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Ⅱ 神隠しにあった ~ローズ宅~


 あまりにもあり得ないことに、彼女たちは呆然とするしかなかった。

 見たわけではないが、でも。

 死んだと。

 死んだとしか、考えられない状況に、遭遇したのだから。

 信じたくなくても、信じなければならないと思っていたから。

 だから。

 群像の生死は。

 大きな問題であるがそれ以上に、

 死んでいる、という結論がただしいはずだ。

 なのに。

 死んでいない、なんて。そんなことが、ある訳がない。

 生きているなんて解答が、存在する訳がない。

 だけどもローズは考える。

 群像が生きていると。

 なぜなら。

「舞子君、君の説明なら、野原は焼けていて、血液が飛んでいて、紙片が焦げていた、ということらしいな。紙片とは、群像君がもっていたもの、と判断させてもらうぞ」

 沈黙。

 ローズは続ける。

「君たちの想像通り、飛竜がやったのは間違いないが……飛竜は火の玉を吐く。この地域に来る……というより上空を通り過ぎる飛竜はな。その紙片があった辺りは、窪んでいるところがあったはずだ」

 沈黙。

 ローズは続ける。

「火の玉は、高温だ。飛竜を捕まえ、解剖したことは、まだ一度もないので、どうなっているのか――どうやって作り出しているのかなど――は解っていないが、それでも温度だけはだいたい解っている。――岩石が溶けてできる、マグマ並の温度だ。そしてそれは、地面に当たる前に、爆発する」

 沈黙は続く。

 心の中では、だからどうした、と思っている。

 ローズは続ける。

「もしそれほどの高温が群像に浴びせられたのなら――そして、火の玉の爆発に巻き込まれたのなら、血、なんて残らないはずだ。すべて蒸発する。体も、血も。蒸発しなければ、おかしい。紙片も、残らないし、そして周りに草が生えている訳がない」

 沈黙は続く。

 心の中では、それがどうした、と思っている。

 ローズは続ける。

「この不可解な状況を作り出せる組織を、私は知っている。それは、飛竜から人を守る為の、飛竜が通るルートの各所に存在する、そんな組織だ。彼らは飛竜が現れると同時に、周辺の地域に避難指示をし、屋内に退避させる。そして退避仕切れなかった人がいないか確認し、もしいるならば、その人を守るために戦う。中央から存在を認められている組織であり、正式に働いている人もいるが、ボランティアで参加している人もいる。メンバーは全員がLv.200以上とはいかないが、Lv.150を越えている、そして年齢も30付近のもっとも戦闘能力が高い、精鋭だ」

 沈黙は……続かなかった。

 サイレンが、けたたましく、なった。

 その音は……

「丁度君たちが目撃した飛竜が近づいてきたのだろう、これがその避難指示だ。そしてだいたい一時間前――君たちがこちらの世界に現れる30分前のこと――つまり群像君がこちらに来たときも、丁度鳴っていた。だから私たちは群像君に気づかなかったし、君たちは群像君が死んだように錯覚する光景を見た。今思い返してみたら、このサイレンの音色が少し違っていた。あと、長かった。それは取り残された人がいる合図だ。そして、対飛竜の組織は動き出した」

 やがて、サイレンが鳴り止んだ。

 音色は変わらなかったし、長さもいつも通りだった。

 つまり逃げ遅れた人は居ない。

「さて、解答の解説の、根本部分だ」

 バサバサ、という音と。

 グォォォ、という鳴き声が。

 ローズの家の上空を通り過ぎていった。

 飛竜が飛ぶ先には、誰もいない。

 ただ、緑の丘が広がっているだけだった。

「飛竜は、とんでもなく、強い。人は飛べず、跳ぶことしかできないが、飛竜は飛ぶことが出来る、というハンデを通り越して、強すぎる。私では一人で戦ったところで瞬殺されるし、おそらく招かざる者でもかなわない。が、飛竜が通る村が潰れないのは、飛竜はものすごく高いところを飛んでいて、そして近くにいる動くモノにしか興味を示さないからだ」

 黙って、舞子とこおりは続きを待つ。

「強すぎる飛竜は、たとえ精鋭ばかりの、そして、対飛竜の組織のメンバーでも、簡単に殺す。いつも一人の人が逃げ遅れるだけで、一人を助ける為に、二十人規模で派遣される彼らのうちの半数が死ぬ。色々な兵器を開発されているので、されていても、そして様々な経験がつまれているので、つまれていても、半分死ぬ。組織が作られた当時は九割死んでいたそうだからましになってはいるが、それでもすぐ殺される、ということは今も昔も変わっていない」

 水分を、一度口に含む。

「だが、必ず人を助けてきた。どんなことがあっても、どんなことをしてでも、助けるべき対象を、必ず、無傷で助けた。例え全滅しても、必ず」

 必ず、ともう一度言い、ローズは息を吸い込んだ。


 焼けた野原は、対飛竜の組織のある兵器のお陰だ。

 飛んだ血液は、対飛竜の組織のある兵士の血液だ。

 焦げた紙片は、対飛竜の組織の救出活動の証拠だ。


「だから、群像君は生きている」


 ローズはそう、言った。


 舞子とこおりは、そのときは理解できなかった。

 多すぎたから。ローズが言ったことが、多すぎたから。

 だが、それからの一時間の間に、知ることになる。


 この言葉が――なことを。


ここまで書いてきましたけど

かなりだらだらムードが漂っているので、

もう次の投稿から

バシバシ行きます、ハイスピードな展開で。


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