41.具現的ストロングリンク
夜の東京。
それは突然起こった。
林立する高層ビルを消し去る程の力を持ったその閃光は、あらゆる生命を一瞬にして奪った。
「我ながら醜い星を作ってしまった。」
瓦礫の中を歩き回るガイネン。
恐らく命だったであろう骨の音を鳴らしながら歩く。
「しかし、この星には美味いものも多いようだ。」
林檎
蜜柑
葡萄
こういった"果物"に多く含まれる栄養もあるらしい。
牛
豚
鳥
こういった"生物"も同様。だが様々な理由で食べないという慣習だったり、食べられないという体質だったりが生まれた。もう既にこれらは存在しないが。
人は料理というものを覚えた。
より効率良く、楽しく、生きる術を。
それは芸術にも該当する。
より美しく、感情をまたは無情を伝える術を。
だがしかし。
それら全てに意味は無い。
ましてや価値など、どこにも無い。
先述の通り生物の慣習、体質は様々である。
その様々は争いの種となり統一を望み押し合う。
故に反発する。
そんな醜悪の繰り返しだ。
それを生命の美と詠おうものなら。
新たに作り上げようものなら。
再びこの私が滅ぼしてやる。
救ってやる。
地球の生命はもう、繁栄を理解しないのだ!
もう神に逆らう者は現れないのだ!!!!!
─ そうはさせない。
「何…?」
私の目の前には、奈良 央駆と日香 くるみが、
立っている…?
テノールも立っている。何故だ!?
「何故だ!?」
それに…、
水上 宇宙が居る。
「バカな!?人類は滅びたはず!?」
宇宙は笑って見せた。
「何故かって?」
オガネソンのスティックを見せつけた。
下方 大地も。
上方 樹林も。
同じスティックを持っていた。
「新たな、エレメントスティックだと…!?」
「これで時間を巻き戻した…偶然じゃなく、必然で。」
「有り得ない…!有り得ない有り得ないッ!」
「その"有り得ない"をカタチにするのが、化学だ!」
央駆は引っかかった。
「だが元素プレイヤーはMr.クーロンが…、」
そんな央駆の肩に手を置いたのは、テノールだった。
「え?」
6人の頭上を越えて現れたのは ─
─ Mr.クーロンだった。
「クーロン…!?お前その身体、!」
かなり身体が溶けている事を央駆が心配した。
その事実は央駆に、自分が勝手に理解しているという事に気付かせた。
Mr.クーロンは今、「こちら側」の者であるという事を。
「生憎私もパンスペルミアの遺伝子を持っているのだ。」
Mr.クーロンが紅白の元素プレイヤーを掲げると、タワー内に隠された全てのエレメントスティックを引き寄せた。
その反動で、クーロンのダメージはどんどんと大きくなってゆく。
「ぐは…っ!」
「何故?何故裏切ったァっ!神を信じるんじゃ無かったのか!!」
溶けかけのクーロンは答える。
「ああ。私は神の実在に大変興味がある…だがしかし!」
「人類の滅亡に加担する気は無いッ!!」
「何を言う!?あれだけ悪魔を生み出しておいて!」
「私の未来…水上 宇宙を観て気付かされたんだ、こんな侵攻は誰も幸せにしないのだと!私は悪党だ、私が幸せで居ればそれで良かった、だが!私は幸せになれなかった!その理由は明白だ!」
「これは私のやりたくない事だと知ったからだ!」
ガイネンは驚愕した。
「何を言っている!?」
「私は、人の幸せを見ていたいのだ!たとえそれが過去に持っていた信念を捻じ曲げなければならなかったとしても、私は人が笑っていられる方を選びたい!」
「そんな事、今までやってきていないではないか!」
「当たり前だ!最近思った事なのだからな!」
「ガイネン!」
Mr.クーロンは指をさす。
「私はアイソトープを降りるぞォ!」
Mr.クーロンは、その場で溶けて亡くなった。
宇宙がかつての敵を信じて託した元素プレイヤーは、しっかりと帰ってきた。
「どうしてクーロンを信じれたの…?」
くるみの質問に、大地が答える。
「そんな気がしたんだと。Mr.クーロンがクルックスから貰ったダイナミックタムを使って、わざわざ宇宙を呼び出したらしい。」
樹林が腕を組む。
「中で何があったか全然教えてくれなかったけど。」
「あそこで元素プレイヤーをクーロンに託した。1体1の空間なのに戦わないんだから、きっと何か引っかかるところがあったんじゃないかって。」
「それだけで…懸けたな。」
「うん。安心しちゃとこのスティックも作れない気がして、言わなかったけどさ…ありがとう。」
爆風。
「貴様らァァ!…もう容赦はしない、その命!この手で握り潰してやる!死ねぇぇぇッ!!」
「ガイネン!!」
宇宙は紅白の元素プレイヤーを強く握った。
「殺すことを目的としている時点でお前の負けだ。」
「何が言いたい…?」
さらに、命を懸けて作り上げたオガネソンのスティックを握り締めた。
「お前に世界は守れない!」
『元素プレイヤー!!!』
オガネソンのスティックをセットする。
クーロンが回収した全てのスティックが、宇宙の周りを1周すると、宇宙に突き刺さっていく。
「うああああああっ!」
眼が、虹色に輝いた。
オガネソンスティックを弾き、シンバルを叩く。
『究極象徴化!』
黒の素体に虹色の液体が注がれ、あちこちにチューニングキーが差し込まれる。
『モーセメメント!!!』
ユニコーンの角の様に、オガネソンのスティックが額に突き刺さり、液体が発光する。
『Dal・Segno!』
オガネソンの、絆の力で生まれた最強の姿。
「ふざけた真似を…ッ!!」
「ふざけてなんか無い。これは俺たちの"繋がり"の証…、」
「【モーセメメント】だ。」
ガイネンに指をさす。
「この一撃で、世界を守る!」
モーセメメントはガイネンに立ち向かう。
『モメントシューター!』
大地の手元には元素シューターのような銃が、
『セメントシューター!』
樹林の手元にも同様のものが生成された。
「よし…!」
『オガネソン!』
『オガネソン!』
2人はそれぞれ、オガネソンのスティックを差し込む。
一方、モーセメメントはその右手でガイネンを吹き飛ばす。衝撃波が発生する。
モーセメメントは手で空気をなぞる。
周期表が表示された。
『窒素!酸素!リン!』
「はっ!」
衝撃波が燃え、火の玉がガイネンを襲う。
「そんなもの!」
火の玉は突如現れた水で掻き消された。
『セーニョ・ショット!』
大地の撃ったオガネソンの弾丸 - セーニョ・ショットがガイネンにヒット。
ガイネンは少しだけ前の状態に戻された。
「何!?」
火の玉が水を生成する前のガイネンを焼く。
「ぐは…っ!バカな!?」
ガイネンは地に手を当て、縦に振動を与える。
「これでどうだ…ッ!」
縦に飛ばされる央駆とくるみ。
「わあああっ!」
その感覚は、タワーが誕生する瞬間に似ていた。
「まずい!」
『セーニョ・ショット!』
「ごめんなさいっ!撃ちますっ!」
樹林のセーニョ・ショットで央駆とくるみは安全に戻される。
「おのれえっ!」
モーセメメントがキックを仕掛ける。
「ふんっ!」
ガイネンは避け、後ろに回り込んでモーセメメントを殴ろうとする。
「そこだァ!」
『セーニョ・ショット!』
目の前のモーセメメントが消えた。
「あ…っ!」
上を見上げると、そこにはモーセメメントの足が。
「させるか!」
瓦礫を生成して盾に使う。
ガイネンが反撃を試みる。
『アルミニウム!』
アルミニウムの盾でガイネンのパンチが塞がれる。
砕けたアルミニウムは棘となりモーセメメントを襲う。
『炭素!ネオジム!キセノン!』
破片がくっつき、硬い大きな棘としてガイネンに向かう。ガイネンはキセノンの効果により麻痺を起こした。
が、すぐさまその傷は癒えた。
「何…!」
「忘れたか?我が身は傷付かぬ…、どれだけ攻撃しても無駄だ。私は神なのだからな!!」
「そんなこと、関係ない!」
元素プレイヤーのフロアタムを叩く。
「まだ何かあるというのか!」
大地も、ギロを出した。
樹林も、ヴィブラフォンドライバーをセットする。
『オガネソン・リンク!』
3人の元素プレイヤーがリンクして、莫大なエネルギーがモーセメメントの角に集中する。
「はあああああああああ…っ!」
ギロとヴィブラフォンが擦られる。
「終わりだ!」
モーセメメントがシンバルを叩く。
『オガネソン!モーセメメント・インパクト!』
爆散。
タワーが崩れてゆき、頂上から落ちる一同。
『ヘリウム!』
ゆっくりと落ちてゆく。
タワーの崩壊してゆく様を見ながら。
テノールは何故か、感動した。
それは今まで一度も目にしたことが無い景色であった。
「アルト…。」
気付かれないよう、空を眺めながらそっと微笑んだ。
崩壊するタワーの一端で、逃げる大人たちを見た。
「あの人たち…!」
『加速』
大地が某所へ向かう。
捕虜となっていた国のトップたちだ。
「生きていて良かった。」
着地。
ガイネンの身体に亀裂が入っていた。
「貴、様…ッ。」
「もうこれで終わり…お前の野望は俺たちクラックが打ち砕いた。大人しく省みてくれ。」
ガイネンは砂々をじゃりじゃりと掻き乱しながら叩く。
「まだだ…、」
あと30分。
「まだ終わってなどいない…!」
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真っ暗闇のとある木々の奥。
腕だけで進む。
「痛い…痛いぃ、!」
涙が絶えず流れ続ける脚の無い女。
「痛い、痛いよぅ、痛いぃぃい!」
その顔面を蹴られる。
「どァっ!」
泣きっ面を見せぬよう、顔を腕で隠す。
「余りにも惨めなので同情を悩みましたが…」
丸メガネの男は、死亡寸前のバスを追い詰めた。
「ガイネン様の期待に応えられないようなゴミでは…」
蹴る。
蹴る。
蹴る。
「手を差し伸べても仕方がありませんね。」
バスの胸元から月夜に光るものを発見する。
「おっとこれは…?」
注射器。
「コレがヨウをダメにした…なるほどねえ。」
再び蹴り飛ばす。
いよいよバスは意識を失った。
見上げると、タワーが崩れているではないか。
先程まで欠けていた月が満月となっているので気がついた。あれは頂上が重なっているだけだった。
地面が少しだけ揺れている。
「ガイネン様がお呼びだ…!」
「只今、向かいまァァァァァァす!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「残念だ。」
『オガネソン・リンク!』
亀裂の入ったガイネンにトドメをさそうとする。
「宇宙!」
央駆の呼び止める声に気付いたモーセメメントは攻撃のチャージをやめた。
「え?」
「危ない!」
樹林が宇宙の肩を引いた。
上から何かが降ってきたのだ。
暗くてよく見えなかったが、声で分かった。
「お前は…、」
「イン…!?」
「お前もラボアジェ神殿から、!」
杖から毒素を含む液体が放たれる。
「わっ!」
大地はギリギリ避けた。
「こいつの液体は弱体化能力がある…気をつけろ。」
「いいえ?もう気をつけなくていいですよ。」
インは注射器を取り出す。
テノールが思わず引き留めようとした。
「待て寄せ!」
「寄す訳ないじゃないですかー、Mr.クーロンは私たちアイソトープの意思を反故にした…これは耐え難き屈辱だ。あの男が生きているのなら是非とも積もった雪の上で素足で3日間立ち続けて頂きたいくらいだ。」
首に、刺した。
「おおっ!?力が漲りますねえ、頭が焼かれますねえ、どうでもよくなっちゃいますねえ!?」
インに翼が生え、細かった身体が筋肉質になった。
イン・フォルテシモの誕生だ。
「くっ、またお前と戦うことになるとは。」
宇宙が元素シューターを構えると、
「これまたいいえ?」
クラックとイン自身の対決を否定し、ガイネンの方を向く。
「ガイネン様ァ!是非 ─」
「私の身体と、ひとつに!!」
ガイネンは深く頷いた。
「ほう…面白い、貴様のその暴走した力!我が身に宿せぇぇェッ!!」
ガイネンがインを取り込んだ。
ガイネンの能力がドーピングにより極限まであげられ、亀裂が復元する。
「はっ、はっ…、」
笑いを堪えきれなかった。
翼が生え、頭上には天使のような輪が浮かび上がる。
その姿は神々しいという言葉では形容できない、光そのもののような感覚であった。
ソレは、地上から足を離す。
夜は昼間のように照りばえ、大雨が降り、雷が鳴るが、曇りは無い。そう思えば雨は止み、青空に虹が架かる。
美しかった。
地球に産まれて良かったとさえ思えた。
空を舞う【天使】は、こう名乗った。
「我が名は…万物の天使 "グゲン"。」
噴火。
世界中の火山活動が活発になった。
まるでグゲンの誕生を祝う花火のように。
「私が…」
衝突。
異常気象の原因は隕石が上空で衝突と合体を繰り返し、余りにも多量の数の星が誕生し続けていたからであった。
「宇宙を書き換える…」
生誕。
各星に新たな命が生まれる。
グゲンは空を飛び、その星を掴み、潰した。
「小説家になろう。」
【所持スティック】
〈クラック〉
ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、
水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、ネオン×2、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、ラドン、フランシウム、ラジウム、アクチニウム、トリウム、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、ドブニウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウム、ニホニウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン、オガネソン×3
〈ラボアジェ神殿〉
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