Ⅱ 神隠しにあった ~ローズ宅~
「……これ以上は無理だ……話したくない、思い出したくない……」
うつむいた状態で、しんどそうに口を開閉する。同時に体も上下に動く。
「そう……ですか……。わざわざ話していただいて……」
「いや……謝らなくて良い。どうせ私から言い出したことだし、ちゃんと自分の過去とも向き合わなきゃならないことも分かってる。……だけど、今は、今の限界はここあたりだと言うこと……」
気持ちを切り替えるように、ローズは深呼吸した。
「そういえば、だが。……どうしておまえらはこの世界に来た?」
と、いち早く舞子は反応した。
耳をふさいでも不審がられるだけだと、白美の鳩尾を狙う。
都合良く拳は狙い通りの場所に到達し、白美はうっ、と声を絞り出した。
「……?」
不思議がるローズに舞子は答える。
「……白美にも思い出したくない――というか舞が白美に思い出させたくないことなので……この世界に来た理由は」
「……おそらく白美は……発狂する……」
あまり補足になっていない、蛇足のような補足をこおりが付け足す。
「…………? えと……どういうこと? そんなに複雑なことなの?」
「いえ、複雑じゃないんですけど……」
「けど?」
「舞たちにとっては、大問題です……」
「何があったの?」
「簡単な話です」
舞子は横目で、くたっと机に突っ伏す白美を見ながら言う。
「昨日のことですが、白美が、こいつが見つけたんです、ここへの入り口を。それも偶然」
「偶然……か。それでも鍵が掛かっている部屋の中にある、掃除用具入れとか言う物の中にあるって、どうやって偶然で見つけられる」
「……知ってるんですか? そういえば丘での、舞たちが故郷を言ったときの反応も、不自然でしたし……。まさかそこから? って感じ……」
「ああ、知ってるよ。その『まさかそこから』が招かざる者の故郷を指していなくて良かった。……それと、そのことについては後で、こちらから言いたいことがある。けど、とにかく話の続きを」
「はい。……白美は昨日中に――といっても実質は今日の早朝ですが、そのことを舞たち――五人いました――に話してきました。そして言ってみようと良うことで空き教室の、掃除用具入れの前まで来て、まず誰か入るかを話し合いました。
そこで手を挙げたのが今ここにいる舞、白美、こおを除いた残り二人のうちの一人です。
その一人――名前は群像ですが、群像が掃除用具入れに入りました。そして……30分待っても出てきませんでした。
そこで舞たちは、舞たちも、こっちへ来ました。そして見ました。
焼けた野原と。
飛んだ血液と。
焦げた紙片を。
飛んでくる飛竜から、逃げようとしました。
この周りの景色から逃げ出したいと思いました。
だけど……扉がおかしかったんです。おかしくて、帰られなかった。
私たちは実感せざるを得なかった。認めざるを得なかった」
舞子は、こう続けた。
――群像の、死を。
言葉にすることで、改めて感じた。
言葉にしきれない、いやな感じだ。
白美には聞かせられない言葉。
だって。
舞だって。
こんなに震えている。
死んでない……よね。群像……




