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Ⅲ 街で彼らは ~丘~

 突如感じた熱。

 驚きの声を上げる暇も無かった。

 とっさに手が――動かなかった。

 とっさに足が――動かなかった。

 全体が高熱で溶けている球体の岩石の進行方向のちょうどど真ん中に、自分はいた、らしい。

 擬音できない程の爆発音と、

 ――ギャオォォォオオオオォォォオオオォオオオォオォォオオッ!!

 飛竜の叫び声が、耳を塞いだ。



 熱い、とその瞬間、思った。

 死んだ、とその瞬間、思った。

 そして、その瞬間に自分がそう思ったのを、自覚した。

 そういえば、その瞬間、体が何か細長いものにぶつけられたような感じがした。浮遊感もあった。

 閉じていた眼を、やっとのことで開く、ことができた。

 生きている。

 知覚した瞬間、体の感覚がすべて戻った。


 歪んだ視覚が元に戻った。

 荒れる聴覚が音を聞いた。

 正常な嗅覚が場を捉えた。

 焼けた触覚が口で堪える。

 乾いた味覚が唾を味わう。


 辺りを見渡す。

 窪んだ地面、焦げた草花。

 二十を下回らない数の、手に手に剣や銃を携えた人。

 そして自分を抱えあげていたのは……庇ってくれたのは、何も持たない、素手の、群像と五つほどしか変わらないような、青年。さらに周りに五~六人。

 そして、飛竜。

 全長――頭から尻尾まで伸ばせば15メートルを下らないくらいの大きさで、飛ぶための翼は、幾つもの傷を付けながらも、もしくは付けているせいで、格好良くも、厳つくも、強そうにも見える。

 怒っているという印象はない。

 あるのは今自分を抱えている青年だ。

 と、飛竜から赤い息を出した。小さな炎だ。

「くそっ――また来るぞ! 結界班!!」

 この場にいる人間の中でダントツ背の高い、そしてゴツい、自分と同じ大きさの両手剣を飛竜に向ける、リーダーらしき人は叫ぶ。

「連続かよ――ブル、そいつは任せたぞ!」

「分かってるってッ!!」

 答えたのは群像の近くにいる男のうちの一人だ。

 言いながらも、陣を結び始める。

 他の四人も、全く同じタイミングで動き、全く同じ動作をする。

 唯一、ブルと呼ばれた青年だけは違う陣を作り、五人より先に完成させ、結界を作り出した。注意してみるとぎりぎり見えるような、透明の薄い球体で脆そうだが、実際はものすごく堅く、簡単に破られることはない。

 ブルは何も言わずに、群像を引きずって十メートルほど離れた。

 その間も、五人は陣を描いている。

 他の人間は人間で、専門としている訳ではないから、ブルが張った結界ほど強くはないものの、あるだけまし……ふつうの刃なら跳ね返せる程度の結界を作っていた。

 一方、飛竜はというと。

 空気を吸っていた。

 これでもか、というほどに、大量の空気を。

 その口からは熱気が、炎が漏れだしている、そして、仰け反った。

 今から発射しますよ、という雰囲気をビリビリと出していた。

 その頭が、動き始める。

 腹がなくなった、と思った瞬間には、

 頭は下を向いていた。

 反動と、翼により飛竜は縦に動く。

 一方、炎の岩石は。

 高度三~四メートルの位置で、一瞬止まったように見えた。

 瞬間、膨張する。

 一気に爆散した。

 同時に。

 五人が腕を振り降ろした。

 陣を完成させた。

 そして降り上げた。

 陣を、投げた。

 地を揺るがすほどの振動が響きわたった。

 砂煙と蒸気が、辺りを包み込み、視界を悪くする。

 ほんの少しだけ。いや、かなり、思った。

 死んだのでは? と。

 その想像は甘かった。

 知らなかったからだ、群像は。

 彼らが、対飛竜組織だと言うことを。

 風が吹いた。煙が吹き飛ばされる。

 全員が、無事だった。

 いや、全員ではない。

 飛竜の力で吹き飛ばされたのが二人ほどいる。

 が、全員生きていた。

 群像は口を開けないまま、ブルを見た。

 その眼は、あなた方は何者? と問うていた。

 だからブルは得意げに答える。


「俺たちは対飛竜組織、アズ・ハン・セルだ」



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