよからぬことが起こっているのではないか。
いや、そんなことはない。
そう信じながら、すぐさま駆けつけようとローズと師匠は動き出した。
といっても外靴にはきかえて、剣を帯びただけ。
このとき初めてローズは《加速剣》を握ることになる。
準備が終わり、走って村へと行こうとしたところへ、馬が2匹、内1匹の背に人を乗せて走ってきた。
「これに乗れ、全速力で村に向かってくれ!」
乗っていた人は師匠の親友だった。
師匠は有無も言わず、ただ無言で、冷静沈着にローズとともに馬に乗り、とにかく駆けた。
ローズは必死に願っていた。
「村がやばい!」
間に合うことを。
それ以上に。
「危惧されていたことが起きた!」
実は冗談のどっきりであることを。
結果を言うと。
ローズの願いは叶わなかった。
村から脱出したのは、全体の一分――つまり1%。
理不尽な攻撃によって、ローズの日常は破壊された。
崩壊と消滅。
そして復讐へと。
そのときつぶれた2つの村の生き残りはそれぞれ他の村に移ることになる。
この流れにローズは逆らった。
いつの間にかいなくなっていた師匠の自宅に戻って、何故か全く、そして永遠に帰ってこない師匠に疑問をいだかず、ただ復讐を果たす、『招かざる者』を殺すことだけを考え、Lv.を上げ、テクニックを上げ、《加速剣》の使い方を知り、Lv.200代になってからはワ・セルフ街に行くようになり、ナチュラ村に落ち着いた。
ばあちゃん、とローズが慕う老婆は、実の家族ではない。
ローズの家族は全員死んだ。
だから。
ローズは怖くない。
死んでも失うモノは少ない。
死んでも悲しむ者は少ない。
ない、と断言まではできないが、それでも。
「たとえ死んでも、『招かざる者』を殺す。……白美、舞子、こおり、心配してくれるのはうれしいが、それでもいいんだ、私は。――そして私は、調べた。『招かざる者』を殺害する方法を、死にものぐるいで、死にそうになりながら。多いときは30日はロクに睡眠をとらなかったと思う。あるはずのない文献を探して、いるはずのない証言者をたどって、そして辛うじて文献や人に行き当たって、それらの情報をまとめた」
ローズはようやく《加速剣》を脇に置き、懐から紙を取り出した。
「そしてその情報がこれだ」
そういって、その紙をローズは広げて、提示した。
『招かざる者』
出身地・不明。
年齢・不明。
出現地・不明。
言語・不明。
体力・不明。
体の構造・不明。
意志疎通・不可能。
能力・なんでもあり。




