Ⅲ 丘で彼らは ~丘~
腕に巻いた丸い装置のボタンを適当に押して、落下スピードを調整する。
使い方がそれであっているのかどうか分からなかったが、その方法以外思いつかなかったのだ。
上手く着地することができた――と思った一瞬の瞬間が、油断へと繋がった。
前方へ体重をかけすぎたせいで、足を前に出さないといけない状態になり、しかしバランスが取れずに……グネった。
「――ッ!」
痛みを感じている余裕などない。
押さえることすら意識せずに、しかし直前の油断のせいか、一歩遅かった。
飛竜が火の玉を、躊躇なく、溜もなく、一瞬で吐き出したのだ――といっても群像はそちらを向く暇などなかった。
ただ、幸運と、ただ一つ幸運と言っていいとすれば、それは群像が一度火の玉を放たれたからだろう。
皮膚に火の熱を感じた瞬間に、今度は自分から反射的に動いていた。
グネった足を無理矢理使って上へ跳ぶ。
不慣れな指の動作でスイッチを押す。
ギュルギュルギュル、と丸い装置が鉄の長いもの――おそらくワイヤーを巻き取り始めた。
もちろんヘリの浮力の方が群像の体重よりも強いため、群像の体がワイヤーを巻きとった分だけ宙に浮く。
ヘリは前に進んでいるので、群像の体はそれに吊られるように、引かれるように、斜めに飛ぶ。
その体の下を、火の玉が通過した。
間一髪、死を逃れた群像の頭から、考えるという思考が飛んでいた。
ただ直感だけで動く。
まず丸い装置を腕から取り外す。
そして空中を飛ぶ自分の体を制御しつつ、銃を構えた。
もちろん狙いは――飛竜の目だ。
硫黄のような黄土色の、蛇のような鋭い、見た者に恐怖を与える目が、見開かれている。もちろん血など飛び出していない、両目とも正常だ。
今なら行ける――その直感が、群像を動かした。
左手でコッキング、スコープを覗き狙いを定め、右人差し指を、引き金にかけて――撃った。
乾いた音が、鳴った。
それは一直線に空気を切って、飛竜の元へと向かう。そして――
ブシャッ
いとも簡単に、
そして無様に、
飛竜の目から血が大量に吹き出した。
ギャァアッアアアァァァアアアアアァァアアアアアアアア――ッッッッ!!
飛竜は、叫んだ。
そして、墜ちはしなかったものの、体勢を大きく崩した。
群像はもう片方の、右目を撃てないと判断し、ちょうど地面が来たので受け身をとった。
銃を体で挟みながら、庇いながら、10メートルは転がる。
丘が雑草で埋め尽くされていてよかったと、群像は後に思った。今は思考回路が断絶していた。
本当に、直感だけで動いていた。
それが良いことだったか悪いことだったかというと、良いことだったのだろう。
が、次の瞬間、それは裏目にでた。
次に翼を潰す。
群像は《掘削狙撃銃》の各パーツを取り替えて、各部分を組み替えて、狙撃モードから連写モードへと切り替えた。
《爆撃銃》を脇において、《掘削狙撃銃》の引き金を躊躇なく引いた――が。
当たらなかった。
否、当たっていたが、翼には当たらなかったのだ。
飛竜の体が、目前にあった。
とっさに《爆撃銃》の引き金に指をかけ、地面に向かって撃ち、爆風を発生させ、自分の体を飛ばした。
群像は直感だけで動いていた、と表現したが、それだと誤解を招くかもしれない。
群像は確かに直感だけで動いていたが、それは熱くなっていたからであり、すなわち周りを見れていなかった。
自分が生き残る最善策を群像は、絶えず選んでいたのだ。
それ故、自らが少しでも危険になるようなことは、選択どころか思いもしなかった。
少しだけ危険になるような選択をしていたなら、それは起こらなかった。
飛竜は空中で体勢を失った後、墜ちはしなかったが、その衝撃で少なからず影響を受けた。
が、それでもさすがは飛竜だった。
翼に送る力をすべて火の玉を生成するために回し、群像がいるとは決して思っていなかった場所へと、突っ込んでいった。
そしてぎりぎりで火の玉を完成させ、翼で急ブレーキしながらの反転。
火の玉を吐き出した。
群像は、避ける必要などなかったのだ。
冷静に対処しておけば、それは起きなかったのだ。
無理な話ではあるが、今更な話ではあるが。
飛竜の口からでた火の玉が飛ぶ直線状には――案の定、凌やブルたちが乗るヘリ。
人と荷物を満載したヘリに、高速で飛ぶ火の玉に対処する術などなく――直撃した。
ヘリは、爆散した。
群像はその光景に、眼を見開くことしか出来なかった。
そこは戦場だった。
その戦場に、風が吹く。
彼女が、現れる。
その前に。
群像は呆然としてたったまま、飛竜に見つけられた。
こちらに飛んでくる飛竜に、もはや群像は動くことが出来なかった。
目の前が、真っ黒になる。
思う通りに話が進まない(泣)
もっと群像と飛竜に戦ってもらうよていだったんですけど。
それでも長くなりすぎ感もありますんで、これくらいで行きますね。
ちなみにここから戦いパートも増えていきます




