Ⅱ 神隠しにあった ~ローズ宅~
「そう……か。辛いことを思い出させてしまった。……が、代わりに私がその問題を解決できるかもしれん」
「解決? その問題とは、帰れない、ということですか?」
「違う。そっちの問題じゃないし、君たちももう一つの問題の解決を願っているだろう」
「え……でも……」
「……問題にすら……なっていない……」
戸惑う舞子の言葉に、こおりがつけたした。
その表情は、いつもより険しく見える。
「……平群君は既に死んでいる……」
顔を、目線を下におろしながら、呟いた。
「だが、信じたくはない、だろう?」
ローズの声には、沈黙が答えだった。
答えられなかったのではない。
答えようとしなかったわけでもない。
ただ、答えを口にすることが出来なかっただけだ。
出来るはずもない。
――なら、信じさせる、なんて。
――苦しみの上に更に苦しみを重ねる行為だ。
――そんなのが、代わりになるわけがない。
――そんな問題の解決なんて。
――誰も望んでいない。
ローズには、分かっていた。
舞子とこおりが、何を考えているのか。
自分も。
昔、信じられない出来事が降り懸かったから。
そしてその上で、信じなければいけない光景を見てしまった。
自分の時は。
二度と、そんな結末を、他の人に迎えさせたくない。
二度と、そんな出発点を、他の人にあたえたくない。
それに、私に起こった出来事は、明らかに招かざる者のせいだが、彼女たちの場合はどうだ?
招かざる者の仕業でも何でもない。
竜の仕業なんて、偶然すぎて、復讐心に燃えるわけがない。
なら彼女たちの怒りはどこに行く?
それは当然――白美にだ。
そして同等に、自分にだ。
自分よりも、悲しい結末を、感じさせたくない。しかももしその結末が訪れるなら、彼女たちに、二度と出発点は巡ってこない。ただ結末があって、終わるだけだ。
だから。
だから私は、解決する。
いや、違う。
解決するのではない。
その問題の解決を、
――解説するのだ。
「信じたくはない……ということはつまり、彼――群像君の生存を信じている、ってことだよね」
舞子とこおりは、目を見開いた。
そんなことを、自分たちは思っていたのかと、そして思っていたのだと、気づいた。
いつの間にか顔は両手で覆われていたが、それは気配でローズにすぐに伝わった。
ローズは続ける。
「だから私は問題の解決を、解説する。……というか君たちの言うとおり、問題は無かったかな。――だってもう、解決してるだろうから」
「…………解決、している? 問題って…………」
やっとのことで、舞子は口を開いた。ローズの言ったことを反芻することしかできないが。
「だから、さっきから言ってるでしょうが」
手を額に当てて、一つ、ため息を吐いた。
そして、言う。
「群像君の、生死について――」
静かに舞子とこおりは、顔を上げた。
その二人の目線を一身に受け、ローズは言う。
「群像君は、生きている――」
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