40.破滅的エンド
ついに塔で激闘を繰り広げる覚悟を決めたクラック。
Mr.クーロンにはテノールが、
クルックスにはアルトが。
自分たちの現在を奪われた彼らは今の世界で何を思うか。
一方くるみと央駆に立ちはだかるのは、卑劣な悪意であた。
そして世界は、滅びを知る。
「はあッ!!」
銃弾戦。
「クルックス!お前は何故ガイネンに付く!」
「貴様はこの状況で何故ガイネン様に付かない?未来の指導者様に従わずして、未来の貴様は無い!」
弾丸を銃で弾き、カウンターのごとく撃ち返す。
「他者に委ねるだけの人生ならば、最初から棄てた方がマシだ!」
「それは僕の人生を…神を信じる事への冒涜か!!」
弾丸を銃で受け止め、アルトの後ろに回り込む。
トリガーを引くがアルトはしゃがみ、避けた。
次いで右脚でクルックスの足元を引っかけ、そこを軸として回転するアルト。
「ッ!!、ッ…!」
脚元のアルトに向けて必死に乱射するが、そう簡単には当たらない。
「そこに"信仰"はあるか!!」
アルトはクルックスの顎に銃口を向ける。
「…っ!?」
「その「神」を信じる自分を信じる事こそが人生における大義だ!信じる者に支配されて何が信仰だ…!」
歯を食いしばるクルックス。
「それは唯の、"思想の奴隷"だッ!!」
顎を撃ち抜く。
天井に弾丸が突き刺さる。
アルトの頬に、雫が1滴。
「…やっぱりそうか。」
撃ち抜かれたクルックスの顎は、溶けていた。
「ッ!」
クルックスはアルトの足を踏んだ。
「あ…っ、?」
否。足は踏むことが出来なかった。それ以前に、踏まれる足など無かった。
「貴様…、まさか!」
銃を落としたアルトの左手はクルックスの右手を掴む。
「お前もラボアジェ神殿から来たんだろ…?」
クルックスを見上げ、少しだけ笑む。
「私も同じだ。」
「初めからそれが目的で…?」
クルックスも、徐々に溶けていく。
「この時代の邪魔はさせない…、百歩譲ってガイネンの支配が人々の苦しみからの唯一の救済だったとしても、それを乗り越えるのは!それを創り上げるのは!」
アルトがクルックスに体当たりで叩き落とす。
「この時代の人間だ。」
意識が朦朧とする。
ガイネンに奪われた小さな命。
あの子が手にしていた汚れたけん玉。
アルトにはそれが見えた。
はっきりと、"あの子"の手に。
もう、そこには誰も居なかった。
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央駆とくるみが向かった先は、図書館のような空間だった。1冊1冊背表紙に人名が刻まれている。
"リム・ストローク"
"Mr.クーロン"
"ガイスラー"
その他大勢。
「ラボアジェ神殿に転送された者の名前か…?」
1冊、怪しく光り2人の前に漂う。
「これは…」
"符裏 蓮"
「何…!」
本が開くと、1人のシルエットが出現した。
符裏 蓮だ。
「蓮…!!」
喜んで近づくくるみに元素シューターを向ける蓮。
「くるみ!」
央駆の呼びかけで気付いたくるみは最悪の事態を免れた。
「へえー、鋭いね…司令官。」
その眼の光は薄く、少しだけクマが出来ている。
「ここから先には行かせないよ、神が世界を守ってくれるんだから。クラックは…障害?ってやつ。」
『炭素!エレメント・ショット!』
央駆をくるみが押し、なんとか避ける。
「こいつは偽物だ…!きっとあの本の情報から作られたんだろう。ならば躊躇はない!」
「そっかあ、」
蓮の偽物は炭素のスティックを構えたかと思うと、なんとそのスティックを食べだしたのだ。
ボリボリと痛い咀嚼音が央駆を困惑させる。
「!?」
「大丈夫、炭素のスティックなんて幾らでも作れるからさ。こうすればね!!」
爆発。
塔内の埃が舞い、2人の目を眩ませた。
埃が開けると、そこにはバケモノが居た。
ダイヤモンドと思われる装飾を身にまとい、目からは黒色の粉が垂れ流しになっている。
炭素のバケモノが。
「バカな…!」
央駆は苦しかった。鉛筆工場で助けた少年が、鉛筆工場を襲ったバケモノに姿を変える瞬間が。
たとえそれが偽物であると分かっていても。
「なんだ、水上 宇宙は居ないのか。」
「あの偽善者を殴り飛ばしたかったのになあ。」
だが、憤りが勝った。
「貴様ァァァっ!!」
それはきっとガイネンに対するものであった。
右拳でバケモノを殴る。やはり硬かった。
「どうしたどうした?ヒーローのなり損ないが。」
央駆の首を掴む。
「権力者ほど何もしていない。」
壁に央駆の背中をぶつける。
「そういう奴らほど何もしていない自分を美化する。」
強く。
「そうやってメンタルを保ち、誰かに迷惑をかけて。」
「…ッ、」
バケモノは続ける。
「奈良央駆の【な】!」
強く絞める。
「何も出来ない!!」
「…ッ!」
「奈良央駆の【ら】!」
強く、
「楽をして生きている!!」
「奈良央駆の【おー】!」
強く。
「王様気分で人を従え!!」
絞める。
「奈良央駆の【く】!」
央駆は必死にバケモノの腕を引き離そうとする。
「苦しみから目を背ける、最低最悪の司令官だァ!」
「うあああああっっ!!」
央駆は、バケモノの腸辺りに銃口を当てる。
それに気づくバケモノは、再び蓮に姿を戻した。
『央駆さん、やめて!助けてくださいっす…!』
「あぁっ、」
蓮の声が聴こえた。
貫通。
央駆の前で、蓮の頭を弾丸が貫いた。
唐突に開始される央駆の酸素補給は、そうにもならない現状への苦しみを悪化させた。
「央駆!!」
「ああ…すなない。」
横を見る。
動く事を忘れた遺体が無慈悲に置かれていた。
飛び散った偽物の臓器のうちのひとつであるかのように転がっている炭素のスティックを拾う。
「…行こう。」
更に塔を昇り、いよいよガイネンと出逢うのだった。
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扉が開かれる。
「案外早かったじゃないか。」
傷だらけの央駆とくるみは世界の脅威と対峙する。
「しかし光陰矢の如し、残り5時間である。その力で私を"納得"させて見せろ。」
央駆はガイネンに言う。
「お前は人類の自由を奪い、生命を我が物のように扱い、破壊しようとしている…宇宙の敵だ!!」
くるみも壊れかけの足でその身を支えて指をさす。
「貴方は神でも何でもない…史上最悪のバケモノよ!!」
笑うガイネン。
「ほうほう、ほう、ほう。面白い。人類の敵であったとして、それが神ではないと言い切れるのは何故だ?神は常に正しい、それにこの宇宙を、この地球を創ったのは誰か?このガイネンだ。」
2人はとてつもない勢いで向かいの壁に吹き飛ばされる。壁に穴が生まれ、2人が吸い込まれたかと思うと、ガイネンの頭上にワープさせられていた。落下するや否や真横から火炎が吹かれ服が焼ける。燃える布を洗うようにどこからともなく滝が現れ、呼吸を妨げられる。大量の酸素を供給するように空気砲が2人に放たれ、強風が吹き2人は元居た場所まで飛ばされると強烈な重力で床に叩きつけられた。
もはや、喋れなかった。
「演説は以上か?」
それでも立ち上がる央駆とくるみ。
「まだ…これからだッ!!」
「央駆!!」
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残り2時間。
テノールは急いだ。
呼吸を荒くして走る。
地面の水溜まりのようなものを踏んで、
何か本のような分厚いものを蹴って、
それにも気づかないくらいに必死で走る。
そして、扉を開ける。
「すまない!遅くなっ」
「遅かったな、テノール。」
状況は悲惨だった。
頭からやや黒みがかった血が出ている央駆。
口から鮮血の溢れるくるみ。
そしてアルトの姿も無かった。
奈良 央駆と日香 くるみは、死んでいた。
「少し長く対応し過ぎたが…相応だろうか。」
膝をつくテノール。
「嘘 だろ…?」
未来がフラッシュバックする。
嫌、もうそれは未来ではないのかもしれない。
高らかに神は謳う。
「我こそが神!万物を創造し、万人の形を変え、万国を支配する…牙を向ければ溶かす迄。この掌で貴様らは生きている事を忘れるな。」
「さっきまで生きてたんだ。」
バスの四肢を拾い上げるソプラノの声を思い出す。
そうだ、この2人はさっきまで生きていたのだ。
涙も出なかった。
央駆の頬に温度は感じなかった。
口を開け、焦点の合わぬ目に脳を焼かれる。
「おい、おい央駆。央駆!くるみ、!」
ようやく現実を理解した。
央駆とくるみは、"死んだ"のだ。
世界の時間だけは、刻一刻と進んでゆく。
「…っ、」
テノールは、どうしようもなかった。
「うおおおおおおおおおおおああああっっ!!!」
『ラメント!』
悲しみ嘆くラメントは、故人の事を想うようにそしてその原因に憤るように暴れ回る。
「ふん…冷静さを欠いた者に勝機は無い。」
ガイネンの"必殺技"が放たれる。
「うおおおおおおおおおお…ッ!」
閃光。
【所持スティック】
〈クラック〉
ヘリウム、炭素、ネオン×2、アルミニウム、カルシウム、ラドン、プロトアクチニウム、ウラン、ネプツニウム、プルトニウム、アメリシウム、キュリウム、バークリウム、カリホルニウム、ドブニウム、ニホニウム、オガネソン×3
〈ラボアジェ神殿〉
ダイナミックタム(調律済)、Tbチューニングキー、
水素、リチウム、ベリリウム、ホウ素、窒素、酸素、フッ素、ナトリウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素、アルゴン、カリウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、臭素、クリプトン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、ヨウ素、キセノン、セシウム、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、アスタチン、フランシウム、ラジウム、アクチニウム、トリウム、アインスタイニウム、フェルミウム、メンデレビウム、ノーベリウム、ローレンシウム、ラザホージウム、シーボーギウム、ボーリウム、ハッシウム、マイトネリウム、ダームスタチウム、レントゲニウム、コペルニシウム、フレロビウム、モスコビウム、リバモリウム、テネシン
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