Ⅲ 丘で彼らは ~丘~
「やはり飛竜と……対飛竜組織がいる」
「どうする? 飛竜の強さは尋常じゃないほどらしいけど、近づく?」
「あたりまえだ。確かに飛竜は強いかもしれんが……招かざる者だった場合、そちらの方が驚異だ。招かざる者の方が強い」
ローズとヘリの運転席に座る女性の会話を聞きながら、白美は《疾風・一閃》を右手で強く握り、舞子は《照準射撃》を体に抱いていた。対してこおりはなにもせず、ただ眼を瞑っていた。
ヘリの角度が、斜めから水平に変わる。
目的地――異世界から来た人の出現位置――より2~300メートル離れた場所に来たのだ。機体はだんだん地面へと近づいていく。
ぴったり、着地した瞬間、ヘリから全員――8人が飛び降りた。唯一ヘリ操縦者だけは残り、すぐに上空へと逃げるように上がっていく。といってもすぐに8人を回収できるような高度以上は上に行かない。
8人のうち、正面を向いたローズと白美たちは、見た。
ヘリが爆発する瞬間を。
その次に地面が爆発する瞬間を。
「群像ッ!」
知らず知らずのうちに白美は声を上げて、走り出していた。
それに続くか続くまいかまよった舞子とこおりは、白美を止めようとしたローズに眼で訊き、追いかけることにした。
3人はあまりこちらの仕事に入ってほしくないしね……とローズは自分を納得させつつ、指示を出し始める。
「対飛竜組織に早く引くよう伝達を1人、ほかは全員で取り囲むぞ」
伝達役は、すぐに決まった。
だが、誰に伝達すればいいか迷い、黒い煙が上がる中を右往左往している。
なら、とローズは携帯端末を操作した。
携帯端末のモードを無線機と繋げるようにして、白美と回線を開く。白美の耳に無線機を取り付けておいたのだ。
「群像を探すついでに、避難命令を出しておいて。もしくは代表者がいるならこちらによこして」
返事はない、当然分かっていたから、すぐに携帯端末を直す。
そして振り返った。
すでに振り返った先には、円の中心があり、真ん中の人を取り囲む形で、人が配置されている。
真ん中にいる人。
いやな予感がした。
なぜか既視感があった。
それが何かは分からなかったが。
と、頭上に何かが被さった。
陰がなにかもっと大きな者で埋められた。と思った瞬間には、ローズは動いていた。
「総員、退避!」
そう叫びつつも、ローズは障壁を、あえてドーナツ型に展開した。
丸形よりも格段に難しく、継続するための力もかなりいるが、そして真に守るべきなのはその中心に位置するようなところにいる異世界から来た人なのだが、あいつなら大丈夫だと、信頼ではなく、疑惑だけで、そう判断した。
そしてそれは、正しかった。
人と、『招かざる者』の唯一の違いとは、強さだ。
ローズは必死に踏ん張って、逃げ遅れた2~3人の命を飛竜から守る。『招かざる者』の驚異を知っているから、それに対抗するために必死になって修行と開発を行ってきた、剣士のための障壁だったが、それで飛竜からの攻撃を押さえることができたとなると、つまりそれは『招かざる者』の方が強いと言うことだ。
事実。
避けもせず、
動きもせず、
守りもせず、
避けさせられもせず、
動かさせられもせず、
守られることもせず、
異世界からの来訪者のなかで最強・最凶を誇る『招かざる者』は、ただつまんなさそうな眼で、空を見ていた。
「やっぱり……」
ローズは障壁が消えた直後に動いていた。
右手で剣の柄を握り、一歩、踏み出す。
既視感?
そんなものじゃない。
忘れるわけもない。
あいつは、あいつは!
「――ッ!!」
一瞬で、『招かざる者』の元に着いていた。
一瞬で、ローズは剣を振り切っていた。
一瞬で、ローズの体は宙を待っていた。
何かが爆発したような衝撃を、おなかに感じる。
間違いない
間違イナイ
マチガイナイ
こいつは……
この『招かざる者』は……
「私のすべての仇! ――コロシテヤルッッ!!」
作者ですら予想できなかった展開になりつつある……やばい(汗)




