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Ⅲ 丘で彼らは ~アズ・ハン・セル第二訓練場~


 群像は、剣を振っていた。

「シッ!」

 ズバン、と風が発生し、凌やブルがいることろまで到達する。

 通称《風叩き》のその剣は、対人戦をあまり意識して作られていない。

 風を発生させるだけのこの剣は、全体的に平べったい形をしていて、人に限らずものを斬ることができないのだ。

 だったら何の為に使うのか。

 敵をその場に止める、という使い道もあるがそれ以上に、対飛竜の剣なのだ。

《風叩き》が発生させる風――空気の壁を立て続けに発生させ、飛竜のバランスを崩すことを目的としている。

 ただ、《風叩き》はほとんど実践に出たことがなかった。

 適正が厳しすぎたのだ。

 だから凌はとりあえず、剣に適正があるかどうかを見極めるために、群像に《風叩き》を渡した。

 結局、適正はあった、だが。

 凌は違和感を感じた。

《風叩き》を《飛刃剣》と取り替えさせて、振らせてみる。

《飛刃剣》とはやはり対飛竜の武器だ。

 人間という二次元の生き物が、飛竜という三次元の生き物に攻撃するために開発されたもので、剣を振った瞬間、先から見えない刃を飛ばし、数メートル離れた目標を斬る力を持つ。

 こちらもやはり適正はかなり必要だが、アズ・ハン・セルの中にも2人いる。

 群像は《飛刃剣》も上手く使いこなした。

 だが、凌には違和感が残ったままだった。

 今度は銃を――《爆撃銃》を持たせる。

《爆撃銃》は銃弾に仕込まれた爆薬を、銃弾を放って敵に当たる前の瞬間に爆発させることによって敵を倒す武器。

 適正は特にいらないが、銃を撃つときに発生する反発の力は半端ではないので、それがある意味適正ともいえる。

 群像は《爆撃銃》も上手く使いこなした。

 凌の違和感は、やっと理由を見つける手前までになった。

《爆撃銃》と《掘削狙撃銃》を入れ替える。

《掘削狙撃銃》は貫通能力を上げられるだけ上げ、飛竜の堅い皮膚を貫通させるために作られた銃だ。

 狙撃銃というが、アズ・ハン・セルの銃を使う人の中で3人これを使っているが、果たして使用距離は100メートルも離れていない。何故なら連射機能を使うためには発射する弾丸の威力を軽減させるので、その威力が距離を近くすることで変わらないようにするためだ。 

 つまり、連射機能がなければ遠くからでも打てる。

 1000メートルは機能上無理だが(もちろん銃弾に飛竜の皮膚を貫通させる力が無くなるという意味で、銃弾自体は届く)500メートルくらいなら十分効果を発揮する。

 やはり群像は、上手く使うことができた。

 凌は、違和感の招待について、確信を得た。

「彼、何でも使えますね。常人よりもふつうに強く」

 という技術班の呟きに凌は頷く。

「そうだな。本来どんな武器でもあそこまで使える人はいない。それに群像君の場合は、糊代がないんだ。ただ使える、とそれだけで、それ以上強くも弱くもできない」

「なら、もっとほかに武器があると?」

「いいや、おそらくすべて、常人以上の適正を見せるだろうが、糊代がない。つまり最高の適正があるとは言えない。……なら群像君の適正は何なのか。それもおそらくだが――」

 ブー、と凌のポケットで携帯端末が震えた。

 話を中断してそれを取り出し画面を見、ため息を吐いた。

 凌は顔を上げると同時に、

「――何でも使えることで、敵を翻弄すること、だろう」

 答えを口にしてから技術班のメンバーに指示を出す。

 さらに携帯端末で連絡を取りながら、情報統制室を目指す。

 群像はそれに気づかず、気づいていても気に止めず、ずっと渡された剣や銃を交代で試射していた。

 そして、

 サイレンが、鳴り響いた。

 同時に、

 スピーカーが、動いた。


『全班戦闘準備! 10分後には出るぞ!』


 群像が一番最初に見たときのような言い方を凌はした。

 性格の変わりようが激しいと、思った。

 おそらく戦う時と日常で変わるのだろう。

 が、次の瞬間にはそんなことを忘れていた。


『飛竜が現れた! 又、人が丘に取り残されている!』


 ……もしかして白美たちか? という考えは、一瞬で出てきていた。

 近くにおいてあった武器を、群像は体に巻き付け始める。



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