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Ⅲ 丘で彼らは ~アズ・ハン・セル第二訓練場→丘~


 5分で、対飛竜組織、アズ・ハン・セルのメンバーは用意を終わらせ、ヘリポートの前に並んでいた。すでに点呼なども終わり、それぞれが自分が乗るヘリへと急いでいる。

 その流れの中で、群像はリーダーである凌の元へと向かった。

 様々な対飛竜用の道具をヘリに積み込み、右腕に丸い不思議な装置を付けて、そこから延びる線の先をヘリの縁に引っかけていた。

「どうした、群像」

 先に近づく群像に気づいたのはブルだった。

 そのブルが何か余計なことを言うのではないか、と凌はブルの横に来て、喋らせないように群像に話しかける。

「どうした? 私たちは急いでいるから、単刀直入に言ってくれ。……まぁだいたい分かっているが」

 何故リーダーが、とブルは思っていたが、とにかく、手早く自分の準備を終えることが大切だと手を動かす。

「僕を、丘に連れていってくださいッ!」

 思った通りだ、と凌だけではなく、ブル以外の全員が思った。

 ブルは一瞬固まってから、かっとなって叫ぶ。

「おまえはふざけてんのかッ! こっちは仕事なんだ、そんな現場に一般人であるおまえを入れられるか! 危険な仕事なんだぞ、おまえを庇うことなどだれもできない!」

 それを、凌が左手を横に持ち上げて諫めた。

「静かにしろ。早く自分の準備を済ませるんだ」

「…………」

 返事をせずに、後ろを向くブル。対して凌が群像の問いに答える。

「無理だ、といったら?」

 この答えに、群像は驚かなかった。ブルももちろんそうだ。が、驚いた者が圧倒的多数を閉めていた。

 ブルと群像以外の者だ。

 彼らは、今までに凌のその言葉を聞いたことがない。

「何故? 庇えないからだったら、庇う必要はない。僕自身が行きたいと思ったから、行く」

「……おまえは、4人の命を背負っているのに、か?」

「ああ、当たり前だ。4人の命を背負っているからこそだ」

「どういう意味か、問うていいか?」

「4人は、対飛竜組織アズ・ハン・セル所属の4人だった。彼らには、飛竜から人を、命を捨てて戦う使命があった。そしてそれを全うし、自らを命を以て僕を助けた。……つまり、4人の命とはすなわち、人を守るための命。その命を背負うと言うことは、僕は戦わなければならない。そして戦いたい、4人のために、守るべき人のために」

「そのためなら、自分の命の危険など関係ない、と」

「僕は生き残るし、誰にも庇ってもらわなくていい。……これは僕の覚悟だ。他人にとやかく言われる筋合いはない」

 と、群像はブルをちらりと見た。

 ブルに、反抗意識を群像は持ち始めていたのだ。

 喧嘩するほど仲がいいというように、ブルと群像は打ち解けたことで、群像の中から反抗意識がわいてきたのだろうか。どちらにしろ、今は関係のない話だが。

 とにかく凌は、ブルを真っ正面から見ていた。

 すでに出発の準備が完了したヘリから飛び去っていく。

 1機、2機、3機と飛び立ってから、凌はやっと答えを出した。――元からその答えは用意されていたのだが。

「いいだろう、ただ、おまえの命をもう誰も庇わない。なぜなら付いてくるのは、おまえの選択だからだ」

 そいて凌はポケットから、自分の腕にも、皆の腕にも付いている丸い不思議な装置を出した。

 それを群像に渡しながら、凌は言う。

「おまえがそれを言ってくることは分かっていたし、さっきの答えも一番最初の宣言のすぐ後に言えばよかったのだがな、どうにも我慢できなかった。おまえには名状しがたいが……不思議な力があることは確かだ」

 受け取った丸い装置は、重量感があった。

 銀色の円形のそれは、一部分に穴があいていて、中にあるものを引き出せるようだった。

 腕に巻くところにはスイッチのようなものがあり、それを押してみると円形の装置の真ん中が回り始めた。中にモータがあるようだった。同時に穴から何かが飛び出してくる。

 銀色の、長いものだ。

 ひも、というには太く、縄、というには細いくらいの、丈夫そうなもの。

 同じ形状のパーツを数十数百と組み合わされているようで、自由自在に動かすことができる。

「それはヘリから落下するときに使う装置だ。落下傘など悠長に開いている暇はないからな」

 そういって凌はヘリの方へと歩いていく。

 中から銀色の長いものを引っ張りだして、それを皆とおなじく、ヘリのそりに繋げた。そしてそりに足を乗せ、ヘリ本体からいくつか突き出ている手すりのうちの1つに捕まった。

 群像も真似るようにヘリに近づいてそりの上に乗る。

 頭上で、羽が回転し始めた。

 思った以上の風圧に、体を飛ばされそうになるが、何とか耐える。

 気づいたときには、ふわっと浮き上がっていた。

 そのまま地面が離れ、ヘリの体型が傾く。だんだんスピードが上がっていくのを実感した。

 雄大な景色が、広がっていた。

 草原、草原、草原。

 ひたすら雑草という緑で埋め尽くされた丘と地面は、圧巻だった。

 そう遠くない場所に白い壁のようなものが見え、又、人が住んでいるのだろう、集落のような村が幾つかある。

 そんな景色を見ている間に、ヘリは2~3時間前に板場所と同じところに来ていた。

 不意に飛竜の声が聞こえる。

 遠目でも、飛竜の姿を確認できた。

「もう来てやがる――!」

「ヘリ、全速力だッ!」

 皆が叫んでいたとき――群像は動いていた。

 とっさに、そして反射的に。

 先ほど試射していた狙撃銃を構え。

 望遠レンズ付きのスコープを覗き。 

 十字の中心を飛竜の目と重ならせ。


 ――ダッ!


 引き金を、引いた。

 回転しながら、特殊な形をした鉛の玉は特殊な銃身から飛び出し、一直線に飛竜の目にめがけて飛んでいき、血を吹き出させた。

 だが、その血の量は少ない――潰せていない――なにやってんだ、群像は――!


 それは当たり前のことなので、凌は注意するのをすっかり忘れていたのだ。

 自分の判断で仲間を危険に晒すな、と言うのを。

 そして今更言おうとしたときには遅かった。


 飛竜が、こちらを向いて叫んだ。


 同時に。


 群像はヘリのそりから、飛び降りた。



また寝ました。

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